332日ぶりの再会で確かめ合ったメンバーと清掃員の強固な絆 【2020/12/24 BiSHライブレポート@代々木第一体育館】
2020年12月24日@代々木第一体育館
332日ぶりの有観客公演"REBOOT BiSH"
ライブを主戦場としてきた彼女たちにとって、約1年という長い期間、有観客ライブを行わないのは、デビューしてから約5年で初めてのことだった。
BiSHメンバーと清掃員(BiSHファンの総称)が、激しくかつ感動的にぶつかり合うコミュニケーションは今回のライブではみられず、安全対策を講じた上でのライブとなったが、感動的なライブだったことは言うまでもない。
12月24日、あの場所で、お互いの愛を、たしかな存在を、メンバーと清掃員同士が確かめ合ったのであった。
自分たちの愛の形を、今までの自分たちらしく伝えられないライブ会場
2020年12月に実施された"REBOOT BiSH"
正直、この時期はまだ予断を許さない状況であり、メンバー・清掃員ともに感じたことのない緊張感でライブ現場は空気が薄く感じるほどだった。
BiSHのライブは、コール・掛け声・観客同士が肩を組むなど、
メンバーと清掃員が全身・全精力で一体感をともに作り上げるライブが特徴的である。
しかし、コロナ対策を実施した上でのライブは、一緒に振り付けを踊ることはできるものの、声を出してはいけないため、今までの、BiSHのライブでは見たことがない異質な光景であった。
おそらく上記を最も感じたシーンは、ライブでの自己紹介シーンだろう。
BiSHメンバーそれぞれには、清掃員と掛け合いを行うことで成り立つ自己紹介がある。
例えば、BiSHメンバーの一人である「モモコグミカンパニー(通称:モモカン)」の自己紹介では、こんな掛け合いが行われる。
モモカン自己紹介
「就職するならー?(モモカン)」
「モモコグミー!(清掃員)」
「就職しててもー?(モモカン)」
「モモコグミー!!(清掃員)」
「〇〇(会場名)のクソニートでもー?(モモカン)」(時と場合によりアレンジあり)
「モモコグミー!!!(清掃員)」
「はい!BiSHのあまのじゃく担当、モモコグミカンパニーです!(モモカン)」
この清掃員担当のフレーズが普段は会場中に響き渡るのだが、今回は言うことができない。
メンバーがマイクで補いつつ、清掃員は代わりに拍手で応える。
この瞬間、メンバーも清掃員も、どこか心の縁で、寂しさ・やるせない想い・不安を感じたはずだ。
「元通りのライブができる日はいつ来るのだろうか」
「長い間待ち続けてきたけどまだ自分たちの愛を、自分たちらしく伝えることはできないのか」
今まで助けられてきた清掃員が、今こそメンバーに恩返しをする瞬間
さらにライブが進んでいく中でも、同じような場面に何回も対面した。
メンバーに愛を伝えるコールも言えない、観客同士で肩を組み合う感動的な振り付けも一体感を持ってできない。
いつもは興奮と熱狂の渦に巻き込まれているライブ会場は静かだった。
だけれども、メンバーは久しぶりの再会にふさわしいライブを全力の踊りと歌声で魅せてくれた。
そして清掃員もメンバーの想いに答え、声は出さないが、全力でライブを楽しみ、体を動かし、ペンライトを振り、一緒に振り付けを踊った。
いつもとは異なる状況の中でも、全員で今この瞬間を最高の形にしようと同じ方向を向き、今まで通りの一体感のあるライブがそこにはあった。
そしてやはり何より、一番感じたのは、
「全員で一丸となってBiSHを守るんだ」という清掃員の想いだった。
332日ぶりのライブで、今までのライブのように楽しみたい・声を出してメンバーと一体となってライブを作りたい、と思う清掃員が何人いただろうか。
「メンバーの声援に応えたい」「自己紹介の掛け声を言いたい」
「推しへの愛を大声で伝えたい」
ルールを守るのは当たり前ではないか、と言う人もいると思う。
ただ、"今までは存在せず本来は不必要なルール"を守ることがどれだけ大変かは分かっていただきたい。
ふつふつと込み上がってくる自分の気持ちを必死におさえ、この先もずっとライブが開催されるよう、BiSHのライブがネガティブに取り上げられないよう、清掃員がBiSHを本気で守ろうとする姿勢を何よりも熱く感じた。
その場にいる清掃員の想いに、自分が泣きそうになるくらい、今までより強く団結した清掃員とメンバーの絆がライブ会場にはあった。
心の距離がゼロの状態
メンバーのハシヤスメ・アツコ(通称:アッちゃん)が、コロナ禍のライブで常々言っていた言葉がある。
「実際の声は聞こえなくても、心の声はしっかりと届いている」
まさにその通りだと思った。
あの時のライブ会場には、言葉がなくとも、メンバーと清掃員の間には確かに強固な繋がりがあり、心と心がぶつかり合って、今だからこそ感じられる熱い想いを確かめ合っていた。
私は常々、言葉にしないと何も伝わらない、と思うようにしている。
だが、真摯にお互いが向き合い・思い合うことで、無言の空間にメッセージが込められることもあるんだなと、初めて実感したライブであった。
他アーティストのライブでもおそらく同じような状況があるのではないか。
自分たちを救ってきたアーティストを今こそ自分たちが守る時がきた。そんなファンの想いは、今回の状況だったからこそ、改めて感じることができるのかもしれない。
そして、最後に思う。やはり生の音楽は素晴らしいなって。
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