見出し画像

配信裏話『MTGパイオニアで遊んでるライブラリーアウトの話』

 最近また裏でちょこちょこと遊んでいて、そこそこに勝てるデッキになってきたので、文章化の形でご紹介。
 フォーマットはMTGアリーナでも遊べるパイオニア(厳密にはエクスプローラーという不完全な形ではある)、デッキのレア度的にはそこそこ組みやすいデッキになっているので、「パイオニアでもライブラリーアウトがしたい」という人には一度触ってみてほしい。

追記
配信でも遊ばせてもらったので、どんな動きをしているのか映像で見たい方はリンクから是非
https://youtube.com/live/k8Uzo-VP6Sg?feature=share

 ではデッキレシピのご紹介。デッキ名は『道路脇の聖遺/Roadside Reliquary』を用いた『Library Out(デッキ破壊)』が『沈んだ城塞/Sunken Citadel』で強化された形なので

『RoLiSuCi』

清々しいほどの4積みリスト

 一言にライブラリーアウトと言ってもその内容はかなり多様である。『ライフをゼロにするデッキ』という表現の中に、アグロやミッドレンジだけでなく、実際には相手とのリソース差によって勝利を作っているコントロールデッキまで含まれてしまうように、「相手にドローできなくする」というのは勝利の為の最終目標でありゲームプランの内容ではない、というのがその理由。
 ライブラリーアウトの中にも無限切削などのコンボに寄せた形や、コントロールのフィニッシュ手段として切削を用いる物などがあるが、今回はバーンに近い「リソースを吐き出して高速で相手のデッキを削り取ってやろう」というデッキである。

弱点

 意気揚々と最近使ってる楽しいデッキを紹介しよう、という文章なのだが、まずはデッキの弱点から話していこうと思う。
 少ない弱点を話した後に大量の長所を語ることで印象を良くしようといった入り組んだ意図があるわけではなく、デッキの成り立ちの根本にライブラリーアウトの『弱点の克服』をしようとした(そしてだいぶマシにはなったものの今なお付いて回る)形跡があり、この弱点の把握がゲームメイクの上で重要な判断材料となっている為である。


第一の弱点「遅い」

 バーンに近い「リソースを吐き出して高速で相手のデッキを削り取ってやろう」というデッキである。と語ったばかりで大変申し訳ないのだが、事実は事実。ちゃんと述べなければならないのは、このデッキは遅いということである。
 というのもこのデッキのキルターンは後手5ターン目。
 多くのアグロが先手4ターン目での逃げきりを狙うなか、相手に2ターンも多く動かれる後手の5ターン目での決着ははっきり言って高速デッキとは言えない水準だろう。
 特に実質的な先手3キルを目指してくるアブザン機体(パルへリオンコンボ)には辛酸を嘗めさせられることになるだろう。


第二の弱点「何も得られない」

 しかし世の中のデッキは速度を指向したデッキばかりではない。リソースを拡充し使ったカードの枚数と選択肢の広さで勝利を手繰り寄せることを意識したミッドレンジやコントロールといったフェアデッキが多く存在するようにライブラリーアウトも……とは中々いかない。
 相手のデッキを削り落とすカード、俗にいうミルスペルは「相手のデッキが無くなる瞬間までなにもしない」カードだからである。
 詳細はデモコン理論でいくらでも詳しい方が解説しているので省くが、相手のデッキを削る、という行為は「それだけでは」なんのアドバンテージにもならないのである。
 そこで「外科的摘出」や「根絶」「墓所への乱入」「不敬な遺品」などの相手の墓地を肥やすことで状況を動かすカードの出番なのだが、なんとエクスプローラーという不完全なフォーマットでは、パイオニアに存在する「墓所への乱入」「不敬な遺品」すら存在しない。
 エクスプローラーをパイオニアにする、という話が一体何年前に言い始めたことなのかという文句はさておき、ないものはない為、ミルスペルは撃てば撃つだけテンポアドバンテージとカードアドバンテージを喪失する「何も得られない」カードであり、モダンのライブラリーアウトのリソース面を支える「彼方の映像」もない。「物語への没入」という強力なカードも、「宝船の巡行」との撃ち合いには勝てない(本来であれば墓地枚数によって制限のかかるカードなのだが、こちらが肥やしている以上ただのアンリコである。更にいうならば探査によって相手の墓地が減ると物語への没入のコストが軽減できないことがある)ため、コントロールに寄せるプランは実質的に存在しないと言っても過言ではないだろう

第三の弱点「カードの選択肢が少ない」

 前述の弱点であるキルターンの遅さにも関わってくる問題なのだが、エクスプローラーのライブラリーアウトは実のところかなりカードの選択肢に乏しい。相手を切削できるカード自体はそれなりに種類があるのだが、その出力が基本的に不足しているのである。
 先ほどから述べている後手5ターンキルを行う場合、目標となる相手のデッキ枚数は毎ターンのドロー込みで50枚。このデッキのマナの頂点である4マナで土地が止まるように引き込んだ場合、使える手札の有効枚数は8枚であり、マナはゲームを通して計14マナ。
 手札1枚につき6.3枚、1マナにつき3.6枚を切削しなければキルターンは5ターンを超えるのである。
 この条件をどちらとも満たすカードは多くなく、また相手の妨害を食らったり、逆に相手を妨害するカードを引き込んだ際には更に要求が上がっていくことになる。条件を両方満たすカードを可能な限りデッキに詰め込んでも36枚にはならず(厳密には条件を満たしているが不採用になっているカードも何枚かあるのだが、それらのカードは前提条件などの構築への制限が重たい)、カード選択の幅が非常に狭いのも明確な弱点である。
 ちなみに先手4キルを行う際は手札1枚で8.3枚、1マナにつき5.0枚と、条件を満たすカードでデッキを組むことが難しくなる。

 

第四の弱点「フリースロットが少ない」

 そして更に致命的なのがフリースロットの少なさである。「コントロールを殺すには熊一匹いれば足りる」なんて冗談もあるように、クリーチャーでライフを狙うデッキの場合、時間はかかるものの生物のスタッツだけで相手を倒しきれる可能性があるが、ミルスペル1枚で削れるデッキの枚数がほぼ決まっているライブラリーアウトでは「手札一枚で勝つ」ことはほぼ不可能である。
 つまりデッキの中のミルスペルの密度は慎重に選定しなければならず、前述のミルスペルの性能も相まって相手の妨害に使えるデッキと初手の枠がかつかつなのである。
 デッキの中身の大部分に及第点のミルスペルを頑張って詰め込んでいるのにも関わらず、妨害のスロットは強豪カードを枚数調整しながら慎重にスプリットするしかない、というのがカードプールから来るデッキの事情となっている。


発想の転換

 これらの弱点が上手いこと解消できず、エクスプローラーではライブラリーアウトを組んでは解体し、新しいアイデアが浮かんでまた組んでは解体し、と繰り返していたのだがイクサラン:失われし洞窟の新カードで少し状況が好転する。

令和の2マナランド

 『沈んだ城塞』土地の起動効果に対して2マナを捻出出来る土地である。
 前提として、「何も得られないこと」「カードの選択肢が少ないこと」はもうどうしようもないとして、デッキが遅いことは妨害を厚くとることで相手を減速させるという選択肢があるのだが、それを行うにはデッキのスロットが足りない。というのがネックとしてあったため、土地枠を使って相手を減速させよう、というアプローチを行ったことがあった。
 しかしマジックの土地についている妨害効果は基本的にマナフラッドを誤魔化すのが主たる目的であり、はなからメインに据えるようなマナ効率ではない。当然手札の消化が悪くなり、結局相手に速度負けする為にお蔵入りになっていた。
 ところがこちらだけ2マナランドが使えるならば話は別。廃墟の地は土地の減らない幽霊街になり、イプヌの細流は2マナ4切削とアンコモン程度のミルスペル扱いでその分メインのデッキスロットが少し増加、道路脇の聖遺に至っては条件を満たせば2マナ2ドローと表現の反復もちょっと引くくらいのアドバンテージ源となった。
 反面、無色マナしか出ない土地が増えたため多色化が難しくなったのだが、メインのデッキスロットはそもそも余裕がなく、選択肢の多さを生かしきれないジレンマがあったため、いっそのこと青単色にしてしまえ、というのが今回のデッキである。
 土地以外のカードのマナ平均が1.75マナとかなり軽量なデッキにも関わらず、土地の枚数が24枚も取られているが、これはマリガンによる手札減が非常に厳しいデッキである事と、マナしか出ない土地が基本土地4枚と沈んだ城塞の4枚で計8枚しか取られていない事が理由。それ以外の土地は何らかの効果を持っておりマナフラッドに対して有効牌が多いためこの土地枚数で気にならなかった。
 前述の弱点が無くなったわけではないものの、ここ何年かで組んだエクスプローラーのライブラリーアウトの中では最も使用感が良かったため、強いかどうかはともかく遊んでいて不快感のない程度にはなっていると思う。


長所

 弱点の項目に対してずいぶん淡白な文になってしまうが、明確な長所は平均キルターンの速さである。
 遅いと言ったり早いと言ったり、ずいぶん情緒不安定な解説なのだがなんだかんだこのデッキは早いデッキでもあるのだ。
 後手の5ターン目、このターンは黙示録シェオルドレッドがようやく殴り始めたターンの返しであり、案外このターンまでにゲームを決着させられるデッキは多くはない。特に妨害にスロットを多く振ったミッドレンジやコントロールなどはこれから自分のデッキの本領発揮、といった具合になることも少なくなく、そしてライブラリーアウトのキルターンを伸ばすために有効な妨害はあまり多くない。
 特に除去や生物による盤面制圧などはほぼ刺さらないのが大きく、除去コン相手には理不尽な勝利を作れることも。
 打ち消しや手札破壊による妨害は刺さるのだが、打ち消しを用いるデッキは手札を増やすデッキ、つまりドローでデッキが削れていくデッキであることが多いため構造上の有利があり、手札破壊は土地に刺さらないことやデッキトップに有効牌が多いことで抵抗できる傾向にある(ハンデスによってお互いの手札が枯渇すると相手のデッキトップが土地やハンデスである場合に腐るが、こちらは土地とミルスペルの金太郎飴デッキであり、その土地にも起動効果がついているものが大半なので無効牌を引きにくい、という理屈)
 これらの理由からアグロに比べてトップスピードは出ないが、速度が落ちにくいということが明確な長所なのだが、正直このデッキを使っている最中にこの長所を意識することはあまりない。裏を返せば意識せずとも良いくらい安定しているという話でもあるのだが。


各カード解説

ミルスペル

 遺跡ガニ なんとモダン最強の1マナクリーチャーが使えるパイオニアのデッキがあるらしい。 ライブラリーアウトと言えばカニというほどの知名度を誇るデッキの顔……なのだが、パイオニア環境においてはアンタップインのフェッチランドがほぼ無いため、かなりの弱体化が入っている。 それでもデッキ50枚をライフ20点に換算すると1回の誘発で1.2点ダメージ。十分な強さがあるうえ、相手が必死になって除去すると多くのケースでテンポアドが取れるため、十二分に強いカードである。 ただし手札に土地がなければただの甲殻類。出来るだけ序盤に場に出したいのにも関わらず、1ターン目に投げると1度も効果を使えない可能性もあり、場に出す順番は後述の「ほぼカニ」なカードとの兼ね合いになる。

群の祭壇
 1マナで設置して、土地が出るたびに相手を切削するので、このカードはカニ。
 カニとの大きな差はすべてのパーマネントで誘発する事、除去されづらい事、そしてクリーチャーを止めてくれないことである。
 非常に優秀なカードではあるのだが即効性が非常に低く、こちらも可能な限り早めに場に出したいが、相手の除去を吸ってくれない為、本物のカニが即落ちするケースがある。カニの効果を複数回通したい場合にはもう1人の「ほぼカニ」を優先して出す選択肢もある。
 除去されづらい上に同名カードの着地にも反応するため、3枚以上重ね引いて祭りになることが稀によくある。

査問長官
 青1マナで6枚も切削するクリーチャーなので当然このカードもカニである。
 どう足掻いても1枚で6枚以上切削してくれないので上振れは起きにくいのだが、チャンプブロック時に起動効果で切削しながらライフを守るなど器用な動きが出来るのが優秀。また場に出さえすればエネルギーは獲得できるので、即座に除去されても2枚目の査問長官で仕事を引き継げるため除去されても痛手になりにくい。
 そのため本物のカニに飛ぶ除去を吸うために1ターン目に場に出ることが多いのだが、このカードは1枚で切削枚数が担保されているため、群の祭壇を一緒に引いている場合は群の祭壇を優先したい。

荒れ狂う騒音
 2マナで唯一及第点を取った、という理由だけで4枚採用されているカード。言ってしまえば面接時にスーツを着てきた唯一の2マナミルスペルというだけであり、本来4枚も採用せずに他のカードとスプリットしたい所なのだが、ほかに選択肢がないのでこのカードが最も良いカードである。頭を抱えたいのはこっちの方である
 とはいえこのカードに個性がないわけではなく、後述の正気減らしとこのカードのキッカーで2枚即死コンボになるため、妨害を大量に引いてしまっている場合などは意識してこのカードを使うのを後回しにするプレイングがある。このデッキにおいてカード2枚で勝てる、というのは貴重な要素である。

正気減らし
 このデッキの最重要カード。極めて受けの広いコンボ用カードでありその広さは「正気減らしが正気減らしとコンボする状況がある」ほど。
 切削の枚数を倍にするというテキストに見えるが、実際の性質は「切削枚数×2^正気減らし枚数」にするという気の狂ったものであり、このカードが2枚置かれている状態で査問長官の3枚切削を起動すると12枚、3枚置かれている状況では24枚もの切削が発生する。
 前述の荒れ狂う騒音キッカーとのコンボだけでなく、3ターン目に正気減らし、4ターン目に完成化ジェイスの大マイナスと動くと30枚もの切削が発生、デッキ50枚をライフ20点で換算すると12点ダメージにもなる重要なコンボとなっている。

ターシャズ・ヒディアス・ラフター
 モダン級のミルスペルであり、このデッキの問題児。
 とてつもない量のデッキ破壊を巻き起こす強力無比なカードなのだが、前述の正気減らしとの噛み合いが悪く、相手のデッキによってはわずか7枚ほどでデッキ破壊が止まったりもするため、マッチアップに左右される気難しいカードでもある。
 それでも3枚採用されているのは、このカードが軽いデッキにほど強烈に刺さるカードであり、本来不利なマッチアップである「自分よりも早いデッキ」との相性差をひっくり返す可能性があるからである。
 詳細は後述するが、アグロデッキ相手にはこのカード1枚で20枚以上持っていく可能性があるため、サイドボードを用いて切削までにラグのある正気減らしとの配分を逆にしたい。

完成化した精神ジェイス
 状況によって3マナにもなれるPW。書かれているテキストの派手さに惑わされがちだが、実のところデッキの中での立ち位置は小回りの効く調整役であることが多くある意味完成化していてもジェイスらしい、ミルスペルとしてはギリギリの水準だったりする。
 4マナで唱えた時の大マイナスで15枚は、要求されているマナ効率3.6枚/マナ×4マナ=14.4枚とギリギリで、3マナで唱えた時の9枚切削では要求が10.8枚と足りていない。小マイナスの条件である相手の墓地が20枚以上は、前述の正気減らしとのコンボ時の確殺ラインぎりぎりであることから場に正気減らしがある場合は大マイナスを撃つため、ほとんどの場合は3切削+キャントリップとして使うことになる。
 とはいえその小回りの良さは素晴らしく、3マナで使ってキャントリップしても忠誠度が残るため相手が対処しなければならず時間稼ぎができたり、手札に複数枚引いても大マイナスで綺麗に使い切れたりとデッキの動きを支えてくれているカードである。

妨害

消えゆく希望
 一時期スタンダードで多くのビートダウンに辛酸を舐めさせていた1マナのバウンス呪文。
 基本的に優秀な妨害はライブラリーアウトを手伝ってくれないのだが、このカードは占術がついていることで手札の質が上がり結果的に自分のプランの助けになる、という部分が非常に優秀
 とはいえ結局はバウンス呪文。基本的に一時しのぎにしかならないため本来であれば4枚積むカードではないのだが、相手の除去に対応してカニを手札に戻すことで守れるという点を評価できる。呪文貫きの3枚目として4枚目のこのカードが取られている。という形である。
 ETB能力の再利用も出来るため、エネルギーを使い切った査問長官でブロック指定後にこのカードでバウンスすると、ダメージを抑えつつ翌日出勤していただける半休でもエネルギーが貯まる社畜の鏡

証人保護
 タイムシフトで青に移ってきた『お粗末』も令和になるとここまで強くなるのかと、ニューカペナの時に感動したカード。青は除去が弱い色だとされているが、このカードがあるおかげで単色化に振り切れたといっても過言ではない。
 その割に2枚採用に留まっているのはひとえにこのカードがインスタントタイミングで使えない、という部分が大きい。
 パルヘリオンシュートや独創力コンボなど、妨害できないコンボデッキが一定数存在することが特に大きく、サイドチェンジで対応しやすくするために枚数を抑えている。とはいえバウンスでは対処したくないクリーチャーも一定数存在するためデッキの中、そしてカードプール自体に存在することが大事なカード。
 注意点として、+1/+1カウンターは消えないため、転職した帳簿裂きが昔に謀議して作ったコネで殴りかかってきたり、老樹林のトロールが定職についた瞬間に恋煩いの野獣が一目惚れしたりする事がある。

呪文貫き
 正直書くことがあまりない。それほど優秀な1マナのソフトカウンター。他の打消し呪文との相違点だが、そもそもパイオニアは青単色カウンターが非常に物足りない環境であるため、広く当たることよりも当たった時のリターンが大きい1マナのカウンターを選択。その1マナのカウンターの中でも当たる範囲が広く、ソフトカウンターの弱点である賞味期限切れも、デッキそのものの速度によって無視しやすいため相性がいい。
 そもそもデッキ削りにマナを割くため自由に使えるマナが少ないというデッキ事情にもフィットしており、カニに飛んでくる除去を弾くことでクロックパーミッションのような立ち回りも短期的には可能。

光波の歩哨
 除去の質がバウンスと変身であるため小粒クリーチャーの横並びに弱い点、後述の道路脇の聖遺のアーティファクトカウントを稼ぐ点などを補うためのカード選択。相手が特殊土地を出すたびに回復することや、プロテクション多色、1/2という査問長官や圧倒される弟子と並んだ時に相手が殴りにくいステータス等、1マナでありながらそこそこの対処を強要できるのが強みなのだが、デッキの動きとのシナジーという意味ではフィットしているカードとは言えず、不敬な遺品などの優秀な1マナファクトが使えるようになると採用から外れるだろうカードではある。
 ただビートダウンへの優秀な遅延性能は個人的に大変良かったので、このデッキの採用から外れたとしても別のデッキでの選択肢として活躍してもらおうと思っている。


土地

沈んだ城塞
 前述の通り、このデッキの使用感をぐっと向上させてくれた令和の2マナランド。後述の起動効果もちの土地すべてのカードパワーを間接的に跳ね上げており、挙句の果てには青マナまで出るため初手の安定性にも寄与している。惜しむらくはタップインである事なのだが1度でも起動すればそのテンポ損も回収できると考えれば妥当なところだろう。


 廃墟の地から持ってくるための基本土地。廃墟の地と同数しか入っていないが、これはそもそも廃墟の地を4回撃つ試合がなかったからであり、その場合も最低限無色マナは出せるため問題にならないだろうという判断である。初手に3枚以引いていると流石に苦い顔をせざるを得ないが、ダブルアクションのために出来れば青マナが2個は欲しいデッキであるため、貴重なブルーカウントでもある。

天上都市大田原
 特に言うことはない。沈んだ城塞からのマナが当てられるためちょっと軽く魂力が使えるが、それでもバウンスとしては重くこのデッキでは滅多にバウンスとして使うことはない。とはいえ島を1枚置き換えて損はないためデッキに入っている。廃墟の地のサーチ先枯渇が気になる場合や環境の母聖樹の枚数が多くなったら島に戻すのが良いか。

イプヌの細流
 アンタップインで青マナを出せる上に土地の枠で4枚切削が行える土地。本来であれば計3マナとこのカードの生贄による長期的なテンポ損(実質土地置きをしなかったのと同じ状態になる)と、マナ事情に重く圧し掛かってくるカードなのだが、沈んだ城塞によって1ターンで2枚同時に起動して相手のデッキを削りきってしまう等の動きが可能になったため実用性がかなり上がった。
 また土地の起動効果であるため、基本的に打ち消しによって潰されないことも明確な長所であり、相手の隙を見て正気減らしを設置し次のターンでこのカードを起動して勝つ、というパターンがサイド後のイゼットフェニックスや青白コントロール戦で目立った。

廃墟の地
 前述の通り、デッキ破壊という行為には基本的になんのアドバンテージもないのだが、例外としてサーチ先が無くなった場合には明確にアドバンテージを発生させることがある。
 そういう意味でこのカードはデッキ破壊にポジティブな理由をつけてくれるカードでもあるため、書庫の罠という強力なミルスペルがなくとも採用の圏内に入るカードではあるのだが、沈んだ城塞と組み合わせる場合には細かいことを一旦おいておいても問題ないほどのカードパワーに化ける。
 まず土地破壊が出来るターンが1ターン早くなる。1ターン目沈んだ城塞、2ターン目に廃墟の地で即座に起動でき、相手の特殊土地を破壊しつつこちらは青1マナを立ててターンを返すことが出来る。
 この時点でずいぶんな無法ぶりなのだが、パイオニアにはフェッチランドや血染めの月などの基本土地に意味を持たせるカードが環境にあまりなく、しかもトライオームやショックランドなど多色化が容易という極めて基本土地の薄いフォーマットであるため、相手の構築次第では純粋な土地破壊に化けるケースが多々ある。こうなると「こちらが土地を失わない不毛の大地」というマジック史上でも類を見ないトンデモカードに化けるため、純粋に強力な2枚コンボとして4枚の採用である。
 ちゃんとマナの出る土地であるため、コンボにありがちな片方だけを重ね引いて相方がないという事態も苦にならず、起動効果を使えば島になるためカラースクリューも発生しにくい上に、カニの上陸の誘発して切削を作ることができるという安定性も優秀。その場合相手のデッキに基本土地が残っているとカニと基本土地サーチで計4枚のデッキ破壊となるため計算を間違えないようにしたい。
 またイゼットフェニックスやラクドスミッドレンジのような2色デッキでも、基本土地は片方だけを2~3枚という構築が多く見られ、相手のカラースクリューを作りにいけるシーンも多い。

不安定な断層
 5~6枚目の廃墟の地。実際には解体爆破場という本当の意味での5枚目以降の廃墟の地も存在するのだが、デッキの中の基本土地枚数を確保できないためこちらを採用。起動が1マナであり沈んだ城塞の恩恵を受けられないのがアンチシナジーではあるのだが、廃墟の地と並んだ際に廃墟の地から出してきた島で起動し、さらに土地破壊出来るためコンボチックな動きも。
 残念ながら補填で貰えるのが宝物トークンであり、土地枚数自体は減ってしまうため土地破壊の効き目が薄い相手には起動しない選択肢を取ることも多い。
 余談だがこのカードの起動では当然カニは誘発しないが、宝物トークンもパーマネントであるため群の祭壇は誘発する。

道路脇の聖遺
 土地枠でのインチキ2枚目。表現の反復を撃たれるたびに「2マナで2枚ドローはダメでしょ」と言い続けていたのだがまさか自分がすることになるとは……。実際にはドローするには条件があり、起動も計3マナであるため妥当なラインなのだが、沈んだ城塞での実質的なマナ軽減と群の祭壇、正気減らしのが重要なカードとなっているこのデッキでは強く使えるカードである。
 このデッキのアーティファクトは群の祭壇4枚と光波の歩哨2枚で計6枚、エンチャントは正気減らし4枚と証人保護2枚の計6枚となっており、マナコストの問題でエンチャントが不足しがちであるため、証人保護とこのカードを両方握っている場合は証人保護の打ちどころを考えていきたい。
 ハンデスで落とせないドローソースであり、手札が尽きた時に軽いマナコストで手札を増やせるため非常に強力であることは間違いないのだが、土地が減ることと相手は宝船の巡行で1マナ3枚ドローすることを考えるとリソース勝負はやはりできない。あくまで土地枠から出る最後の一押しである。

ガイアー岬の療養所
 5枚目の道路脇の聖遺、というには少し足りないのだがこちらは1枚とはいえ相手のデッキが減るのが特徴。特にハンデスを使うデッキと当たることを意識しての採用であり、インスタントタイミングでのルーティングによって有効配を引き込むのが主な目的。採用理由がふわっとしている1枚であるため、もっと噛み合う1枚が見つかれば大田原ともども入れ替えになるだろうとは思っているのだが、ハンデスによって1試合の中で撃てる有効配の枚数を減らされるのが厳しいデッキなので、ピンポイント気味でも対抗できるカードを多く積んで損はないだろうという判断をしている。(それに最悪土地なので)


サイドプラン

 サイドボードのカードは
 圧倒される弟子 4枚
 魂標ランタン 2枚
 風化したルーン石 2枚
 神秘の論争 2枚
 断れない提案 2枚
 呪文貫き 2枚
 ターシャズ・ヒディアス・ラフター 1枚

 サイド後にミルスペルを減らすとキルターンが遅れる可能性があるため、基本的には前述の妨害枠との交換になる。そのため基本的には1マナのカードで構成されているのだが、例外は風化したルーン石。天敵であるパルへリオンコンボと独創力コンボ、象さん増産デッキなどがまとめて対策できるため採用されている。
 風化したルーン石はイゼットフェニックスにも有効なカードなのだが、対イゼットフェニックスはメイン戦の時点で有利が取れているデッキであるため、マナカーブを歪めてまでルーン石を入れたいとは思わなかった。
 圧倒される弟子とターシャズ・ヒディアス・ラフターは対アグロ用のアグレッシブサイドとして採用。デッキのマナ総量が60程度のデッキ(参考までに白単人間はマナ総量が63や72のリストを確認している)に対してはターシャズ・ヒディアス・ラフターを2回撃ってキルターンを逆転したいという目論見であり、相手の横並べに対してこちらも小粒のクリーチャーを並べながらラフターを探しに行けるため圧倒される弟子を採用している。圧倒される弟子の交換先は呪文貫きと証人保護ないしは光波の歩哨。この場合ラフターの入れ替え先は例外的に正気減らしとの交換を想定している。
 魂標ランタンは見たまま墓地(パルへリオン)対策の追加となっている他、除去と交換するために1マナ打ち消しを3種類計6枚採用、神秘の論争は象さん増産デッキに対して1マナで撃てず、断れない提案は序盤に撃つと相手にランパンされるという弱点はあるもののどちらかに寄せると裏目がちらつくため、スプリットでの採用となった。他の1マナ打ち消しの選択肢としては洗い落としなどがあるだろうか。


マッチアップ所感


対イゼットフェニックス
 MTGアリーナで自分が遊んでいる中で最も遭遇率の高いデッキ。こちらのデッキ破壊が相手のフェニックスを墓地に送る行為になってしまい、さらに宝船の巡行を簡単に撃たれる非常に厳しいマッチアップ、に見えるのだが、体感の勝率は7割ほどでこちらが有利に感じている。
 というのも現行のリストではメインボードのクロックがフェニックス以外には帳簿裂きしかおらず、帳簿裂き単体でのクロックは決して早くないというのがまず1つ。フェニックスを生き返らせるために軽量のドロースペルを連打する構造になっており、勝手に相手のデッキがこちらの確殺ラインまで削れていくのがもう1つ、そして基本土地の枚数が多くの場合島を2枚程度取っているだけであり、赤マナを絞ってカラースクリューに追い込みやすい事、相手の引きやこちらのデッキ破壊の如何においては純粋な土地破壊になりやすいのが勝因と考えられる。
 メインボードでは構造上は除去コンであるため、無効配の多さもあって押し込みやすい相手なのだが、サイド後は除去の枠が打ち消しに変わるため土地破壊による足回りの悪化で揺さぶって正気減らしを通すゲームになりがちである。1~2ターン目でフェニックスが2枚以上墓地に落ちるとクロックが跳ね上がるため、荒れ狂う騒音などの後からでも撃てるミルスペルは順番を下げると裏目を引きにくいか。

対ラクドスミッドレンジ
 派生していろいろ開拓されてきているのか黒単などのデッキに当たることも多く、環境トップのはずのこのデッキとはあまり対戦数が稼げていない。
 構造上1枚のカードで勝てないデッキであるため、ハンデスで手札を絞られると非常に苦しいのだが、相手は相手で除去が腐りやすく純粋なキルターンではこちらが優っているためデッキトップの噛み合いのゲームになりがち。
 思考囲いの他に強迫まで採用しているタイプのデッキには1~2ターン目までの間に2枚以上ハンデスを撃たれることもあるので、そうなるともう金太郎飴デッキとしてトップを信じて引くしかない。クロクサが序盤に落ちると大変苦しい試合になるのだが、かといって墓地対策の刺さりが良くないのも難しい。より完成された金太郎飴になるためにサイド後は呪文貫きと光波の歩哨を圧倒される弟子に交換することが多い。
 体感の勝率は5分から微不利。

対パルへリオンコンボ
 終わりです。本当に終わり。基本的にメイン戦で勝てる目は無く、サイド後の墓地対策と相手との噛み合いを祈る形になる。コンボを封じたうえでエシカの戦車やスカイソブリンといったスケールの大きいカードが本領を発揮する前に相手のデッキを削りきる以外に勝ち筋がないため、サイド後も2戦両方取るのはかなり難しい。
 サイドボードは光波の歩哨と証人保護を風化したルーン石、魂標ランタンに交換。パイオニアにも外科的摘出をください

対青白コントロール
 有利なマッチアップ。とにかく相手とこちらのキルターンが離れており、かつドローによってアドバンテージを拡充するデッキであるため勝手に相手のデッキが削れていく。クロックの大部分をミシュラランドに頼っているデッキでもあるため土地破壊によって詰め手が失われる事も。
 サメ台風設置までゲームが長引いてしまうと流石に厳しくなってくるが、そこまでのゲームプランの中での明確なクロックは放浪皇くらいであり、1マナのミルスペルで圧力をかけつつ、焦ってライフを詰めようとマナを寝かせたところに正気減らしやジェイスをねじ込めばほぼ負けることはないだろう
 ただし青白コン自体も廃墟の地を採用するデッキであり、それに対応して基本土地の枚数が多めに取られているため土地破壊としては効き目が悪く、相手の廃墟の地によってこちらの特殊土地も割られるためマナフラッドになるとリソースの枯渇に悩まされる可能性はある。
 サイドは光波の歩哨、証人保護、消えゆく希望2枚を打ち消し6枚に交換。

対アマリア探検
 数戦しか出来なかったため正確なマッチアップは分からないが、体感ではかなり不利に感じる
 このデッキは総じて自分よりも早いデッキが苦手であり、アマリア探検も最速3ターンキルデッキである。自分よりも早いデッキは総じてマナコストが軽い傾向にあるため、ターシャズ・ヒディアス・ラフターが刺さりやすいのだが、アマリア探検の総コストは87前後であり、ターシャの上振れで速度が逆転するかというとかなり厳しい印象となる
 そのため、光波の歩哨と呪文貫きを風化したルーン石、魂標ランタンに交換し、戦列への復帰や召喚の調べ、集合した中隊などを牽制しつつ、手札でコンボが揃わないように祈る形がもっともマシな選択肢に思える。また基本土地も0〜1枚程度の構築が目立つため、相手の土地置きによってはカラースクリューで遅延できる可能性はある。
 パルヘリオンコンボもそうだが、外科的摘出や根絶が存在しないため、モダンではお客様くらいの有利がつくであろうコンボデッキに対して非常に脆くなっているのが、どうにも寂しい限りである。

まとめ

 以上が自作のLO(ライブラリーアウト)、ロリ好きRoLiSuCiの解説となっている。
 使えば勝率が上がるような強いデッキではないが、ライブラリーアウトにはライブラリーアウトにしかない魅力があるのでそれを少しでも感じられるようなレシピになっていれば幸いである。
 生成コストとしても高い部類のデッキではないので、ワイルドカードに余裕がある人はぜひ作って遊んでみてほしい。そして自分の試した構築やサイドプランを教えてほしい

いいなと思ったら応援しよう!