6月
夜、眠れないと、
夜に鳴く、鳥や虫の声が、
たくさん、聞こえる。
姿を見ることは出来ないけれど、
みんなが眠るこの町で、
同じ暗闇に、
目を閉じずにいる、きみがいる。
夜は、いいよね。
広々として、場所も、時間も、
誰かと取り合いにならない。
暗闇の静けさにひびく、
虫の羽音や、鳥のさえずり。
夜に生きると決めた者たちの、
命と暮らしの音が、聞こえる。
眠らない、むしろ目覚めてゆく、
草木は眠るが、丑三つどき。
あの鳥は、ホトトギスらしい。
この時間になると、カエルもなきやんで、
夜の鳥の声が、ほんとによく響く。
孤独だな、と思いそうで、思わないのは、
そのおかげなのかもしれない。
小さなころ、眠れない夜に、
屋根裏部屋の小さな窓を開けて、
しゃぼんだまをした。
私の息が、うすいシャボンの膜に包まれて、
夜空をゆっくりさまようと、
自分も、ふわふわ、
夜中の町に連れ出される感じがした。
どこへでも行ける気持ちになって、
「眠れない」という、
閉じ込められたような感覚からも、
開放されたようだった。
ホトトギスの声は、あの時の、
しゃぼんだまに似ている。