PMの期待値は何であって何ではないのか

で紹介したとおり、最近PMをやっている。PM活動の中でPMに対しての期待値について考えることがあったので、現時点で考えていることを書いてみる。

PMがやるべき活動=BSに響くものを作っていく

前回の記事にも紹介したとおり、プロダクトマネジメント=PL思考と開発生産性向上の間だと考えている。

PLは損益計算書、BSは貸借対照表の概念に近く、GPは開発の生産性や組織力といったものと考える。製造の観点でいうと、ものを作る工場に投資をするとBSの資産が上がり、それが時間経過とともに物が売れてくるので売上となり、利益となっていくといったイメージだろうか。工場には様々な製造の機械があり、それらをより円滑に稼働できるようにするのがGPの投資と考えると良いかもしれない。つまりユーザの価値としては右に行くほど将来に返ってくる価値になり、左は目先の価値と言えるかなと思う。

https://note.com/kotamat/n/nfd52b23a7ec6

「まずこれを作ることによって、それ以降時間経過とともに利益が上がっていく算段があるもの」を特定し、それがある状態にすることが経営戦略の観点からPMがやるべき活動として定義できるのかなと考えている。ただそれだけを述べると抽象的でよくわからない。何であって何でないのか。

🙅‍♂️ 今まで誰も考えつかなかった斬新なアイデアを提案すること

確かに今までPMがいない状態でも回っていたのであれば、PMがいることによってPMの観点から今までの延長線上ではない別の世界を見せてもらいたいと考えるのが自然である。PMが思い描く斬新なアイデアが、もしかしたら資産性のある投資につながるかもしれないので、一概に斬新なアイデアを提案するなという話ではないものの、果たしてそのアイデアが資産性のあるものとなるのか?というと疑問に思う。

PMがいない組織だったとしても、少なくとも立ち上げ時にはどういう事業にしていきたいかは考えていたはずであり、事業が進捗していく中でもそれぞれ関わるメンバーがその事業に対して期待していることはあったはず。実際に事業を進捗させている当事者たちが考えている内容であるので、それらそれぞれの思惑の中に、資産性があるアイデアがある可能性のほうが、ない可能性より高いはずであると考えるのが自然だと考えたときに、PMが考えた全く斬新なアイデアは資産性の構築の助けになるどころか妨げになる危険性もはらんでいるのではないか。

PMが「これが資産性のある投資である」と提案する内容は既視感のあるものが多い状態になる可能性が高く、それに対して抱く感情は「まぁそうだよね」ってなるし、それでいいと思っている。それは下記の観点からもそうあるべきだと考える。

🙆‍♂️ 事業部の人の見ている視点を合わせること

話は変わってしまうが、PMが必要だなと思う組織では下記のような状態が発生していないだろうか

  • 各部署がサイロ化してしまい、事業部全体での方向性を見失っている

  • 目の前のPL達成に躍起になっており、中長期的な投資ができていないように感じる

  • Howが分かりやすい課題への施策しかやっておらず、積み上がっている感覚がない

事業部のメンバーがポジション問わず「この方向で行けると成長する」という目線があっていると各々が自律的に成長できると考えている。ただ、各ポジションごとに考えている時間軸も次元も異なるので、同じ視点で全員が物事を考えることは非常に難しい。

The Model的な組織における役割の関係性(期間の数値は適当)

上記図でいうと、PLの中にいるマーケからCSまでは時間軸が異なる。例えばマーケのリード化した企業数が前月比で増加し、契約更新の割合が前月比で増加していたとしても、そこで上がっている企業の具体の企業名でいうと全く異なるラインナップになるはずであり、全体のエコノミクスが改善されたと言えるわけではない。同じ顧客ベースで言っても、そこの体験を語るタイミングは部署によって全く異なるのである。

一方、GPを担う開発は、PLからの二階微分を行った先の世界を見ている。二階微分の世界というのは「距離」→「速さ」→「加速度」の関係性と同じである。つまりどれくらい進めたのかを考えるときに単位時間における速さがあり、その速さが単位時間でどれだけ増加しているのかを図る加速度があるときに、距離を見ているチームと加速度を見ているチームという違いがあるのである。「今月はXkmだけ進めました」という話と、「今月は加速度の増減が発生しませんでした」というのはおしなべて比較することも単体での良し悪しを図ることもできない。BizとDevは認識の齟齬が起きやすいとよく言われるのはこういった次元の差異があるためであると理解している(次元の差異に優劣はない)。

とにかく各役割は見ている時間軸が異なれば、次元すらも異なるため、純粋に今の仕事に関して互いに理解するというのは難しい。視点が揃う別の考え方が必要になる。

🙆‍♂️ ユーザ中心に物事を考える

僕らはなんのために事業を行っているのか。それは事業を通じて顧客の課題を解決するためである。顧客の課題を解決するために関わっている人を含めてユーザ全体に対して何かしらの価値提供を行っていくというのが事業を運営している意義だと考えたときに、全ての視点が揃うのは顧客でありユーザになるはずである。

ユーザにとっての価値が増えていけば、PLに関わる役割の人たちにとってよりそれぞれが持っている数値が改善しやすくなるはずであり、GPを担っている人たちはその価値をより早く、多く提供するために頑張っていると考えられるのかなと思っている。

事業部全体がユーザに向き、ユーザがどうなったらハッピーになるのか、今ユーザは何に困っていて僕らはそこに対してどのように働きかけられるのか、時間軸も次元も異なる役割の人たちが互いに手を取り合い、互いに補完し合いながら一つずつ改善していくというのが大事なのではないかと考えている。その状態をプロダクトの観点から作り、維持していくのがPMの役割であり、期待されるべきことなのかなと考えている。

見ている視点をあわせる、ユーザを中心に考えることに関しては、これ単体でも下記に上げたもの含め語れる事が多いので、今回は省略する。

  • ユーザ中心設計

  • 顧客開発

  • 図解や数値などによる共通認識のとり方

  • ビジネスを理解し、事業計画や目標設定まで落とし込む

PMはこれらの知識を融合しながら、上記役割を担っていく必要があるのかなと最近は理解している。理解しているだけでまだできている水準には至っていないので、キャッチアップし必要に応じて専門家の方の知見をかりながら血肉にしていければと考えている。

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