【ハトヤホテル】レトロフューチャーの世界を探検。憧れの昭和ホテルに泊まる。
「伊東にゆくならハトヤ〜♪」
「でんわはヨイフロ〜♪」
このフレーズに聞き覚えがある方は多いかもしれない。80年代、90年代頃にお茶の間によく流れていたCMだ。
僕がハトヤホテルを知ったときにはもうこのCMは流れていなかった。作り物でない、本当のレトロを探し求めてインターネットの渦を彷徨い、このハトヤホテルと出会ったときの衝撃は今も忘れられない。
レトロはレトロでも「レトロフューチャー」。昭和の子ども向け雑誌に描かれていた未来予想図のような、昔の人が想像した未来像をそのまま具現化した姿のハトヤホテル。こういった「レトロフューチャー」な場所にはまだ行ったことがない。
食い入るようにハトヤホテルの事を調べてみると、まだ現役でやっているというのだ。すぐさまネット予約を見てみると結構な数の部屋が埋まっている。近年のレトロブームもあってか人気は健在のようだ。こいつはすぐに予約を取らなきゃあかんと思い、空いてる日を選んで予約した。1泊朝夕の食事付きで20000円とかなりお高いが、僕の目に迷いはなかった。
ハトヤホテルへ向かう当日。最近は毎日制作漬けだったのでこの2日間くらいはオフの日にすることにした。たっぷりと趣味の時間に費やす。まずは電車で熱海へと向かう。昭和新婚旅行のメッカ熱海には昔ながらの喫茶店や飲食店が数多く残っている。ハトヤホテルのチェックインは15時なのでそれまでは熱海でレトロ探訪をすることにした。今回はハトヤホテルをメインに書こうと思うので熱海の話はまた別の機会にでも書こうと思う。
熱海駅からはJR伊東線で伊東駅へ向かう。缶詰や観光で幾度となく訪れている伊東。今では伊東へ着くと実家へ帰ってきたような気さえする。
伊東へ着いてふと思い出した。僕は一度ハトヤホテルと出会っているんだ。前に缶詰に来たときに遠くに「ハトヤ」の文字があったのを今思い出した。その時はハトヤホテルの存在はもちろん知らず、レトロにも凄く興味があるという訳でもなかったので印象には薄かったのだ。ただ、前に書いた缶詰紀行にはちゃんと記録として残っていた。その事を思い出して余計にワクワクする。
駅からハトヤホテルまではシャトルバスが出ている。お迎えの可愛いバスがやってきた!牛乳瓶のような色合いのバスだ。「ハトヤ」のロゴも入っている。中から沢山のお客さんが出てきた。しかしここで思わぬハプニングが起こる。
シャトルバスが止まってお客さんを降ろしている場所は駅前の改札口からちょっとズレた場所で、僕はてっきりそこは「降りる専用」の場所で、乗るときはもっと改札に近い場所まで迎えに来てくれるものだと思っていた。しかし乗る場所もそこだったため、僕は慌てて乗り場へ向かったもののバスは出て行ってしまったのだ。しまった!!!次のバスは...うーん30分後か。仕方がない、じゃあ歩いて行こう。街歩きが好きな僕は30分待つならば30分歩いていた方がマシなのだ。もっとも一人旅だからいいものの、友達や恋人と来ていたものならそうはいかない。なぜならハトヤホテルまでは徒歩30分でかなり急な坂があるのだ。ハトヤホテルに着く前に大喧嘩になってしまうかもしれないので注意してほしい。
なんとか坂道を登り切り、無事に到着することが出来た。(ちなみに今までに経験したことがないレベルで急な坂だったので、冗談でも歩いて行こうとは思わないで欲しい。)
そして目の前には念願のハトヤホテルの姿が。凄い...なんというかとにかく今もこの建物が営業していてこれから泊まるということにただただ感動してしまった。
シャトルバスで向かった沢山のお客さんは既にみなチェックインを済ませているようで、ホテルの前には誰もいなかった。これはラッキー。おそらく、ホテルに着いたときに記念撮影などでごった返していたことだろう。僕は歩いていたために少し遅れて到着した訳だが、おかげでのびのびと写真を撮ることが出来た。一眼レフでパシャリ、写ルンですでパシャリ。今回は写ルンですも持って来ているのだ。
そしてようやくハトヤホテルの中へ。フロントからかなり豪華なつくりになっていて、丁寧に迎えてくれた。
「お部屋はロビーを歩いて左手にあるトンネルを通り抜け、エレベーターで13階へ上がってください」
言われたとおりに豪華なシャンデリアが垂れ下がるロビーを抜けると、目の前にトンネル型渡り通路の入口が現れた。ドラえもんがタイムマシンに乗るときに通る"時空"のようなこのトンネルは、令和と昭和とを繋いでいるような気さえした。本当にタイムスリップでもしたら明日の授業へ出れなくなるので困ってしまう。
その異空間へと一歩足を踏み入れる。床から両サイドにかけて貼られた赤いカーペット、天井にはレトロデザインなライト、そして葉っぱ型の丸い窓からは伊東の街並みと太平洋が見渡せるようになっている。トンネルの中に入ると宇宙船やウルトラセブンの秘密基地のようにも思えてきた。明らかにさっきまでとは流れる空気が違う。静寂も相まって現実と虚構との境界が曖昧になってくる感覚がした。トンネルを通り抜けると「シアター会場」と書かれた看板が目の前に現れた。昔のホテルにはシアター会場まで付いていたのか!なんたる贅沢。そしてこの「シアター会場」の文字がまたいい雰囲気を出してくれている。「プロムナード」とはフランス語で散歩を意味する言葉らしい。
さらに右へ曲がると大きなガラス張りの窓が。さっきトンネルの窓からも見えた伊東の街が一望できる。どうやら食事会場はこの赤いカーペットの敷かれた階段を降りた先にあるらしい。夕食の時間が楽しみだ。エレベーターを使って13階の宿泊部屋へと向かう。エレベーターの前にこれぞレトロフューチャーといった感じのナウいイスとテーブルが置いてあった。アロエ?か分からないがこの尖った多肉植物もどこか近未来的な要素を感じさせる。デザインがみな素晴らしい。エレベーターもかなりレトロだが、13階までちゃんと持ち上げてくれた。
今回泊まる13階は最上階。たまたま最上階の部屋に当たってラッキーである。部屋の鍵を開け、中へと入ると部屋はレトロフューチャーというよりは老舗旅館の和室といった感じの雰囲気である。これはこれで落ち着いていて最高だ。それに一人では充分すぎるくらいに広い。部屋の中を探検してみる。旅館で僕が一番好きな窓際のくつろぎスペースもちゃんとあった。部屋からの眺めはというと、若干斜めからではあるがハトヤホテルの外観が見える眺めとなっていた。おそらくこの部屋より良い眺めの部屋もあるはずだが、充分最高な眺めである。カーテン、床のカーペット、冷蔵庫、コップを置くケース、何をとってもみなレトロデザインで可愛い。次に洗面台の方へと行ってみる。まず何よりスリッパが良い。この赤地に「ハトヤ」とだけ書かれたシンプルなデザインが愛らしい。洗面台からはさっきの眺めとは対照に伊東の街並みが見えた。コップは僕の大好きなアクアグリーン色だ。探検を終えてようやく一休み。お茶を入れ、テーブルに置いてあったおもてなしのハトヤサブレを食べて一服する。夕食は18時から。時計を見ると意外と時間が経っているようで17時をまわっていた。一服を終えて、浴衣に着替え、夕食の時間までまた館内を探検してみることにした。鳩柄の浴衣もとても可愛い。
エレベーターでトンネルの階まで降りてさっきとは反対側の夕食会場の方を探検してみる。階段を降りるとさっき見たナウいイスが窓を向いて勢揃いしていた。そして窓にはドアが付いていてベランダへと出られるようになっている。ベランダからの見晴らしは最高。旅情を乗せた潮風がそっと頬を撫でて過ぎる。景色に見惚れているとまもなく夕食の時間となった。
夕食はバイキング。歩いて来たこともありお腹はペコペコだ。なんと夕食会場はシアター会場をそのまま使っているのだ。これはムードがあってテンションが上がる。シアター会場には豪華なカーテンが付けられたステージや沢山のスピーカー、それに2階席もあるらしい。食事会場として現在は1階席部分だけを使用しているらしいが、それでもかなりの広さである。
そして僕の後にぞろぞろと今夜の宿泊客がやってきた。どうやら今日は満室らしい。令和の今においてもこの昭和の豪華ホテルは大変な賑わいを見せているようだ。客層は5割がご年配の方、2割が家族連れ、2割がカップル、残りの1割が友人同士といった感じだ。もっとも大学生でひとりで来ている客など自分以外にはひとりもいなかった。
席は既に用意されていて部屋番の札が置いてある。4人がけのテーブルに1人だと流石にちょっと寂しいが、好き放題料理を持って来れるというわけである。おぼんを手に取り、バイキングの列に続く。スタート地点からいきなり豪華なメニューが並ぶ。サザエの壺焼き、鮑の刺身、生シラス、寿司、ローストビーフ、天ぷら、蟹の味噌汁。こんなに豪華なバイキングは初めてなのでまたテンションが上がる。ひとりなので人目を気にする必要もなし、値段を考えて遠慮をする必要もなし、当たり前だがバイキングなのでみな食べ放題。ここは天国かと思った。鮑なんて最後に食べたのはいつだろうか。貧乏性が災いした僕はトレーに入るだけの海鮮を詰め込んで席に着いた。後でまた来よう、海鮮ならいくらでも食べることが出来る。せっかくなのでお酒も頼むことにした。いつもは制作をしなければいけないので滅多にお酒は飲まないが、今日は休暇を満喫しに来ているので問題はない。贅沢にビールと日本酒を頼んだ。どれから食べようか迷ってしまう。海鮮はもちろん美味しいのだが、特にこのローストビーフが最高だ。僕はどちらかと言うと肉より魚派なので、普段はあまり肉料理を食べない。ローストビーフは21歳にしてこれが初めてだ。そしてあまりの美味さに感激してしまった。なぜもっと早く食べなかったのだろう。和風の薬味ソースが相性抜群で肉を引き立てている。もしかしたら単純にハトヤホテルのローストビーフが美味すぎるのかもしれない。最初のローストビーフがこれだと今後どうなってしまうのだろうか。結局、最後のデザートも加えると4回もバイキングの列に並び、大満足大満腹で夕食を終えることが出来た。
部屋へ戻って少し休憩。夕食の間に布団が敷かれていた。さて、お待ちかねの大浴場へ!と言いたいところだが、腹が膨れて身動きが取れない。バイキングとなるとつい欲が出て取りすぎてしまうのだ。少し横になってから向かうとしよう。小さい頃食べた後すぐ横になって寝ていると、祖母に「牛になるぞ〜」と言われていたのを思い出した。そうなったらそうなったで「もぉ〜」と言いながら草を食べる人生も悪くない気がする。10分ほど横になったら少し楽になった。
さぁ、大浴場へ向かおう。大浴場へはまたあのトンネルをくぐって一度フロントへ向かう。夜のトンネルはまた違った趣があって良い。外に「ハトヤホテル」のネオンが光っている。フロントからはさらにエスカレーターを使って上へと上がる。看板もまた当時のままで残っていて素晴らしい。「お食事処ダイヤモンドホール」「バー "花"」。このネーミングからも昭和を感じる。古い喫茶店やスナックのちょっと小洒落たネーミングが大好きだ。ギラギラの照明を浴びてエスカレーターを上がる。スターにでもなった気分だ。大浴場へと向かう途中にはゲームコーナー、カラオケルーム、麻雀室、卓球台などの娯楽施設が揃う。家族や恋人と来てる客は風呂上がりにここへ集合しているようだ。それにどうやら温水プールもあるらしい。ハトヤホテルはなんでも揃っているのだ。
では大浴場で疲れを癒すとしよう。浴場はかなり広く、色々な種類の浴槽があり、サウナも着いている。お湯加減もちょうど良い。さっきまでは目に映るものに夢中でカメラをパシャパシャとやっていたが、さすがに風呂場には持ち込めない。一度手を休めて肩まで浸かり、ゆっくりと疲れを癒した。風呂を上がると良い感じに眠気がやって来た。部屋へ戻ったらすぐに寝ることにしよう。徹夜漬けの日々を送っていたので久しぶりに規則正しく就寝が出来そうだ。部屋へと戻り、すっかり疲れも取れて極楽気分の僕は夜11時、布団に吸い込まれるようにして眠りについた。
5時起床。なんでこんな早く!?と思われるかもしれないが目覚ましを予めこの時間にセットしたのだ。早朝なら皆んな寝ているので館内はガラガラ。自由に写真を撮って回れるという寸法だ。それにまだ自分自身の写真を撮っていない。ひとりで旅をしているとつい風景を撮るのに夢中になって自分を撮るのを忘れてしまう。この時間は誰も起きていないので館内の至るところでタイマーをセットしてひとり記念撮影。満足のいくまで写真を撮り終え、朝風呂へと向かう。毎度のことだが、朝風呂へ行くと「えっ、外こんな景色だったの!?」と驚かされる。ちょうど日が昇ってくる時間帯だ。山と街の輪郭が段々とハッキリしてくる。湯に浸かっているうちにあたりはすっかり明るくなってしまった。さっぱり気分で朝風呂を出て朝食会場へと向かう。
朝食会場も夕食会場と同じシアタールームだ。バイキング開始の時間とともに会場へ入ったのでまだ2、3組しかいない。するとカーテンが「ゴーッ」という音とともに開き始めた。目の前には太平洋を望む伊東の街並みが広がっていた。朝食バイキングは自由席。もちろん一番窓側の席を取った。僕は和食が大好きなので好物の惣菜を盛り合わせて席へ座った。この景色、この優雅なシアタールーム、そして正しい朝食。ずっとここに住みたいなぁと深く思った。朝食を済ませ、チェックアウトまであと少しだが最後にもう少し館内を探検してこのハトヤ滞在を締めくくるとする。
チェックアウトの時間。華やかなフロントロビーに別れを告げ、シャトルバスに乗り込む。帰りはさすがにバスを使うことにした。ハトヤホテルは他にサンハトヤという系列宿があり、このバスは伊東駅だけでなくそこへも立ち寄ることになっているらしい。ハトヤホテルを宿泊した客ならなんとサンハトヤの大浴場も無料で利用出来るそうだ。今回は残念だがこれから大学へ授業を受けに行かないとなのでサンハトヤは断念することにした。サンハトヤは大浴場に魚の泳ぐ水槽もあるとのことで非常に魅力的なのだが、これで次回また来る楽しみも増えたというわけだ。シャトルバスで伊東駅まで戻り、僕は車窓に映る太平洋を眺めながら大学へと向かった。ハトヤホテル、また来るぞ〜!!!
最後まで読んでくださりありがとうございました!
ハトヤホテル、ひとりでももちろん、家族や友人、恋人と来ても楽しいこと間違いなしです!
ぜひレトロフューチャーの世界を体験して見てください〜!
ハトヤホテル
〒414-0055 静岡県伊東市岡1391ハトヤホテル
📞0557-37-4126
【おまけ】写ルンですで撮った写真たち