内藤陽介「誰もが知りたいQアノンの正体」 感想文
陰謀論とニセ科学
以前より、「陰謀論とニセ科学の親和性」を非常に強く感じておりました。「納豆を食べたら痩せる」ですとか、「水にありがとうというと水が美味しくなる」程度の可愛いものなら、外からバカにしていればいいのです。
しかし、「ワクチンを摂取したら不妊になる」とか、「癌の治療をしてはいけない」などというところまでいくと、実際にそれに騙された人が、最悪の場合亡くなってしまいます。
とくに、私たち理系の使命は、「このようなニセ科学から周りの人を守ること」でしょう。そうでなければ自然科学をやってるなどと名乗る資格はありません。(言い過ぎてすみません)
陰謀論の広まる下地があった
この本の、前半戦のメインは「Qアノンのような陰謀論がなぜ広まったのか」ということに注目して書かれています。陰謀論が広まる理由には、アメリカという国の、あまり日本では注目されないような特徴があったからです。私なりにまとめると、
・アメリカ人の半分くらいは理科が苦手
・リベラルを名乗る人が嘘つきばかり
・キリスト教の考え方との親和性
まず、アメリカ人は理科が苦手です。アメリカといえば科学の最先端で、NASAがあって、、、というイメージですが、それはほんのひと握りで、大多数の人は日本人の義務教育レベルの理科の知識すら怪しいことがあります。まあ、それがキリスト教的な考え方とマッチしないという理由もあるのかもしれませんが。ゆえに、怪しい噂が流れてきたらすぐに騙されます。昔、アイアンメーデンという処刑器具がありましたが、実際に血液に触れたら金属は参加してすぐに使えなくなります。それでも、処女の生き血みたいな話を信じてしまうんです。ただ、コロナ騒動を見ていると、日本人も人のこと言えないです。
次に、リベラルが嘘つきです。いつもは意識高く、セクハラだのLGBTだの言ってますが、別にマイノリティを保護する気はありません。むしろ、その人達が差別されてる!!!というニュースを探すことに血眼になってます。ハフポストとかが良い例です。ちなみに、ハフポストの生い立ちについてもこの本では書かれてます。興味のある方はぜひ。また、なにより映画のような事件が本当に起きることがあります。エプスタイン事件がその最たる例でしょう。にわかには信じられない話が現実にあると、ある程度陰謀論にも説得力が出てしまいます。実際、過去にアメリカでは、梅毒に意図的に感染させる実験を行ったり、製薬会社がモルヒネの副作用を隠して売りに出したりしてました。そうすると、反ワクチンや反医薬品のニセ科学だって説得力を持ってしまいます。
最後に、キリスト教の思想です。彼らの発想では、世界が滅亡しそうになったときに救世主が現れて世界を救ってくれるという考え方があります。メシア思想というそうです。ジャンク・ダルクやナポレオンがちやほやされたのもその一つでしょうか。今回は、それがドナルド・トランプでした。トランプこそが、世界の闇を牛耳っている悪の組織を倒してくれる!と信じる人がたくさん出てきました。そして信じた彼らは、現実のアメリカのポリコレに辟易した人たちでもありました。
日本におけるニセ科学の下地
いま、日本人は新型コロナウィルスでの騒動の真っ只中です。新型コロナウィルスなんて存在しない!!と言ってる人がいます。お医者さんは軽くバカにして終了でしょう。僕は、そういう人に何人か会ったことがあります。彼は、格闘技関係の仕事をしていて、まあコロナには苦労したそうです。ほかにも音楽関係の仕事してる人は辛いでしょう。このような人たちが、もし、政府からちゃんと補償を受けていたら、税金を免除されていたら、もしかしたらまた別の考え方を持ってたのかもしれないと思います。
加えて、公教育の酷さです。どうも世の中には、2×3という式を3×2と書くと❌にする先生がいるようです。当たり前ですが、かけ算は順番を入れ替えても計算結果は変わりません。英語の授業でも、May I help you?を「いらっしゃいませ」と訳すように指導されます。いらっしゃるが来るの尊敬後ですから、「ようこそ来てくださいました」というのがいらっしゃいの意味です。それをMay I help you?(お手伝いしますか?)とつながるのは無理があります。一時が万事このような公教育ですから、いまいち理解ができずに勉強が嫌いになるのも無理はありません。そのような人が増えれば、もちろん陰謀論やニセ科学の広まる下地になってしまうでしょう。
とりわけ、この2点が私の考える日本の下地です。他にも、著者の内藤陽介氏は馬渕睦夫元ウクライナ大使のやらかしをのべています。今回のQアノン騒動に関しては彼は戦犯ですが、他の反ワクチン騒動などに関しては、今あげたような原因もあるように感じられます。
陰謀論対策は害虫駆除
陰謀論やニセ科学を広めないためには、シンプルに害虫や害虫の宿主をひとつひとつ駆除していくしかありません。これは骨が折れる作業ですが、時間をかけてやっていくのが本来の「保守」であると考えます。ちなみに、日本では、甲府盆地から1円玉にも満たない「ミヤイリガイ」を駆除して世界で唯一日本住血吸虫という寄生虫による感染症を撲滅した国です。やってやらないことはありません。