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SS 77 「個人情報保護に問題ありそうな事が続くお話」
レンタカーのクーポンが送られてきた。利用したことが無いのに何でだろう? 偽物か、と思いながらも近くの店舗に行ってみると本物だった。
そう言えば最近運転してないな。せっかくなので、特に目的ないがドライブすることにした。
ナビを開いてみると、なぜか目的地がセットされている。どうやら前の利用者のものが残っている様だ。店の人に言おうか、いや言うべきだ。しかし、好奇心に負けた。その目的地に向かって出発。
そこは、とあるマンション。ごくありふれたマンション。なんのことはなかった。ん、いま出てきた人、ちょっと見覚えある。なんか急いでいる様子だけど、駆け出す寸前に私と目が合った。やっぱり見覚えある。なんか驚いた顔で駆け寄ってくる。
「R美だろ」
あっ、Y田くんだ。高校の同級生。だから見覚えあったのか。
「久しぶり。いきなり悪いけど、駅まで乗せてくれ頼む。間に合わないんだ」
なんか勢いに負けて乗せる。駅まではすぐだった。
「ありがとう、助かった!」
あ、名刺入れ忘れてる。覗いてみると名刺の会社所在地はさっきのマンション。個人会社なのかな。
しょうがない。後で届けてやろう。
半日ドライブを楽しんで、帰りにあのマンションに寄る。入り口のインターホンで部屋番号を押すとすぐに出た。お礼に食事を奢ると言う。まあ、もらっとくか。
レンタカーの返却時間が迫っているので、返しに行くのに同乗してもらった。その近くのちょっと洒落たビストロ。へえ、こんなお店があるんだ。美味しい料理を食べながら、昔話しを楽しんだ。
結婚して半年。彼のPC触ってたら昔のメールが出てきた。そこにはレンタカー会社の領収書。プレゼントクーポン代と書いてある。あっ、最初から仕込みだったのか。あいつめ。さらにメールを遡ると、高校の先生とのやりとりが出てきた。担任だった先生に私の住所を聞いている。そういうことか。先生も簡単に教えるなよ。まあ、幸せだからいいけど。