書評 182 「南極ではたらく」
南極昭和基地の越冬隊に調理隊員として加わった著者によるエッセイ。
まず1年分の食材をまとめて調達するという、料理の仕事に携わった人なら分かる無茶な事から始まって、基地内での調理の難しさを挙げていくが、そこに楽しさや嬉しさを見出した体験を交えているのが良い。
人数の限られた越冬隊では様々な仕事の分担があり、調理以外の業務で著者の感じた事は一般人の感覚に近いものがあり、それ故にその大変さが感じられる。
そして、様々な制約とゴミを出さないという条件下で著者が編み出したレシピが紹介されている。それも難しい料理では無いので、試してみたくなる。実際に作ってみると思った以上に美味い。
著者の隊員になるまでの経緯の下りも興味深い。幸運や偶然ではなく、著者が強い意志を持って隊員を志し、行動し、そして希望通りに勝ち得た。
人は100点満点でなくとも意志と行動力で乗り切っていける。そう思わせてくれる一冊。