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SS 61 「見られている」

なんだか、見られている。
白い猫がいた。ニヤッと笑った。馬鹿にするような笑いだ。ゾッとした。追い払おうとしたら、察したようにサッと逃げた。

それから毎日、白い猫が来る。じっとこちらを見てはニヤッと笑う。1ヶ月続いた後、耐えられなくなって物干し竿を持ち出して軽く叩いた。変な音がして、猫が倒れる。そんな強くは叩いていないのに。様子を見に近づくと、ロボットだった。

翌週、私が動物愛護法違反で告発された。叩くところを猫ロボット内蔵カメラで録画され、転送されていたらしい。私は撮り貯めていた猫が来て、ニヤッと笑う画像を提供。それが本当の猫では無くてロボットだったことから、叩く行為を誘導されたと判断された。嫌がらせを受けたのはこちらだということだ。途中から気味が悪くなり、監視カメラを背にして猫を撮っていたことが幸いした。

どこに行ってもカメラがある。画像が飛び交う世の中。一人きりになりたいと何にも無い田舎に行く旅行が流行っているのも、そこから逃れたいってことなのだろう。私もモンゴルの草原に行ってみたら、上から私を撮った画像が「旅行の記念にどうですか」とメールで売り込まれてきた。民間衛星の利用制限はできないのだろうか。

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