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SS 39 「ジョギングコース」

いつもの丸い公園。そんなに広くはないけれど同心円の様な道が何重かあり、距離調整しながら周回を重ねられるので都合が良い。晴れた休日の朝。今日もここに走りに来た。
一番外の外周路からスタート。時間が早いこともあって、自分一人だ。緩い風が心地よく、滑らかに走り出す。

「あれ、変だな」
そうしたいと思っていないのに、脚が内側の道に向かってしまう。どんどん内側に向かう。まるで漏斗の中にいる様に、公園の中央に向かい続ける。一度止まり、再スタートしても同じ。気持ち悪くなって引き返したいのだが、戻れない。怖さが湧き上がるが、仕方なく走り続けてみる。

やがて中央に来ると景色が一瞬真っ白になり、公園の入り口に飛んでいた。「助かった」と思ったが、走り出すとまた中央に向かってしまう。これを繰り返して3周目。「助けてくれ・・・」

「どうだ、メビウスの輪ってどんなものかわかった?」
「うん、お父さんありがとう!」
「じゃあ、切り離して元に戻しておこうか」
四次元に住む親子の楽しい勉強の会話らしい。

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