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SS 46 「究極の衝撃吸収」

2100年6月、まだ自動車はたくさん走っている。超高効率の太陽電池により燃料補給は全く不要。しかし自動運転はまだ完全にはなっていない。自動車専用道路は車任せで大丈夫だが、街中の車の運転は、変数要素が多すぎるらしい。そのため、いまでも交通事故は起こる。

中央政府から発表があった。ガードレールの新素材が発明されたので、早速全国のガードレールを付け替えるそうだ。新素材は究極の衝撃吸収力を持ち、ぶつかってくる車を完璧に受け止めるので、跳ね返った車が2次事故を起こすことは絶対に無い。また、ぶつかった車も傷はつかないという。

そんなものができたら、「ぶつけても大丈夫」と運転が荒くなってしまうのでは無いか。そう心配したが、交通事故は激減した。それどころか街を走る車の数が明らかに減っている。友人が「言えないんだけど、あんなものを見たら車は運転できない」と言っている。

ある日、街で見た。ガードレールにぶつかる車を。信じがたいことに、車はガードレールに吸い込まれてしまった。一体どこに行ってしまったのか。

そういえば、この国の人口は去年50億人を超えてしまった。国の発表は「超えて『しまった』」。つまり、増えすぎたってこと。そうか、ガードレールは交通事故対策ではなかった様だ。

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