書評 197 「最後通牒ゲームの謎」
経済学の範疇にあるゲーム理論。交渉する際の意思・行動決定をモデル化して見出そうという学問。しかし、その代表例の最後通帳ゲームでは、最も合理的な意思決定を多くの人が受け入れないことがわかっている。本書はその理由をわかりやすく紐解いてくれる。
人間は目先の経済的メリットだけで動かない。では中長期的にはどうかというと、これまた同様。お金がほしいが、一方で損をしてでも拘る行動もあるのが人間。それはなぜなのか。経済学と進化心理学を組み合わせることで、この疑問の答えを探していく。近年認知度が大きく上がっている行動経済学と重なる。
共同体や社会を構成することで生存確率を上げてきた人間に根付いた様々な性向。そのいくつかを本書では答えの有力候補として示す。解説が平易な言葉で書かれ、納得感を得られる。
巻末の同じテーマで学習を進めるための参考文献ガイドも良い。こういう本が大学の教科書になると良い。そう思わせる一冊。