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SS 45 「ジャンプ傘を買った」

梅雨に入ったので、大きめの傘を買うことにした。店に行ってみると「新作のジャンプ傘、入荷しました。どんよりした季節ですが軽快なデザインを楽しみましょう!」と貼り紙が出ている。

「ジャンプ傘ってなんだ?」検索してみると、ボタンを押すと自動で開く傘の呼称らしい。知らなかった。

その新作ジャンプ傘を見てみると、なるほど爽やかな色合いのチェック柄が楽しい。持ってみると軽い。値札の他にタグがついていて、「雨の日の街歩きにケイカイを届けます!」なんて書いてある。ふーんと思って値札を見ると結構いい値段だが、デザインを気に入っていたので、買ってしまった。

こうなると嫌いなはずの雨の日が早く来ないか、と思ってしまう。翌日の雨予報を見て、傘を持って出勤。予報通り昼過ぎから降り始め、帰宅の頃にはあちこちに水溜まりが出来ていた。さて、新しい傘を開くと雨の中、パッと空が自分の頭の上だけ開いたような爽やかな青。「いいなあこれ。買って良かった」と思うと共に「街歩きに軽快を、か。ジャンプ傘だけにピョンピョン飛び跳ねるようになったりして」とちょっとだけ変なことを期待しながら歩き出す。

そんなことは無かった。普通に歩いていく私。
すると突然、傘が倒れて横を向く。「えっ」と思う間も無く横を自動車が通り、水溜まりの水を跳ね上げていく。バシャっと飛んだ水を横を向いた傘が見事に防いでくれた。

「ケイカイって警戒かよ」


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