過去20年で年率平均24%!今年200%のリターンを上げた、「金利上昇局面でも勝ち続ける」運用手法とは?
はじめに
世界で起きつつある、大きな変化
レジェンド投資家が指摘する「グローバル化の終焉」
Palantir創業者・CEOのAlex Karpによるレジェンド投資家Stanley Druckenmillerのインタビューを要約した以下引用をまずはご覧ください。
「グローバル化によるディスインフレ効果はもう見込めない」という部分は非常に重要です。言い換えると「今のインフレは一過性のものではなく、グローバル化が停滞する間は続く」ということです。
グローバル化が本格的に始まった1989年の東西冷戦終結後から30年余りの期間、主要国の物価は定位安定していました。特にこの10年は米国の量的緩和によりディスインフレが加速し、リスク資産の価格は大幅に上昇しました。
今、世界を見渡すとグローバル化の拡大が期待できそうな事実は起こっていないどころか完全に逆行している様に見えます。
世界中で右傾化した政権が自国を優遇し、グローバル化の時代の常識だった国際協調の機運は見る影も無くなりました。ついにはロシアによるウクライナ侵攻が今年行われてしまいました。
また、東西対立が鮮明となる中、安全保障上の観点からグローバル化により進出した中国等の生産拠点の引き揚げが始まるなど、コストアップに直結するような事象も最近では散見されています。
中央銀行は「経済の僕(しもべ)」?
特にリーマンショック以降、度重なる量的緩和(QE)や、ゼロ金利・マイナス金利政策を繰り出してきた中央銀行を、市場を自在に操る「経済の動向の主人」のように捉えていた投資家が多かったように思います。
一方、フィナンシャルタイムズのRobin Harding氏が2020年に執筆した記事で、彼は保守派の米経済学者ミルトン・フリードマンの「中央銀行は自然利子率に近い水準にしか金利を誘導できない」という考え方を引用し、「一般に認識されている以上に、中央銀行は経済の基調的な動向の僕(しもべ)であって、主人ではない」と論じました。
果たして、この対立する2つの考えはどちらが正しかったのでしょうか?
その答えは、今現在の中央銀行が置かれた状況にありそうです。
中央銀行は、今や(グローバル化の後退によって高止まりする)インフレ率に追随して利上げする施策をとっているように見えます。
このような状況下では、これまでのような利下げや量的緩和によって、今後起こり得る(新型コロナ感染拡大のような)危機を回避することは困難を伴います。
かつてのように、困ったら中央銀行(中銀プット)という訳にはいかないのです。
中央銀行に先回りする運用手法
ではこれからはどのようなマインドセットで相場に対峙すれば良いのでしょうか?その答えの一つは、「中銀を疑い、先回りする」ということだと思います。
以下実例を挙げて説明します。
上表は某グローバルマクロ戦略ファンドの年初来の運用実績です。
このファンドのマネージャは、「インフレは一時的」というFRBの間違いを昨年から指摘していました。
インフレーションの加速から米国金利が大幅に上昇&フラット化すると予測し、10年未満の米国債先物の大幅なショート(売り)/長期債の小幅なロング(買い)ポジションを構築しました。
つまり、中央銀行に先回りして金利上昇(債券価格の下落)にベットしていたのです。
その結果、今年だけで+200%≒約3倍の運用成果を上げています。
ただし、夏場にかけては最大ポジション&リスクを配分している米国債のカーブプレイにおいて、フラットニングを予測したポジションは維持しつつ、ロング側を長期債(10年超の年限)から中期債(5年~7年)へと大きく入れ替える等、状況に応じて柔軟な対応も見せています。
また、同ファンドは2002年からの設定来で約9,000%(年率平均換算で約24%)の複利リターンを獲得しており、今回だけでなく過去の大きなマーケット変化にも上手く対応してきました。
このファンドのように、中央銀行の施策を逆手に取る投資手法は、しばらくの間有力な戦略となるかもしれません。
戦略別ヘッジファンド動向
他のヘッジファンドの状況も確認しておきましょう。
私がヘッジファンド運用に関わる人間なのでバイアスがかかっている可能性もありますが、高金利・高インフレの時代は多くのヘッジファンド戦略にとって全般的にポジティブな市場環境と言えそうです。
マクロ・CTA戦略
前述のマクロファンドなども含まれる「マクロ/CTA」戦略のヘッジファンドは全般的に好調を維持しています。
上表は私がポートフォリオマネージャを務める、ヘッジファンドに分散する投資信託、MS Star Funds(https://mitasec.com/msstarfunds/)の戦略別リターン寄与を示したものです。
マクロ/CTA戦略【水色部分】が大きく貢献しており、全般的に好調だったことがお分かりいただけるかと思います。
また、同戦略のファンドは債券・為替の先物市場に多く資産配分しているケースが多いため、更なるインフレ加速や金利上昇はファンドリターンにとってポジティブな要因となる可能性が高いでしょう。
株式ロング・ショート戦略
上がりそうな銘柄を買い(ロング)/下がりそうな銘柄を空売り(ショート)する同戦略は、長く続いた低金利下では、良い銘柄も悪い銘柄も一緒に上昇してしまい、単に株を買うだけの投資に勝てない状況が続いていました。
しかし中銀の支えがない市場では、良い銘柄/悪い銘柄が市場の振るいに掛けられることでその株価パフォーマンスに明確な違いが出てくることが想定されます。このような環境は同戦略にとって追い風となりそうです。
イベント・ドリブン戦略
イベント・ドリブン戦略の一つである買収合併アービトラージ戦略(買収が決まった企業の株価が買収価格に達する前に購入→買収価格との差が利益となる裁定取引戦略)にとっても、高金利は追い風となります。
たとえば、現在70ドルで取引されているA社株を、B社が100ドルで買収する例を考えてみます(買収成立の可能性が極めて高い前提)。買収発表直後に株価は100に近づきますが、理論的には低金利下よりも高金利下のほうが100に近づきにくくなります。
これを極端な例で説明してみます。
借り入れ金利がゼロであればレバレッジをかけている投資家の金利コストはゼロです。つまり99.99ドルで株を買い、100ドルでB社に買ってもらうことができれば0.01ドルの利益となります。
一方借り入れ金利が5%の場合、借りてきたお金でこの裁定取引をしようとすると、A社の株価が95.24(100÷1.05)未満でなければ利益が出ません。つまり、(借入金による裁定が行われるのならば)金利が高い時は被買収企業を安く仕入れるチャンスが増えることとなります。
この時に上手くレバレッジをコントロールする運用者は効率的に利益を上げることが出来そうです。
最後に
今起きている世界の変化は大きな投資機会を提供してくれています。
世界に有象無象にあるヘッジファンドの中にも、今回ご紹介したような素晴らしい運用手法を持つファンドがあります。
こうした優れた運用機会を多くの方に提供することが私の使命です。
しかしながら、個人の方がこうした優良ヘッジファンドに直接アクセスすることは非常に困難です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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