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常滑の歴史的町並み
今回紹介する歴史的町並みは、常滑(とこなめ)です。常滑は「常滑焼」で知られる産業町(陶業)です。常滑は、越前、瀬戸、信楽、丹波、備前と並んで、中世(平安時代末期~鎌倉時代)から現在まで生産が続けられている代表的な6つの焼き物の生産地の一つで、これら6つの窯は総称として「六古窯」という呼び方があります。六古窯は「日本遺産」として文化庁に認定されています。
常滑を訪れたのは2014年3月、常滑駅の東側、中心市街地の丘陵地に常滑の陶業地域があります。起伏に富んでおり、坂道がたくさんあります。陶磁器会館を起点として「常滑やきもの散歩道」のAコース(1.5km)とBコース(4km)が設定されていますが、北山橋から散歩道に入り、歴史的景観を残すAコースを巡りました。
名古屋芸術大学常滑工房
歩き始めて見えてきたのは名古屋芸術大学常滑工房。大きく存在感のある建屋はかつての土管工場を活かしているそうです。
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常滑の陶器工場の建物は黒い板張りの建屋に煉瓦造りの煙突を擁しています。この煉瓦造りの四角い煙突が、常滑の歴史的景観の一つの特徴になっています。
廻船問屋瀧田家住宅
焼き物片が敷き詰められた坂道。明治時代に製品の焼成時に土台として使用された「けさわ」を再利用しています。左側に見えるのは廻船問屋瀧田家。江戸時代から明治にかけて廻船業を営んだ瀧田家の住宅。1850年頃に建築された建物が復元、整備され、一般公開されています。
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擁壁をよく見ると、常滑焼の甕(かめ)がびっしりと積まれており、壁面を構成しています。この甕は昭和初期に作られた、焼酎を入れるための容器です。これもまた、常滑の独自の景観を生み出しています。
土管坂
瀧田家を過ぎて見えてくるのが土管坂。擁壁の片面は焼酎甕、そしてもう片面には土管が積み上げられ、坂道にけさわが敷き詰められています。
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土管坂を過ぎ、細く折れ曲がった道沿いには板張りの工房が続き、町並みを形成しています。
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登窯(陶栄窯)
常滑やきもの散歩道の南端に登窯広場があり、町並みの核心の一つがこの登窯(陶栄窯)。非常に大きく、圧倒されます。1974(昭和49)年まで使用され、1982(昭和57)年に国の重要有形民俗文化財に指定されました。
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陶栄窯は明治20年に建築願いが愛知県知事にだされていることからその頃に建築されたことがわかっています。明治末期にはこうした登窯が常滑に60基ほどあったことが記録にのこっているそうです。
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登窯は、約20度の傾斜地に全長22m・最大幅9.6m、8つの焼成室があります。登窯の上部には焚き口があり、その上には煉瓦造りの煙突が10本並んでおり、壮観です。
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煙突のある風景
常滑のもう一つの核心は、昔からの坂道に沿うように立ち並ぶ製陶工場と煙突の折り重なる景観です。天気が良いと遠くに伊勢湾が見えるそうです。
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最後の写真は、4本の煙突がリズムよく立ち並ぶ常滑の代表的な景観。
常滑には千年以上の陶業の歴史がありますが、質の良い粘土の産地であったこと、また、最盛期には登窯が60基もあったというように、起伏に富んだ丘陵の傾斜地が焼成に適していたからだということに改めて気づくことができました。途中のお店で買ったお団子を食べながらの楽しい散歩道でした。
この記事はここまで。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
すごく久しぶりの投稿になりましたが、この間も興味を持って記事を読んでくださった皆さんがスキを残していってくれたことが励みになりました。がんばって続けて書いていこうという気持ちになりました。
常滑市栄町(愛知県の陶業町)
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