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「人はいつからでもどこからでも挑戦できる」今の時代に必要な本当の繋がりを求め(株)ヒキダシを起業。社長でありながら、1年で500人の来訪を受ける「スナックひきだし」を展開するママ 木下 紫乃さん

次世代に対して深い想いを持ちながら、ミドルシニア世代に対して問題提起を投げかける。大手企業での女性活躍サポート、シニア活躍施策に携わる他、昭和女子大学にてダイバシティ推進機構の事務局も務めるかたわら、「スナックひきだし」のママとしてコミュニティ作りをするパラレル社長である木下紫乃さんに、お話を伺いました。

木下紫乃さんプロフィール
出身地:和歌山県
活動地域:東京都(世田谷区、港区)
経歴:1991年慶應義塾大学卒業後、(株)リクルートに入社。その後数社を経て、2004年より研修会社の人材開発コンサルタントに従事。様々な企業研修をプロデュースする中で、企業人事部とともに人材育成開発を深く学ぶ。その後、45歳で大学院(慶應メディアデザイン研究科)に入り、新しい働き方やキャリアに関する研究を若い学生たちと進める。2016年に、性別、世代など、組織や会社にはびこる分断を繋ぎたいと(株)ヒキダシを起業。


「予定調和の課題提案の中で学ばせて、こんな事で本当のリーダーはできるのか」


記者:この度はインタビューを受けていただきありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、木下さんの起業に至るまでのお話を伺ってもよろしいでしょうか?

木下さん(以下敬称略):1991年に新社会人としてリクルートに就職しました。
バブル時期でしたし考えて入ったというより、会う人が面白い人ばかりの会社だった、というのが理由です。
そのあと体を壊すまで7年ほど働いて退職したのですが、転職を2.3社繰り返したどり着いたのが人材育成の会社だったんです。主にやっていたことはクライアントの大企業で次世代のリーダー育成の講座や研修を行う仕事でした。

そのとき感じたのが、大企業で働き好条件な中自由にやらせてもらっているのにも関わらず、どこか閉塞感を感じて、元気なく働く人が多かったこと。それにとてもモヤモヤしていました。

記者:そのモヤモヤした所は、特にどういう箇所で感じられましたか?

木下:当時のリーダー育成研修の主流は、こんな感じ。40代大卒男性中心、そんな同質性の強い人たちを集めてMBAのようなことを学び、その後経営層へ予定調和の課題提案をする。こんなことで本当のリーダーはできるのか?と思っていました。管理職研修等もしかり。社員が自分ごとで語ることの少ない枠に嵌るものが多かった。

10年ほどこの人材育成の仕事に関わった中で世の中にはキャリアデザインという考え方もあるんだと知り、私もこのままでいいのか、会社の中に閉じこもってやる人材教育のやり方以外にも違う方法はあるのではないか?と可能性を探すためにNPOの仕事を手伝ったりしていました。その時、前の会社の先輩が大学院に通っていると聞き興味を持ちました。

そのときいた仕事の状況にも若干行きづまりを感じていたので、大学院の話を聞いたのが12月だったのですが、試験が1月でぎりぎり。でも、そこで論文を書いて面接を受けたら受かったんです。行かなきゃもったいない!そう思って入学。会社には事後報告でした。

記者:すごいですね。会社の方はなんとおっしゃっていましたか?

木下:会社の当時のトップには「素晴らしいことだけどマネージャーに学校に行かれちゃうと困る」と言われました(笑)教育の会社なのに社員が教育を受けるのはダメなのかという失望もありましたが、小さな会社の場合は、一人の社員の動向は死活問題につながるし、今ではトップの気持ちもよくわかります。
それから大学院に通い、半年くらいで業務委託に切り替え、いわゆるフリーランスとして動き始めました。


「私は子供がいないので私の後ろの世代になにかしてあげたい。それを阻んでいたのは、私たち世代の古い感じ方や考え方だった。」


記者:大学院に通って、若い世代との交流が増えていく中で感じたことはありましたか?

木下端から見たらみたらキャリアを築いてきたピカピカな女子たちが、すごい自己肯定感が低くて、悩んでいる子たちがたくさんいて。自分のしたいことができないとか、自信ないとか。私は子供がいないので彼女たち、つまり私の後ろに続く世代になにかしてあげたいと思うようになりました。

でも、それって何だろう?と。例えば、実際女性活躍ってやっている人たちっていっぱいいるんですよね。それをわざわざやるなら別にボランティアとかでいいし、じゃあ何をしたらいいかって考えていた時にたどり着いた考えが『彼女たちの挑戦を阻んいるものは何?』ってことでした。それは、まさに私たち世代の古い価値観、考え方だったと気付いたんです。

10年間企業研修の仕事をする中で薄々気付いていたんだけども、ミドルシニアやシニア世代って、今、結構ディスられているじゃないですか。おじさん世代がだめだとか。それはその人たちにも問題はあると思うけど、それ以前に生きてきた時代背景が今とは全然違っていて、価値観が完全に入れ替わっているんですよね。
その事に気付いてないのか、気付いていてもどうしたらわからないのが私たち世代、50〜60代で。

そんな人たちに対して、
『あなたたちこそ好きなことやっていいし、私たちこそもっと若い世代に貢献して行った方がハッピーなんじゃない?』って伝えたいんです。

自分たちのキャリアは自分たちで考えて、会社に依存しすぎたり、世の中はこうだからこうしないといけないって考え方もうやめない?っていうのを私たち世代がやることによってその背中を若い人や女性たちに見せられるようにしたい、そう考えました。
だから『ヒキダシ』って会社としてはミドルシニア向けにキャリア再デザインを支援する形で企業研修をしたり、個人メンタリングなどを行うことにしたんです。

大学院にいた時に実感したんだけど、その当時生徒70名中社会人学生が10数名だったかな。私たちアウェイな状態の中で、若い人たちはとても礼儀正しく優しく接してくれたんです。色んな事も教えてくれるし本当にすごい、半端ないと思った。年取ってるから偉いって時代は終わっちゃってるんです。
この人たちと色々経験している私たち世代が組めたら最高じゃん!って思ったんだよね。

「1つ自信を持てるものを持っていれば若い人に素直に分からない事を聞く事が出来ると思うんです。」


記者:以前、木下さんがミドルシニアの方に向けて「若者に背中を見せていくんだ」とおっしゃってましたよね。その言葉を聞いた時にカッコいい背中を見せてほしい若者世代と、見せたいミドルシニア世代と、そういった関係があるのかなと感じましたが、いかがでしょうか?

木下:私もそう思います。なんか昔って時代の変化って少なかったし分かりやすかった。歳重ねている方が経験沢山あるし、色々知っているから偉いって時代だった。でも今って変化のスピードがすごく早い。しかも色んな所から変化が起きてるじゃないですか。
私たち世代が気付いていない変化とかいっぱいある中で、若い世代こそがその変化をキャッチしている。だから、私たちも彼らから学ばなきゃいけない所がたくさんあるんです。歳取ってるから偉いって時代は終わっちゃってるんです。

ただ、やっぱり培ってきた経験とか生き様とかそういうものを見せられる人もいる。だからこそもっと自信をもって、逆に言えば1つ自信を持てるものを持っていれば若い人に素直に分からない事を聞く事が出来ると思うんです。

でも、我々の世代の人たちだって、実は自信を持てるものがわかっていない人が多い。そこそこ長く生きてきているんだから、絶対にみんな自分の「ヒキダシ」に素敵なもの持っているはずなのに。

それをヒキダシたくて立ち上げたのが「株式会社 ヒキダシ」です。

これから人生100年と言われているし、「60歳くらいで余生感漂わすのはやめなさいよ」とか「まだこれからやることあるよね?」と。その為の準備は早く始めた方がいいし、会社にいつまでもしがみついていても会社は最後まで面倒見る事はできない、あるいはただ会社にいるだけの状態とかつまらなくない?そんな話を、企業でセミナーという形でやったり、個人と一緒に考えたりしています。


「人生はあみだくじ」


記者:木下さんは会社とは別の活動も行っていますよね?株式会社ヒキダシと分けたのはどの様な理由からですか?

木下:元々自分の未来を考えようとか、ミドルシニア世代がどう若い世代と繋がるかを考えようってセミナーをやりたいなと思って色々セミナーとか企画したんだけども、そういうことを伝えたい人たちって中々来ないんですよね。情報感度が低かったり、セミナーって自分の弱さをさらけ出さなきゃいけなさそうじゃないですか。
特に我々ミドルシニアはそういう恐怖心があるのか、20〜30代の方たちよりフットワークが重い。

なので打開策を考えていた時に、知り合いがバーを始めた事を思い出して彼に、イベントでお店を借りられないかを相談をしたんです。そこでまず少人数から人を呼ぼうと、名前も昭和っぽく“スナック”をつけてイベントを始めました。皆のもやもやを語らおうって会にして「スナックひきだし」というのをはじめました。セミナーじゃなくスナック。名前が変わると皆さん来てくれるんですよね。

不定期でしたが反響もあって昼間も行う事になって、不定期だと覚えづらいからって事で腹据えて毎週木曜の14~18時までやってます。

記者:すごい面白そうな集まりですね!

木下:ほとんど毎週誰かしら来てくれるから、延べ500人以上の方が来てくれています。もやもやしてるミドルシニアの方に来てくださいって言っていたのが、今や学生さんや生後3か月の子、80代の方など色んな世代の方たちが集まってくれるようになりました。

記者:ここまで聞いているといい意味であまり深く考えすぎず、悩まずにやってみようっていう行動力がすごく目を引きますが、その行動が身についたきっかけはありますか?

木下:原体験になってるかわからないけど、今まで、何度か離婚も転職したり(家出したり笑)しているけど、そのたびに「まぁなんとかなる。死んだりすることはないでしょう」っていう自分への刷り込みが積み重なっていって。失敗も経験していくと、「まぁこの程度だろうな」っていう「失敗の相場観」が見えてきたんです。

行動しないから行動できないという、あるあるパラドックス状態になってる人って多いのだけれど、そういう人の考えている「行動」って、それそのものが、ものすごい大層なことなんですよね。
例えば、さすがに転職とかは大きいことだけど、今までぎくしゃくしていた上司に明日の朝は挨拶する、ってことも行動じゃないですか。

私は、人生はあみだくじだと思っているんです。ある行動をとることによって、あみだくじに今まで入ってなかった横線を入れる事が出来るかもしれない。その一本の横線が、くじの結果を変えるかもしれない。なんでもいいから小さい行動をまずやってみる事がすごく大事で、結局自分もそれを繰り返してもちろん失敗もして。
でも、それでも死んでないし、失敗してもこの程度ってのが見えてきて、それが次の行動をするための自身の裏づけになってきていると思うんです。
小さな行動を重ねて失敗の幅を知っているってことは、行動力と繋がってるのかなと思います。

記者:なるほど!「人生はあみだくじ」ですね。例えがわかりやすいです。

木下:その線は細くても太くてもいいんです。
転職を決めるんじゃなくて、まずは明朝苦手な上司に挨拶を始める事で、今まで殺伐としていた上司との関係性がほぐれて企画の相談がしやすくなり企画が通ったなんてわらしべ長者みたいなこと、あるかもしれない。それは自分が行動しない限り絶対変わらないもので、小さな勇気から始まるものだと思っています。

やろうかなって思ったらやる。嫌だったらやめる。いつもそう思うんですけど、やったらやり続けなくちゃいけないと思っている人は多い。特に若い世代の人たちは皆まじめだから、やめちゃいけないとか思ったら怖くて始められないですよね。

会社も昔は3年いないとダメとか言われてたけども今は変化が速いから」、自分の中で学べるものを学び、貢献できたと思ったらそれはそれで次に行く時かなと思いますけどね。


「分断される世界を繋げる人を育て支援していきたい」


記者:これから株式会社ヒキダシを通じてどんな未来や計画を考えてますか?

木下:今やってる事を俯瞰してみると、人と人を繋げる、人と仕事を繋げる、あるいは人と機会を繋げる、機会と機会を繋げるっていう事もやっていると思うし、今後もやっていきたい。
そして、そういうことをやっていく人が評価される時代になればなぁと思います。そういう役割を担う人たちにはまだ名前が無くて、でも実際コネクターになってる人は増えつつある。けれど、名前がないと評価が難しい。

名前が重要ではないんだけども、分断される世界を繋げる人を育て支援していきたいです。今はSNSが盛んになって繋がりの時代だというけども、私はそれによって分断が進んでいるように思っています。
例えばFacebookとか、最近友達になると共通の友達が何人もいる。素晴らしいことではあるけど、ある世界が増幅しているだけで実は隣の世界とは一切繋がらないっていう。

ヴァーチャルでできない事、人が手足を使って出来る事があるんじゃないかって。それをやれる人、大好きな人っているから、そういう人たちにスポットライトが当たっていけばいいなと思います。自分のコミュニティの隣のコミュニティをのぞいてみる事がこれからもっと必要になっていきます。


「履歴書には出てこない本当のその人の持ち味を生かした繋がりが出来る場所を作ること」


記者:自然と隣のコミュニティをのぞいてみることができるのが、「スナックひきだし」ということになるのでしょうか?

木下:はい。「スナックひきだし」は鎧を脱いでもらう場所です。近い距離でいるからとなりの人と話をせざる負えない場所。その時に○○会社の○○ですと紹介する人は少なくて、私は音楽をやっていて、なんて話から入っていく。そうすると素の部分で話をするし、悩みも語るし。

履歴書には出てこない本当のその人の持ち味を生かした繋がりが出来る場所を作ることは、AIには出来なくて、有機的な人との繋がりって会話の中で生まれてくるものだからそういうものをベースに本当の意味でその人とその人の強みがでる繋がりをサポートしていきたいです。

記者:本日は貴重なお話をありがとうございました。

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木下 紫乃さんの情報はこちら
○Facebook
https://www.facebook.com/profile.php?id=100001963152333
○(株)ヒキダシ
https://www.hikidashi.co.jp/
○スナックひきだし倶楽部
https://www.facebook.com/groups/snack.hikidashi.club/
○ラジオ
毎週月曜日19時半からレインボータウンFM(88.5Mhz)にてラジオスナック放送中!
https://www.facebook.com/radisna.hikidashi/
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【編集後記】
今回、編集を担当しました那倉と、杉原です。紫乃さんのお話を伺いながら、紫乃さんの持つ魅力に引き込まれていき、終わる頃にはファンになっていました。二人して、「今度スナックに遊びに行かせてください」と。
若者世代が、素直に憧れられる大人代表のような紫乃さん。これからのご活躍を心から応援しています。ありがとうございました。


この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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