2.呪いと御神楽

怪魔《フィクサー》。それは、恨みなどの怨念が形を持ち、狂暴化したもの。そして、それらは特別なチカラを持つスピナーにしか浄化できない。そう、できないのだ。
 かぐらは回復はできるものの非戦闘員。たたらも低級モンスターを倒せるくらいで、そんなチカラなど持ち合わせていない。故に、こうして仲良く逃げ回るしかなかった。だがこのフィクサー、しつこい上になんか異様に速い。このままでは先にこちらの限界が来てしまう。こうなったら……。
「かぐら、ごめん!」と前置き、かぐらを抱えて疾走するたたら。
 彼女の顔が赤くなっていることに彼が気づくことはなかった。

 *

 何とかフィクサーを撒き、裏路地へと逃げ込んだ二人。一息ついた後、かぐらはたたらに、村が襲われたこと、使用人のエビルに助けられ、何とか逃げてきたことを話す……そして、たたらと会うまで頼れる人がいなかったことも。それを聞いた彼の頭には、かつての記憶がよぎっていた。
 
――『御神楽』。それは、自身を器としてどんな願いでも叶えることが出来る特別な巫女。だから、彼女の意志など尊重せず、村人の多くがそのチカラに縋った。しかし、チカラを使えば使うほどその代償に身体は蝕まれていく……それが今のかぐらであり、だからこそかつての彼は彼女を救おうとした。だが、結果として彼女に呪いの半分と消えない傷を残し、彼も呪いのもう半分をもらい受け、村を追われてしまった。
 自分が彼女から離れれば、呪いが発現することもない……そう思い、村を出たたたら。それが彼女のためになると思っていたし、彼自身もそれでいいと自分に言い聞かせていた。でも、目の前の少女は泣いている。助けを求めている。それなら……
 
「約束するよ……必ず、君を救ってみせる」
 
 かつて叶わなかった願いを叶えるため。そして、目の前の少女を救うため。少年は少女と約束をした。
 

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