1.再会
「……ん」
間抜けな声を上げ、たたらは目を覚ました。その頬には涙が伝っていた。
「(涙……?)」
それにしても、あの夢は一体何だったのだろう。知らない場所、知らない人物……どれをとってもわからないことばかりなはずなのに、どこか引っかかるものがある、そんな夢。
……と、そこまで考えて彼の顔からサァーっと血の気が引いた。
先日声をかけてきた人物、蓮斗に指定された時間は8時。対して、時計の指す針は8時30分……真面目な彼にしては珍しい、完全な寝坊だった。しかも、アラームだけが故障している。
「(いつもは寝過ごすことなんてないのに!)」
「ついていない」と自身の不運さを呪いながら、僕たたらは部屋を飛び出した。
*
城下町を走っていた僕は、ふと辺りが静かなことに気づく。見れば、向こうから何か……誰かがすごいスピードで迫ってきていた。しかも、後ろに何か連れて。当然よける暇などなく。
「どいてえええええええええ‼‼‼‼‼」
その人物の叫びも虚しくぶつかってしまうのだった。
「……かぐ、ら……?」
ぶつかった人物に手を差し伸べようとするが、その人物を見たたたらは強張る。なぜなら、その人物――彼女は、疎遠になってしまっていた幼馴染、かぐらその人だったから。「どうして」「なぜここに」。数々の問いが、彼の頭の中を巡る。だが、急にあたりが暗くなる。振り向くと後ろには黒い影が。
湧き出る疑問を一旦振り払い、たたらはかぐらの手を取り駆け出した。
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