3.南の大陸
〇南の大陸
回想、大臣の娘がユウに残した言葉
娘(回想) お父さんを助けてくれてありがとう。だから、これは私からのささやかな助言。
娘(回想) 星の民は……星読みは、未来を見通せる。数多の可能性を模索することができる。でもだからこそ、私達だけは、常にその前提を疑わなければいけない。彼らもそれはよく分かっているとは思うけど……。
娘(回想) よく見ていてね。あなたが信じている彼が、本当にその信頼に足る人なのかどうかを。
*
南の大陸へ移動中(馬車)
遥人 ウ……ユウー!
ユウ !ご、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。
遥人 ま、さっきまで結構大変だったしな~。たたらもなんだか疲れてるっぽいし。
ユウ ……。
みくり ユウ。
ユウ ……あっ、ごめん。どうかしたか?
みくり ユウが何に引っかかっているかは分からないけど……。あんまり気にしないでね。予言もチカラも、絶対ではないから。
ノア そうそう!それに、何かあってもボク達がいるし!だからだいじょーぶだよ!
ヒビキ ……。
ヒビキ (二人とも、確かにそうはいってるけど……だからこそ俺だけは、疑ってかからないといけない。誰が信頼に足る人物か、そうでないかを)
みくり ……あっ、そう言えば。
ヒビキ みくり?
みくり ずっと気になってたんだけど……ユウ達ってどうして旅をしてるのかなって。もちろん、元の世界に戻るためではあるんだろうけど……。
ユウ あー……それは……。
*
ユウ ってことがあってさ。
みくり なるほど……勇者でアイドル……
遥人 なんか薄い本作れそあだっ!!
ヒビキ 余計な事吹き込むな。
ユウ まあ、アイドルは半分くらい王様の冗談だったんだけど……とにかく、今は手がかりのぬいぐるみを集めつつ元凶を探してるって感じだな。勇者がいるから対の魔王が一番怪しそうではあるけど……。
みくり なるほど……じゃあやっぱり、今の私達が行くには得策じゃないのかも。さっきシュンも言ってたけど、今の私達には資材が不足しすぎてる。本拠地のある北の大陸に行くには兵糧がなさすぎるし、情報がない中央の大陸に行くにはリスクがでかすぎるし……南の大陸で休息と仲間集めもしつつ決戦に備えるのが一番現実的だと私も思う。
ヒビキ ……
ヒビキ (アイドル……偶像、か。ユウは冗談って言ってたけど……それにしては皮肉が効きすぎてるだろ。第一、偶像とされているほど現在にも残っているのなんて、それこそ伝説の勇者くらいしか……まさか。)
ヒビキ ユウ、お前『勇者物語』って知ってるか?
ユウ 名前くらいは。……っとそうだ。そういえば前に森でその本もらったんだ。俺はあんまし詳しくないけど……あれ。
ノア どうかした?
ユウ いや……前に開いた時、なんでか中身が空白だったんだけど、少し内容が追加されてて……。
ヒビキ !
ヒビキ (空白の本、内容を知らないユウ。勇者レオンハルトって名前も本名じゃないって噂があるし……もしかして)
ヒビキ お前は……っつづ!!どうし―
??? うわあああんヒビキ~!!!久しぶりのところほんと悪いけど助けてくれ~!!
ヒビキ げっコウスケ!?なんでこんなところに……っつーかお前服チョコまみれじゃねーか!………あれ、でもお前がいるってことはもしかして……。
シュン ごめんね。俺とライトは止めたんだけど……コウスケとあまねがうっかり巣に入っちゃって……
大軍の足音、フィクサーの群れ(チョコソースがけ)
ヒビキ お前ら何面倒事増やしてんだよ!!!
あまね ごめーん!!悪気はなかった!あとライトはなんか食われてる!
ヒビキ はあ!?!?
俊介 あっおい!たたら!!……あーくそ!ユウ、お前も手伝ってくれ!
ユウ 分かった!
*
ドンパチ攻撃してる
たたら っ……!
たたら (手ごたえが薄い……?それに、質も……)
たたら (とにかく、急がないと。このままじゃ……)
ライト まってまってギブギブ!!俺美味しくないから!!食べないで!!
たたら まってて、今浄化するからもう少しだけ我慢し―
スピリットが発動しない。
たたら ―――え。
ライト その声はたたら!?よかっ―
たたら ライト、ごめん!
ライト へ……?ってうぉあああ!?(突き飛ばされる)
遥人 うおっ!?なんか飛んできた!?
ライト ごめーん……飛ばされた……。
ノア 気持ちいくらい飛んでったね~。
ユウ でも、これならなんとか浄化でき―
どくん、という心音。全身を覆う悪寒と脱力。
ユウ …………え?
ユウ (なんだ、これ……力が、入らない……それに……)
ユウ (…………さむ、い……?)
フィクサー グオオオオオオ!!!!!!
俊介 たたら!!ユウ!!
すんでのところでフィクサーを木っ端微塵にする人物。
??? ……本当に、無茶をして。まあ、彼女にはあとで会いに行くとして。
俊介 お前は……カルマ……?
カルマ やあ、久しぶりだね。……といっても、今は再会を喜んでいる場合ではないけれど。
カルマ このまままっすぐ行けば【菓子の街】に着く。そうすれば、協力者も見つかるはずだ。僕も一緒に行ければよかったんだけど……。力技でここまで来たからか、もう存在を保てなくてね。
みくり わっ……!既に消え始めてる……!?
遥人 わかった!後は俺達に任せてくれ!(※分かっていない)
カルマ 助かるよ。あと、僕の事はこれまで通り秘密に……
カルマ …………。
俊介 どうかしたか?
カルマ ……いや。彼が知り合いに似ていてつい、ね。
カルマ とにかく。二人を頼んだよ。それと……どうか、手を握ってあげていてくれ。今のこの子達の―特に、たたらの心は……とても暗くて、寒い場所にいるようだから。
俊介 ?それってどういう……
カルマ、消える。
コウスケ ほんとに消えた……。誰だったんだろうな、アイツ。
あまね たたらおにーさんと顔がやたら似てたけど、兄弟?それとも消えたから幽霊とか?
ライト こっこここ怖い事言うなよ~!
ヒビキ ま、急に出てきたのはかなり怪しかったけどな。
??? 大丈夫だ。あの人の事は信用できる。身内だからな。
俊介 ハク!どうしてここに……
琥珀 話は後だ。今はとりあえず、菓子の街に急ごう。
*
・南の大陸―菓子の街
怒り、憎しみ、かなしみ……『それ』は、纏わりつくように内側から浸食してくる。
昔からあるそれにはもう慣れてる。いつものように無視していれば、そのうち気にならなくなる。その、はずだったけれど。
??? ■■■■……
目の前が暗くなる。喉も、頭も、張り裂けそうなくらい痛い。……それに、全身が凍りそうなほど寒くて。
この世界には、もう明かりは灯らないのだと思った。
*
ユウ (……夢?でも、あれは……)
ユウ ってそれよりフィクサーは……゛いっ!?
ライト ユウ~!!!目が覚めてよかったよおおお~!!
俊介 いきなりたたらと二人して倒れたときはびびったけど……その感じだと、大丈夫そうだな。
琥珀 ライト、そろそろ離してやってくれ。傷口が開くからな。
ユウ ???あなたは……?
琥珀 俺は琥珀。シュン達とは同じギルドの仲間で……たたらの兄だ。
*
琥珀 なるほど、勇者として異変の原因探しか……。
ユウ (アイドルの部分には触れないでくれてる!いい人だ!)
コウスケ でも、なんでアイドルなんだ?
ライト コウスケ……世の中には触れない方がいいこともあるから……
ユウ ……。(苦虫を嚙み潰したような顔)
琥珀 異変はどうか分からないが……探し物の方なら、俺より適任の奴らがここに―
隣の部屋の扉を開ける琥珀
酒盛りをしているオズワルド、レオリオ、伊織
オズワルド よお!久しぶりだな!先に一杯にやってるぜ!
レオリオ こうしてまた会えるとは……巡り合わせとはまた奇なるものだな。
伊織 あっ、やっほ~!久しぶりぃ~!!ひっく!
俊介 一杯やるなオズワルド!っつーかアンタも何つきあってんだよ!王様だろ!
みくり 伊織さんのほうは完全に出来上がってるね……。
ノア うわー、ダメな大人たちだ……。
ヒビキ 信用……。
琥珀 すまない、こんなつもりでは……。
俊介 安心しろ、悪いのは全部あの悪い大人たちだ。お前じゃない。
オズワルド なんだよ、つれねえなあ俊介ぇ~。ほら、お前も一杯どうだ?
俊介 ちょっ……俺は未成年だ!あと顔寄せてくんな酒臭え!
オズワルド ちっ……まあ、冗談はこのへんにしておいて。話ならちゃんと聞かせてもらったぜ。俺の本業は商人だし……そういうことなら、喜んで協力するさ。ジャンも世話になったみてえだしな。まー、オーウェンがいねえのがちと残念ではあるがな。
俊介 そーいや、ジャンとは同期だったな。
遥人 ま、オーウェンもそのうち見つかるって!あいつ結構しぶといし!
レオリオ 私も力を貸そう。血肉湧き上がる戦いもいいが……たまには、探し物をするというのも興が乗るというものだ。
伊織 私も私もー!可愛い子のためならいくらでも脱いじゃう!
俊介 脱ぐな脱ぐな。
ヒビキ ジャンって、あれでまともだったんだな……。
あまね でも、探すって言ってもどうやって探すの?原因って言っても形が分からないんじゃ探しようがないし。
ユウ 確かに……。一応手がかり(ぬいぐるみ)はあるけど、あれ多分浄化した後に出てきてるからなあ……
シュウ うーん……堅実にいくなら一番異質そうなものを探す、とか……?でも、そんなものこの街にあったかな……。
??? それなら、万病に効く妙薬はどうだろう?といっても、ここは菓子の街だから薬ではなくお菓子だけど……。
ノア レオン!とログレス&ウィズ!
レオン 久しぶりだね、また会えて嬉しいよ。
ウィズ 久しぶりだね。
ログレス ん、久しぶり。
レオン 二人には先ほど言った菓子を探す手伝いをしてもらっていたんだけど、なかなか見つからなくて……手伝ってもらえるのであれば、こちらとしても願ったり叶ったり、という感じだね。
みくり それは大丈夫だけど……でも、どうしてそんなものを?(さっきはたくさんいたけど)この大陸ではフィクサーの被害は少ないって聞いたけど……。
レオン それが……今はそうとも言い難くて……。
みくり ?
ウィズ 僕達も菓子探しの中で何回か遭遇したけど……。確かに、他の場所と比べると数自体は少ないけど、統率が取れてて、一体一体も強力みたいで……。その中でも特に厄介なのが、相手の戦意を削ぐ個体なんだ。そいつが出てきたおかげで、最近は被害が増え始めていてね。どうして急に活性化したのかは分からないけれど……。
ログレス ま、どのみち倒すんだ。厄介とはいえ、こっちにはスピナーが二人もいる。それでなんとか―
ユウ えーっと……そのことなんだけど……。
*
一同 スピリットが使えない!?
ユウ はい……。
コウスケ でも、なんで急に?さっきまでは使えたんだよな?
ユウ ああ。俺もなんでかは分からなくてさ。星の都……西の大陸までは確実に使えてたはずなんだけど……。
遥人 先に目が覚めたたたらも使えないって言ってた。だから、もしかしてと思ってさっき試してみたらだめっぽかったんだ。
俊介 それ以外に以上はないか?体調面とか。
ユウ 今は特に。倒れる直前は変な感じがしたけど……こう、力が入らなくなる感覚……?あと、何となく寒気がしたような……
ノア うーん……ま、とりあえずユウは今は絶対安静!今何かあったら困るし!
ヒビキ そうだな、戦力としても期待できないし。
ユウ 辛辣!!いや事実ではあるけども!!
ウィズ それじゃあ、菓子探しの方は引き続き僕達が先行しよう。ヒロには引き続きこき使われてもらうとして……
ログレス お前、昔からそういうところあるよな……まあ別にいいけど。
コウスケ 俺達もいく!な、あまね!シュウ!
あまね え、俺休みたいんだけど……。
シュウ あまねはさっきまで休んでたでしょ。ほら、いくよ。
あまね 弟が冷たい~!(連行されていく)
レオン そうですね……では、僕も―
たたら ううん、ここは僕が行くよ。レオンは休んでいて。
一同 たたら!
俊介 いや、お前こそ休んどけよ。まだ全快じゃないだろ。
たたら 大丈夫だよ。さっきまで寝てたお蔭で体力も大分回復したし。それに……スピリットを使えなくても、できることはあると思うから。チカラが戻る手がかりもつかめるかもしれないしね。
俊介 ……分かった。でも、俺達も行くからな。あと絶対無理すんなよ。それとオズワルド達も連れて……
三人とも泥酔
俊介 (こいつら……!)
琥珀 大丈夫だ、俺も行く。……とりあえずは、それで問題ないだろう。
俊介 ああ、頼むわ……。
遥人 ついでに資源とかもがっつり取ってくるからな!首洗って待っとけよ!
俊介 使い方間違ってるぞ、それ。
ノア よーし!それじゃあ……一時解散!
*
みくり ライト。
ライト あ、みくりとノア!あとヒビキも。
ヒビキ 俺だけおまけ感がすごいな。
ヒビキ そんなことないって!それで、何か用か?遊びに……ってわけじゃなさそうだけど。
ヒビキ はぐらかすな。お前、さっき―たたらに助けてもらった時、何が『聴こえた』?
ライト ……なんだ、バレてたんだ。っといっても、俺もそれについては相談しようとしてたんだけど……なんか、いまいち説明しずらくてさ。
ノア 説明しずらい?
ライト うん。俺にもよくわからなくて……。怒りとか憎しみと悲しみとか、とにかく負の感情がごちゃごちゃしてたんだけど……その中に、「さむい」って言うのがあったのが気になってさ。
ノア お、思ったより複雑だった……。
みくり ……。
カルマ(回想) ……どうか、手を握ってあげていてくれ。今のこの子達の―特に、たたらの心は……とても暗くて、寒い場所にいるようだから。
みくり (「さむい」……カルマさんも似たようなことを言ってたけど……やっぱり、あのたたらは……)
ヒビキ みくり?
みくり ……みんな、このセカイに来るまでの記憶はどこまで覚えてる?
ノア 何処も何も、忘れてることなんて……あっ。
ヒビキ ……そういう事か。
ライト どういう事!?
みくり 私達の姿は昔のままで。最初は、別のセカイに来たからだと思ってたんだけど……。それでも、記憶までは忘れてない。私みたいに書き換えられた人もいたみたいだけど、それでも何かきっかけさえあれば思い出せた、ううん……思い出せるように仕組まれてた。
ノア 仕組まれてたって……でも、今まで忘れさせてたなら、それはそいつにとって都合の悪いものってことだよね?わざわざ思い出すヒントになるようなものなんて残しておくかなあ?
ヒビキ ……いや。それがここを作った奴の本来の目的だったんだ。嫌な事、都合の悪い事ならなおさら、思い出したとしても受け入れるまでに時間がかかる。このセカイも、ここまでの旅や出会いも、きっとそのための布石だ。現実世界で、俺達が折れずに前を向けるように。そして……この先の悪意に打ち勝てるように。
ノア それじゃあ……このセカイを作った奴と、ボク達に悪意を向けてる奴は別人ってこと?
みくり その可能性が高い、と思う。星の都でハルが大臣に感じた嫌な感じと、魔法都市でブリュメールさんが言ってたっていう『見え透いた悪意』。それと、今アルカトレーゼに蔓延ってるフィクサーや負のチカラは、きっと無関係じゃない……多分、かぐらにかけられた呪いも。もしたたらもそれに気づいていて、追いかけていたのだとしたら……私達の前にいるたたらも、きっと……
ライト ちょ、ちょっとまてって!たたらがお前らから離れたのももちろん覚えてるけど……でも、それならなんで今アイツは俺達と一緒に行動してるんだ?俺達現実世界でアイツと再会したけど……なんていうか、こう……別人になったみたいな感じだったし……。
ヒビキ それに関しては俺も同意見だ。このセカイから出たいのはたたらも同じなはず。みくりの仮説が正しいなら、一緒にいるのには何かの別の理由があるんだろうけど……。でも、アイツはアルカトレーゼでも一人でセカイ中を駆けずり回ってたんだろう?それなら、初めからその方が身軽だし、効率だっていい。
みくり ……。
ジャントール 人の想いっていうのは、それだけ強いものなのよ。アナタ達にも、思い当たることはあるんじゃないかしら?(回想)
みくり ……多分、効率とか、理屈じゃないんじゃないかな。
みくり 私達と旅をしていた時のたたらは、困っている人を頬っておけないくらいお人好しで、でも優しかった。再会したときだって……本当に私達が邪魔なら、どうでもいいと思っているなら、とどめを刺せるチャンスはいくらでもあった。でも、そうしなかった。もし、私達が変わってしまったと思っていただけで、その本質は今も変わっていないんだとしたら……
俊介 まだ、たたらを連れ戻すチャンスはある……ってことか。
みくり シュン!ハル!
俊介 悪い、盗み聞きするつもりはなかったんだ。話してるのが聞こえてきたからつい、な。
遥人 難しいことはよくわかんねーけど……。要は、まだたたらを連れ戻せるってことだよな!
ヒビキ (珍しく遥人が的を射ている……。明日は雨か?)
俊介 まあ、難しいことは俺が把握してるから……。とにかく、この場は俺達に任せてくれよ。ちょうどたたらのところに行こうとしてたしさ。
遥人 おー!ばっちり説得してきてやんよ!
*
ヒビキ (本質は変わらない、人の想いは強い、か。そう上手くいくとは思えないけど……でも)
回想、スグリの最期の笑顔
ヒビキ ……いつだって、未来は今を生きる者達によって切り開かれるべきだ、か。
ライト ヒビキ?
ヒビキ いや、なんでもない。まあ大丈夫だろ。心の支えってのは、なにも一つじゃないからな。
*
たたら ……。
たたら (チカラを使えない原因は、何となく分かってる。どうしてユウもそうなったかは分からないけど……。もし僕に影響されていたのだとしたら。それは、僕にもどうしようもない。でも、他に方法が……)
たたら ……これ以上、どうしたら―
遥人 たーたら!
たたら わっ……!?シュン、ハル!あれ、まだ出るのには早いはずだけど……。
俊介 菓子探しは先に白羽の狩人団ズが向かってるしな。みくりとノアはレオンとユウ連れてどっか出かけてったけど……。
遥人 そーそー!だから俺達も出るまで息抜きしようと思ってさ!
俊介 ま、ちょっとくらい休んだって罰は当たらないだろ。ここのところ色んなことがあったし……それに。
俊介 話そうって約束だったからな。さっさと白状して楽になっちまえよ。
たたら ……なんだ、バレてたんだ。
俊介 当たり前だろ。伊達に一緒に旅してねーんだよ、こっちは。
たたら ……。
俊介 ……まあ、そうなるとは思ったよ。よし、プランBだ。ハル、たたら押さえとけ。
遥人 らじゃー!
たたら ちょっ……二人とも何を―
俊介 どうしても言わないって言うなら……こうだ!
こちょこちょ
たたら わっ……やめっ……く、ふふっ……
たたら ゛いっ……!
遥人 たたら!
俊介 ……やっぱり、無理してたんだろ。
たたら ……。
遥人 ……。
遥人 離れないよ、俺達は。
遥人 言えないなら無理に言わなくていい。俺達は言えるようになるまで待ってるから。でもさ。
遥人 お前だって、諦めなくていいんだ。俺がそうだったように(後編の伏線)
たたら ―――。
俊介 ……さ、とっとと菓子も手がかりも見つけて、ユウ達驚かせてやろうぜ。
たたら ……うん。
*
菓子の都、森
ユウ ……。
娘(回想) よく見ていてね。あなたが信じている彼が、本当にその信頼に足る人なのかどうかを。
ユウ (……あの子の助言。あれはまるで、誰かが裏切るみたいな言い方だった。それに……)
???(回想) ■■■■……
ユウ (さっき見た夢。あれは、まるで―)
ユウ (引っかかることはたくさんある。確かめたいことも。それなのに……)
ノア ウ……ユウ!
ユウ わっ!?……あ、ごめん。何か言ってたか?。
ノア いや、大したことじゃないんだけど……でも、この後どうしよっかなーって思ってさ。行き先とか何も考えてなかったし。
みくり 何も考えずに数時間も歩き続けてたの!?
レオン では、ここら辺で一度休憩にしようか。目的地に着いたら食べようと思って作ってきたお菓子もあるしね。
ノア えっお菓子くれるの!?やったー!
ユウ ……。
レオン ……何か、気にかかることでも?
ユウ えっ、あ、いや……なんというか……。
ユウ これまでの旅が慌ただしかったのもあるけど……。探さなきゃいけないものも、気になることもあるのに、肝心な時にチカラを使えなくなって。適材適所ってリヒトさんは言ってくれてたけど……その、こんなにのんびりしてていいのかなって。
ノア ユウ……(食べていたお菓子を口にくわえながら)
みくり 食べるか聞くかのどっちかにしなさい。
ノア ご、ごめんって~!
レオン ……。
レオン 君のその姿勢は美徳でもあるけれど……休めるときこそ休むべきだと、僕は思うよ。ほら、急がば回れっていうだろう?それに、この時間だって無駄にはならないはずだ。心が折れそうになった時に力になってくれるのが、案外こういうときの思い出だったりするからね。まあ、これは僕個人の経験談でもあるんだけど。
レオン これまに何があったかを、僕はよく知らない。……君が何を感じ、思い悩んでいるのかも。でも、寄り添って、一緒に考えることは出来る。僕らの心は、そのためにあると思うから。君も、そうは思わないかい?
ユウ ……確かに。俺も―
*
レオン なるほど……ここに来るまでにそんなことが……
ノア ふむ……(真面目そうな顔)
ヒビキ お前はあんまりよく分かってないだろ。
ノア そそそそんなことないって~!まあ確かに、所々ややこしくはあったけど……でも、ユウにいろんな出会いがあったっていうのは分かったよ。キミが、それを大切にしていることもね。
ユウ ノア……。
ヒビキ ……でも、助言か。確かにそれは星読みのチカラだろうな。ま、妄信するなって言うのは俺も賛成だよ。未来なんて分かったところで碌なことないし。
ノア うーん……助言もそうだけど、ボクは夢の方が気になったな。ユウが旅を始めたのはそれがきっかけだったんだよね?
ユウ ああ。といってもその前にウィルとサナ―俺の幼馴染二人に引きずられてったから拒否権なかったんだけど……でも、確かに旅を続けたいと思ったきっかけの一つは、それだったよ。その声はとても悲しそうで……あと、寒そうだったから。
みくり (悲しそうな声。それはまるで、あの時の……。それに、寒いって言葉も。じゃあ、やっぱり……)
ヒビキ みくり?
みくり ……あ、ごめんね。ただ、ユウの夢がちょっと……たたら達と重なっちゃって。
ノア ……。
ユウ えっと……そういえば、みくり達と旅をしてた時のたたらってどんな奴だったんだ?その……記憶が戻ってからどうしても気になっててさ。このセカイのアイツと元の世界で会ったアイツは……同じ人物には、思えなかったから。もちろん言える範囲でいいけど……。
みくり ううん、一緒に旅をするんだもん。それに、元の世界に戻るためにも、情報は多いに越したことはないしね。
みくり 私達は、たたらの幼馴染のかぐらにかけられた呪いを解くために世界中を旅してたんだ。その時のたたらも、このセカイのたたらとほぼ同じ感じだったよ。お人好しで、困っている人を放っておけなくて、優しくて。私達も、そんな彼に何度も助けられてたんだ。でも……。
回想、一部終章、かぐらとシバとの別れ
みくり もう一つのセカイ―アンダーランドで、生ける厄災を前に歯が立たなかった私達を救うために、かぐらとシバが消えてしまった。その時のことを、たたらは自分のせいだって、ずっと思い詰めてて……。あの時のたたらは、ほんとに見ていられなかった。あんなに塞ぎ込んでるのなんて、旅の途中でだって見た事なかったから……。
ユウ ……そう、だったのか。
ヒビキ ……そう言えば。ずっと気になってたんだけどさ。
ヒビキ かぐらが特別な巫女である御神楽っていうのは俺達も何となく聞いてる。……シバの正体についても。だから、消えたのもそのチカラを使ったからなのかと勝手に思ってた。でも……そもそもあいつらは、本当に消えたのか?そこが、どうも腑におちなくてさ。
レオン それについては、僕も少し思うところがあるよ。さっきの話と照らし合わせると……彼らが消えたのが大体一、二年前。それはちょうど現実世界でフィクサーが跋扈し始めた時期と被る。これらに共通するものが呪いやそれに付随する負のチカラなのだとしたら……彼らはそこに養分として取り込まれている可能性が高い。フィクサーの被害が増え続けているということは、彼らのチカラがまだ健在ということだから……
みくり・ノア まだ完全には消えてない……!?
レオン あくまで仮説だけどね。でも、菓子の国であるシャトレーゼに伝わっていた伝説の菓子やここにあると噂されている万病に効く菓子のように……大きなチカラを持つものは、ただそこに在るだけで周囲に影響を与える。その最たる例が、フィクサーの異常増殖やその被害だ。けれど、逆に考えればそれだけのものがそうすぐに消えるとは考えにくい。だから、まだ余地はあるんじゃないかと思ってね。ほら、二人とも色んな意味でかなりの大物だっただろう?
ノア 確かに!かぐらはいてくれるだけでみんな明るくなるし、シバは剣も料理も上手いし……二人とも、所々残念なところもあったけど。
みくり ああ……(料理の腕が壊滅的なかぐらとかっこいいものに目がないシバを思い浮かべながら)
ユウ なんか、何となく既視感が……シバって奴のことはよく知らないけど……(料理の腕が壊滅的なサナとアスタを思い浮かべながら)
ノア そっか、ユウは会ったことないんだっけ。でももしシバと会ったら、ユウも仲良くなれると思う!かっこいいもの好きだからいっぱい褒めてくれそうだし!
ユウ へえ~、すごくいい人そ―
???(回想) 名乗るほどの者じゃないよ。……お、いまのなんかカッコいいな。
ユウ ……ん?まって、かっこいいもの好き?
ノア ?それがどうかしたの?
ユウ いや、それが……
*
ノア うん、間違いない。それはシバだよ。
ユウ 断言した!?
みくり このセカイには現実世界にはもういない人もいたから、もしかしたらとは思ってたけど……。
ヒビキ 好みが変わってないあたり、一周回って安心すらしてきたな……。
ユウ そうか、あいつが……
ユウ (でも、あの感じはまるで―)
ノア 陽気なシバがどうかした?
ユウ あ、いや……俺の事を案内してくれたのは、確かにみくり達が言うようなシバだった。たたらによろしくとも言ってたし。でも、一瞬―俺が記憶を取り戻して混乱してた時に名前を呼んでくれたアイツは……どちらかと言うと、アスタ―俺の仲間に似てたような気がするんだ。気のせいかもしれないけど……(回想、霧の森)
レオン ひとつの人物に二つの人格、か。ボクもその手の話は聞いたことがあるけれど……こと今回は、それも何かのヒントかもしれないね。特にこのセカイでは。
みくり うーん……もう少し手がかりがあればいいんだけど……。
ユウ そうだな、俺も―
爆発音
一同 !?!?
ノア あの方角は……白羽の狩人団ズが向かったほう!?
ヒビキ くそっ……!
みくり あっ、まって!ヒビキ!
レオン とにかく、僕達も急ごう。
ユウ ああ!
*
ヒビキ お前ら!無事か!
レオン さっきの爆発音、一体何が……
ライト ヒビキ~!みんなも無事でよかった~!
シュウ 俺達は無事なんだけど……でも、万病に効く菓子が……
ユウ えっ、見つかったのか!?
あまね ふっふーん、俺達の力を舐めてもらってはこま……っていだっ!?
シュウ こら、調子に乗らない。ごめんね、うちの兄さんが……。
シュウ ……それで、話を戻すねけど。結論から言って、万病に効く菓子、というか、それっぽいものは見つかったんだ。明らかに異常な魔力を放ってたから一目でわかったし。ただ……。
コウスケ それ持ってる相手がフィクサーだったんだよ~!しかも、なんかボスっぽいやつ!あんな感じの……
明らかにでかくてボスっぽくて何かをくわえているフィクサーと目が合うユウ達
コウスケ ……あれだ!!
フィクサー グオオオオアア!!!
ヒビキ また龍かよ!しかも浮いてるし!くそっ、こうなったら―
俊介 〈草木 巻きつき 捉えろ ルスティシオ〉!!
植物のつるがフィクサーを拘束
みくり 植物の魔法、これは……!
ノア シュン!!
遥人 シュンだけじゃないぜ……っと!!(でかめのパンチ音)
琥珀 爆発音には驚いたが……なんとか間に合ってよかった。
伊織 何があったのかと思ってきたけど……なるほど、これはなかなか切りがいがありそうじゃないの!
オズワルド ああ、ようやっと酔いが醒めてきたからなァ。ここからは俺達に任せな。
レオリオ お前達は、ユウを救うことに専念するといい。
レオリオ さて。久々血が滾ってきた……お前は、私を失望させてくれるなよ?
*
レオン 〈舞え、砂糖菓子 包み込め、硬く美しく ラ・シュクール・ロッシェ〉!!
フィクサー グオオ!
オズワルド おっ、やるな若いの!俺もまけてられねーってなァ!
ガンガン攻撃当ててる
ライト す、すごい……このまま俺達無しでもいけるんじゃ……?
シュウ 確かに……
ヒビキ (いや、そんな簡単には……このままじゃ―)
ヒビキ ってシュウ、ライト!気をつけろ!
二人 !?
伊織 ふう、間一髪……三人とも、怪我はない?
ライト あ、ああ……ありがとう……
伊織 いーのよいーのよ!可愛い子達のためならこれくらい、なんてことない……ってね!!(攻撃)
伊織 レオリオさーん琥珀ー!そっち任せた!
琥珀 ああ。二人には及ばないが……スピリットの方なら、俺も多少は扱える。この場は任せてくれ。
スピリットの光
琥珀 レオリオ!
レオリオ 分かっている、任せておけ!
レオリオ ふんっ……!〈鉄血拳〉!!
あまね おー……吹っ飛んだ……
遥人 たたら!!今だ!!
たたら うん!みんな、伏せて!
たたら 〈喰らえ〉!!!
ヒビキ !これは……!?
たたら (っ……やっぱり、こっちは消耗が大き―)
どくん、という心音
たたら ―――。
ノア ユウ!しっかり……ってうわあ!?(たたら、目を見開く)
俊介 くそっ、やられた!あいつ……ユウを自分の中に取り込みやがった!
*
フィクサーの中
ユウ (ここは……フィクサーの、記憶?)
ユウ (……そうだ。俺達は万病に効く菓子を持ったフィクサーを浄化しようとして……)
??? ……ごめんな、こんなところに閉じ込めて。(ユウ、驚いている顔)
ユウ (え………)
ユウ (……アス、タ……?)
アスタ 俺の力が足りなかった。俺がもっとうまい事やれてれば、別の道だって……一緒に生きる道だって、あったはずなのに。
ユウ (どうしてフィクサーの記憶の中に……あ、)
レンメイ(回想)備えが必要なほど危惧していたこととなると……大厄災、とかかしら。さっきシオンが言っていたように私達の国―紅華帝国にも邪龍はいたし……。まあ、それも誰かが封じたのだけれど。
リンメイ(回想)あれほどのものを長い間封じておくことのできるチカラ……きっと、術者は相当な実力を持った方だったのだと思います。術式から見るに、別の国の方のようでしたが……。
ユウ (星の都で、二人は紅華帝国の邪龍を誰かが封じたって言ってた。別の国の人が封じたかもしれないとも。もしそれがアスタだったとしたら。強いフィクサーの危険性を誰よりも分かっていたとしたら。あの時も、きっと……(空の国後回想))
アスタ お前は、俺を恨んでもいい。憎んでも、呪ってもいい。俺は全部受け入れるよ。でも、必ず、お前の苦しみに寄りそってくれる奴らと出会えるから。だから―
アスタ お前も、信じることを諦めないでくれ。
アスタ お前が昔、俺を信じてくれたように。チカラを貸してくれたように。どうか……その想いだけは、失くさないでくれ。
フィクサー グルル……
アスタ わっ!よせって!はは、くすぐったいだろ!
アスタ ……もし、世界が平和になって。また、どこかで出会えたら。その時は、また―
ノイズ
ユウ (なんだこれ⁉ノイズが広がって……)
ユウ (記憶が……)
ユウ (そうは、させるか……!)
ユウ (知りたいことも、確かめたいこともたくさんあって、不安もあって……負のチカラは、そういうところから生まれるのかもしれない。でも……)
アスタ(回想) お前が昔、俺を信じてくれたように。チカラを貸してくれたように。どうか……その想いだけは、失くさないでくれ。
ユウ (アイツが願ったこの思いまで―大切な思い出までなくなってしまうなんて、そんなの間違ってる。俺一人じゃ何もできないけど……でも、俺は一人じゃない。それに、向こうの世界でみんなも待ってる……だから―)
ユウ 俺はまだ終われない!ここでお前を、諦めたりなんかしない!!
スピリットの強い光
レオン この光……それに、フィクサーもおとなしくなってる。これは……!
ノア やったー!浄化成功だよ!
ヒビキ ……あれ、なんかこっちに近づいてないか?
一同 えっ
俊介 〈支えろ〉!〈支えろ〉!〈支えろ〉!!(浮遊魔法を連呼)
俊介 くそっ!ダメだ、俺の魔力じゃ全然浮かねえ!
みくり 私達も手伝うよ!ノア!ヒビキ!
ヒビキ みくりの手を煩わせるまでもない。こんなの、俺一人で―
ノア おっけー!まっかせて!
ヒビキ ……。
コウスケ 俺達も手伝うぜ……ってことで遥人!
遥人 おーっし!まかせろ!
あまね 俺も俺も!
シュン ごめん、ライト……あとで何か驕るから……
ライト え?みんなして俺を抱えてフィクサーの方に向けて……っておいまてって何を
四人 せーのっ!!(ぶん投げる)
ライト うわあああああ!?!?!
*
ライト 待て待て落ちる落ちる!!ってかこれ俺投げられる必要なくない!?くっそ、こうなったら俺も……!
ライト 〈浮け〉!〈浮け〉!〈浮けええええ〉!!
ヒビキ あいつ、めちゃくちゃヤケになってるな……。
ユウ (……あれ、なんか騒がしいような……)
ユウ って落ちてる!?!?
ユウ (なんだこれ!?フィクサーの心に手を伸ばしたら光に包まれたから多分浄化できて……でも気づいたら空中にいて……!?まずい、このままじゃ何も解決できないままHeavens Wingが終わる―!)
たたら ユウ!手を!
ユウ ―――!
ユウ ……ああ!
*
ユウ ん……あれ、ここは……
ライト ユウ~!!無事でよかったあああ!!!
ヒビキ おいこら抱き着くなよ、あと鼻水!
たたら よかった、目が覚めて……それに、さっきの光も……
ユウ ああ、チカラも戻ったみたいだ。
ユウ ……。
ユウ (確かめたいことはある。でも、あの時伸ばしてくれた手は、きっと―)
たたら ユウ?
ユウ さっき、フィクサーの中に取り込まれたとき……その心に触れて。悲しみに触れて。スピリットを使えるからって、その全部を分かってあげられるわけじゃないけど……それでも。信じたいって……俺だけは諦めたくないって思ったんだ。今できる精いっぱいで、寄り添いたいって。今の俺はまだ未熟だけど……その想いだけは、嘘じゃないから。
たたら ……。
ヒビキ いーんじゃねーの。
ヒビキ 俺にはもう、そんな風には思えない。今更、誰も彼も救いたいなんて。でも……そんな奴が一人くらいいた方が、浮かばれる奴もいるかもしれないしな。
レオン ボクも同意見だよ。たとえ何を感じ、思い悩んでいるのかが分からなくても……その心に触れて、寄り添って、一緒に考える。それは、誰もができることじゃないからね。
ユウ ヒビキ、レオン……
コウスケ ……はっ!!!!
ライト えっ急に何……
コウスケ ユウが取り込まれてそれどころじゃなかったけど……俺達、お菓子探してたじゃんか!えーっと……饅頭のお菓子……?
ヒビキ 万病に効く菓子、な。
コウスケ そうそれ!浄化したなら、そこらへんにないかなーと思ってさ。
シュウ うーん……それらしいものはどこにも……ってあれ?こんなところにぬいぐるみが……
あまね ほんとだ、なんかフィクサーが持ってたものと似た……というか、ユウおにいさんと似た魔力かも?
ユウ あっ、それ俺達が探してた手がかり!これは……アマルティア、か。
レオン おや、なかなかかわいらしいね。僕も欲しいくらいだよ。
俊介 また無意識に口説いてる……
ライト でも、それじゃあ、万病に効く菓子っていうのは……
ヒビキ このぬいぐるみの事だろうな。確かに、魔力は異質だけど遠目から見えたら菓子に見えなくも……ない、か……?
俊介 ま、大方噂が独り歩きしたんだろうな。菓子の街でチカラの大きいものって言ったらまあ菓子ってなるだろうし。
遥人 ちぇー……今度こそ旨いものだとおもったのにな~。
ノア ボクもちょっと期待してたのに……
みくり まあまあ、二人ともそんなに落ち込まないで。今度私が何か作ってあげるから!
遥人・ノア !?!?!?!?(恐怖)
ノア いや、別に落ち込んではいないというか、今だってすっごいうれしいよね!!ハル!!
遥人 ああ!!もちろん!!なー!
みくり そう?せっかくいい機会だと思ったのに……
ヒビキ こいつらなんかより俺に作ってよ。隅から隅まで味わい尽くすよ。(爽やかな笑み)
伊織 あら、かわいい子の手料理ならいくらでも歓迎よ!
オズワルド お前はそればっかりだなァ……ま、腹空いてたから何か食いてえってのなら分かるけどよ。
レオリオ それもいいが……お前たち、この後はどうするつもりだ?その様子だと、ここでの目的は果たされたようだが。
みくり うーん……残るは北の大陸か中央の大陸だけど……。
ユウ (ここで見つかったのは、アマルティアのぬいぐるみだった。なら、残りはやっぱり……でも)
回想、二部空の国後、記憶の戻ったアスタ
ユウ (もし、北の大陸にあるぬいぐるみがアスタだったとして。その記憶に触れることがあるとしたら、俺は―)
たたら 大丈夫だよ、ユウ。
ユウ え……?
たたら ユウが何を恐れているのかは分からないけど……。君の想いに嘘がないのなら、何度だって諦めなかった君なら。この先もきっと、大丈夫。旅立ちからずっと一緒に居たんだ。それだけは保証できるよ。
ユウ たたら……。
俊介 ま、何かあったら俺達もいるし……ここまで来たんだ。なら、俺達も最後まで付き合うよ。
遥人 俺も俺も!敵がいたらぶっ飛ばすし!
みくり もちろん、私達も力になるよ!
ノア うんうん!
ヒビキ 俺も……と言いたいところだけど、俺はここに残るよ。白羽の狩人団のみんな(こいつら)野放しにしとくのは不安すぎるし……。
シュウ ありがとう、ヒビキ。そうしてくれるとすごく助かる……。
伊織 あら、それじゃあ私も残ろうかしら!この後特に予定ないし、この街おいしそうなものたくさんありそうだし!
俊介 呑気だな……。
オズワルド んじゃ、俺ものこるかねぇ……。ここは菓子の街なんだろ?なら、あう酒もありそうだ。
レオン シャトレーゼと同じかどうかは分からないけれど……ここは気候や土地勘も似ているから、もしあるとしても甘酒くらいだろうけどね……。
レオリオ では、私も付き合うとするか。もちろん有事の際には駆け付けるが……せっかくの夢だ、楽しまねばそんというものだろ。
琥珀 俺は……そうだな。一緒に北の大陸に行こうと思う。少し、気になることもあるしな。
オズワルド ま、そーいうこった。俺達はここで別れるが……なに、現実世界でも会えるからな。それに、思い出はいつでも振り返れる。だから、安心して行ってこい。
レオリオ うむ、達者でな。
伊織 またね~!
ライト またなあ~!
ユウ ああ。それじゃあ……みんな、またどこかで!
*
事の顛末を見守っていたリアルミュート。
けだるげな独り言(後ろにカルマがいるのに気づいていなかった)
リアルミュート ……くだらない。とんだ茶番だな。友情ごっこはよそでやってろよ。
カルマ へえ……本当にそう思うかい?リア。
リアルミュート っ…………は、
リアルミュート …………………………カルマ、様。
カルマ 大分溜めたねぇ。でも意外だな、まだその呼び方をしてくれるなんてね。
リアルミュート ……うるさい。
カルマ まあ御託はいい。ともあれ、元気そうで何よりだよ。
リアルミュート (やばい!目がぜんっぜん笑ってない!多分、マジでキレてやがる……)
カルマ 分をわきまえろ、リアルミュート。いつから自分が対等に交渉できると錯覚していた?
カルマ もし調子に乗りすぎることがあったら……分かるな?
リアルミュート っ…………!
カルマ ……なんてね。とはいえ、今回は別に君を糾弾しに来たわけじゃない。
カルマ 時間がないから率直に言おう。たたら達を頼んだ。……今の僕には、守ってあげられないから。
リアルミュート ―――。
リアルミュート (……また、そんな目をするのか。あの時と同じ―自分を、諦めたような目を。)
リアルミュート (ったく、親子そろって同じ目をしやがって。私が、どれだけ…………あ、)
リアルミュート (……そうか。この人は、もう―)
リアルミュート 承った………貸しはつけないでおくさ。
カルマ ああ、助かるよ。
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