古書のこしょこしょ話⑥ 〜桜桃忌〜
6月19日は太宰治(本名:津島修治)の誕生日である。また、彼の遺体が発見された日でもある。彼が生前、桜桃を好んで食べていたことと、晩年に「桜桃」という短編を発表したこともあり、彼と親交のあった作家の今官一によって「桜桃忌」と名付けられた。この日は多くのファンが彼を偲びに東京・三鷹の禅林寺の墓所までやってくる▶︎筆者も初めて太宰の墓前で手を合わせてきた。墓石に刻まれた太宰治あるいは津島の字には桜桃が埋められていた。墓前では20人程が太宰を語り合っていた▶︎太宰の作品を簡単に論じることはできないが、太宰を作家として好きな人もいれば、一人の人間として尊敬する人もいるだろう。彼の作品からは、一度読んだら決して忘れることのできないほどの衝撃を受ける。筆者も彼の作品に魅せられた一人だ。15歳の頃、人間関係のトラブルで絶望していた筆者はついに「人間失格」という劇薬に手を出した。序文は今も口に出して言えるほどに大きな衝撃を受けた▶︎彼の人生も一本の映画にまとめられるほどで壮絶だ。多くの女性にモテ、5回を超える自殺企図で、最期は愛人の山崎富栄と入水した。筆者はこの生き様に憧れを抱く人も少なくないように思う▶︎近年も度々恋人との無理心中は聞かれる。あの世で、生まれ変わって君ともう一度出会えたら。太宰と山崎の心中はそんなロマンティックなものではないだろうが、そんな死への憧れは誰しもが持っているのかもしれない。
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