古書のこしょこしょ話⑫ 〜脆い繋がり〜
遺伝には性格などの内的なものもあれば、環境などの外的なものもある。どちらも抗うのは難しいものだ▶︎仰々しい導入になったのも理由がある。あくる日の未明に父方の祖父が亡くなったのだ。4年前に介護施設に入ったきり、孫の僕は面会が叶わなかった。その背景には新型コロナウイルスの流行だけでなく、家族内の政治もあった。父は実の父親と不仲だったのだ。背景には受験や後継の問題などがあったそうだが、当事者以外は知り得ない事情や感情があったようだ。そんな背景もあり、会うのは自重するように母から言われたり、僕自身も忖度していたのだ▶︎祖父は亡くなる直前まで、僕の名前を呼んでいたという。肺炎や認知症を患い、家族の顔と名前が一致しない状況でも、家族のことは気にしていたらしい▶︎こうして文字にしてみるととても悲しい最期のようにも感じられるが、決してそうではなかったと祖母やおじは言う。葬儀前に祖父の穏やかな顔を見て、僕もそう思えた。祖父とは、僕も少しばかりの畑仕事を教えてもらっていたり、幼き日の多くの思い出があった。僕は静かに手を合わせ、つまらない理由で会いに行かなかったことを詫びた▶︎相続の問題は自作農の家系では避けられない。家族内の政治もある。そこで、いつも大事なのは家族仲や信頼関係だ。今の父と僕を繋ぐのは学費や生活面だろう。そのことで二人の間に亀裂が入ることがあれば、そのときは僕も父と同じ運命を辿るかもしれない。