古書のこしょこしょ話⑩ 〜死の足音〜
心労が祟ったのだろうか、胃腸をいためた。食あたりよりストレスの方が原因だろうと医者は言う。とにもかくにも長い間寝込むことになったのだが、なんにも食べることができない。腹が減っても箸がすすまないのだ。夜は高熱でうなされ、死を一層身近に感じた▶︎人は死を身近に感じると政治や社会問題に関心を示す。かの坂本龍一が神宮外苑の森林伐採問題に直接抗議をしたのも闘病生活を送っていたことが大きかっただろう。僕も寝込む間に考えてみた。ジャニーズよりは衆院選の方が僕には大きな影響があるな。僕の住む選挙区には現職のいわゆる裏金議員の一人が立候補している。先日の地域集会で大きな土産を持ってきたので今回も受かりそうだ。しかし何か大事な事象を見落としている気がする。しこりが残っただけで考えがまとまるより先に症状は改善した▶︎死といえば先日、僕に懐いていた野良猫の一周忌を迎えた。亡くなる数日前まで原因不明の下痢で苦しんでいた。弱るのを見捨てられず、家で面倒をみた。ちょうど僕の受験期と重なっていたので、構う時間もなく仕方ないので猫の見ているところで作文の練習をしていた。亡くなる前日は元気があった。猫が原稿用紙のすぐ近くまでくる。そして原稿用紙を破いた。僕はくすぐって怒った。そこまで元気になっていた。しかし、僕の受験を見守ると、翌日には結果を知ることなくケージの中で冷たくなっていた。いつか、成果物を見せたいものである。