恐竜ワンダーランド ニッポン
オジさんの科学vol.067 2021年7月号
7月に入り、相次いで恐竜化石発見のニュース飛び込んできました。
日本初の恐竜化石は、1978年に岩手県で見つかりました。オジさんが子供の頃は、「日本では、恐竜の化石は出ない」と言われていました。恐竜化石は、夢のまた夢でした。
21世紀になると、続々と恐竜化石が発見されました。現在では、1道18県で見つかっているそうです。
そこで今回は、最近2~3年の日本の恐竜関連のトピックスをまとめてみました。ここからも、かつて日本の大地で多くの恐竜が繁栄していたことがわかります。
2019年4月 高校生が「ティラノサウルス」の歯の化石を発見した、と発表される。
発表したのは、岩手県の久慈琥珀博物館。2018年6月に発見したのは、博物館の敷地内にある発掘体験場に遠足で訪れた県内の高校生だった。
約9000万年前の地層から見つかったのは、肉食恐竜ティラノサウルス類の歯の化石。上顎の前方の歯で長さ約9mm。このサイズから推定すると体は小ぶりで、体長3m程度とみられる。子どもかもしれないが、小型の新種という可能性もあると言う。
2019年9月 「カムイサウルス」の全身骨格化石が公開される。
2019年10月号でとりあげた「カムイサウルス・ジャポニクス」。日本恐竜研究史上最大の発見と言われる。
カムイとは、アイヌの言葉で「神」のこと。日本の神の竜だ。北海道の「むかわ町」で発見されたので、「むかわ竜」とも呼ばれる。
約7200万年前の海の地層から見つかった。頭からしっぽの先まで約8mもある大型の草食恐竜、ハドロサウルスの仲間であることが分かっている。子育てをしながら集団生活を送っていたのかもしれない、とも言われている。
ほぼ全身の骨格が残っており、話題になった。化石の一部が最初に発見されたのは2003年。2019年9月に正式に新種の恐竜として発表された。
2020年6月 世界最小の「恐竜卵化石(ヒメウーリサス・ムラカミイ)」が発表される。
2019年1~3月にかけての調査によって、兵庫県丹波市の約1億1000万年前の地層から世界最小の「恐竜の卵化石」が見つかった。
4.5cm×2cmでウズラの卵ほどの大きさ。殻の微細構造から新種と判定された。
小さいものや可愛いものを「ヒメ」と称する。例えばヒメリンゴ。このヒメに、ギリシャ語で「卵の石」と言う意味の「ウーリサス」を合わせて名付けられた。「ムラカミイ」は、この地域で丹波竜を発見した村上茂さんに因んで付けられた。
2021年4月 淡路島の恐竜化石が新種と判り、「ヤマトサウルス」と名付けられる。
2004年に兵庫県淡路島南部の洲本市の約7200万年前の地層から発見されていた恐竜化石が、新種であることが判った。原始的なハドロサウルスの仲間であることから「ヤマトサウルス・イザナギイ」と名付けられた。
日本を創った伊弉諾尊(イザナギノミコト)の倭(ヤマト)国の竜。この恐竜は、ハドロサウルスの仲間の始祖に近いと考えられている。
淡路島は古事記や日本書紀の国生み神話の冒頭に出てくる。
ここからは、今月のニュース。
7月3日 日本最古の恐竜卵殻化石を確認、と発表される。
岐阜県高山市に分布する地層から、1988年~2009年にかけて9点の卵殻の欠片が発見された。その分析結果が発表された。うち5点は、トロオドン科もしくはそれに近縁の恐竜である可能性が高いと判った。
トロオドンは、体長2m弱の肉食恐竜。ジュラシックパークに出てくるラプトルに似ている。脳が大きいことから「最も賢い恐竜」とも呼ばれる。
この地層は約1億3000万年前に形成されたと推測されており、これらの卵殻化石は日本最古のものと考えられる。
7月5日 天草にもハドロサウルスの仲間がいたと発表される。
熊本県天草市立の御所浦白亜紀資料館と福井県立恐竜博物館は、天草市の約7200万年前の地層で、草食恐竜ハドロサウルス上科の歯の化石2点を発見したと発表した。研究チームは「この時代に日本で恐竜が広く生息していたことを示す証拠になる」と話している。カムイサウルスやヤマトサウルスの仲間だ。
長さ16mm幅13mmと、長さ、幅とも9mmの2つの歯は、草木を食べてすり減っていた。
7月13日 国内最大級の草食恐竜発見のニュース。
長崎市と福井県立恐竜博物館は、「長崎市内で2017年に発掘した化石が国内最大級の草食恐竜のものと判明した」と発表した。こちらもハドロサウルス上科で、全長約9mの個体と推定されるという。
化石は長さ90cm、幅20cmの左肩甲骨。長崎半島西側にある約8100万年前の地層でみつかった。2018年から修復や復元を始め、今年作業を終えた。
オジさんの世代では、夢のまた夢だった恐竜の化石発見。でも、今の子供たちにとっては、もっと身近なようです。子ども科学相談では、「どうしたら恐竜の化石が見つかりますか」と小学生が質問しています。ああ羨ましい。
今回紹介した恐竜化石は、全て中生代白亜紀の地層から発見されています。この地層は全国各地に分布しています。
そして海外からも、日本の恐竜マニアが喜ぶニュースが入ってきました。
7月9日 中国のドラえもんファンの研究者によって新種の恐竜に「のび太」にちなんだ名前が付けられた、というニュースが流れた。
中国で見つかった新種の恐竜に、「エウブロンテス・ノビタイ」と名付けられた。
名前を提案した中国地質大の邢立達准教授は「恐竜がテーマの映画『のび太の恐竜』『のび太の新恐竜』は非常に素晴らしい内容だ。加えて多くの子どもを恐竜好きにした」と話したそうだ。ドラえもんは、1980年代生まれの中国人にとって、子ども時代の共通した思い出の一つだと言う。
2020年7月、中国四川省でこの恐竜の足跡化石が見つかった。太った3本の指が密接に並び、4つある足跡の間隔は約50cmだった。体長約4mと推定され、白亜紀の肉食の恐竜エウブロンテスの新種であると認められた。
参考資料
<プレスリリース>
「岩⼿県久慈市で発⾒ ティラノサウルス類の⻭化⽯」
2019年4月20日 早稲田大学
「むかわ竜を新属新種の恐竜として『カムイサウルス・ジャポニクス Kamuysaurus japonicus)』と命名」
2019年9月6日 北海道大学 穂別博物館 筑波大学
「世界最小の恐竜卵化石を発見」
2020年6月23日 筑波大学 兵庫県立人と自然の博物館
「淡路島の恐竜化石を新属新種『ヤマトサウルス・イザナギイ』と命名」
2021年4月27日 北海道大学 岡山理科大学 兵庫県立人と自然の博物館
「日本最古の恐竜卵殻化石を確認」
2021年7月3日 筑波大学 岐阜県博物館 千葉県立中央博物館
<新聞>
朝日新聞デジタル 2019年4月19日 ティラノサウルスの歯、遠足で見つけた 新種の可能性も
日経新聞 2019年4月22日 ティラノ類の化石、高校生が発見 新種の可能性も
日経新聞 2021年7月5日 草食恐竜の歯化石発見 熊本・天草、白亜紀末
日経新聞 2021年7月9日 「のび太」にちなみ命名 中国で新種の恐竜
日経新聞 2021年7月13日 国内最大級の鳥脚類恐竜か、全長9㍍ 長崎で発掘の化石
<書籍>
『口語訳古事記 神代篇』 三浦佑之 文春文庫
<WEB>
福井恐竜博物館ホームページ
国立科学博物館ホームページ