【バングラデシュ市場】過去5年の自動車業界を見て思うこと
バングラデシュが今月頭からフル・ロックダウンに入ってしまったので、時間に余裕ができてしまいました。無事に一週間でロックダウンが解除されるのか… 本当に一日でも早く、コロナ収束を願うばかりです。
私は新卒で入った自動車メーカーの海外営業時代も含め、10年近くバングラデシュの自動車市場を見てきました。今自分でビジネスをやっていて、色々歯がゆく思っている部分もあり、市場概観をまとめようと思います。
1. 直近の市場概観
バングラデシュの自動車市場規模は、2020年時点で、中古車が15,000台~、新車が4,000台弱と言われています。圧倒的に中古車が多く、またそのほとんど(所感で9割くらい)が日本からの輸入です。理由としては、中古車だと減価償却が効いて、税対象のバリューを基準から2,3割落とせるルールがあるから(各モデルについて、日本だと日本市場での平均中古価格をBook value的なものにみなす、という運用をしています)。
そんなバングラ市場、車の買い手はどのような人でしょうか。自分の感覚だと、特に中間層は販売価格≒年収、になるような層… 例えばトヨタのアクアやアクシオが市場価格USD17~18Kだとすると、月収15万タカ(USD1,500くらい)程度、そこそこ名の知れている大企業の部長職以上の消費者のイメージです。
一方で、先日の記事にもあったように資産1億円以上のミリオネアの成長が著しいのもバングラデシュの特徴で、このようなニューリッチ層は基本、欧州車で、年間~500台くらいの規模と言われています。
2. 過去トレンド
上記のように中古車メインのバングラ市場ですが、2017年以降中古車市場規模は下降トレンドにあります。シンプルに2017年の制度改変が理由で、先に説明した減価償却ルールが厳しくなった結果、「ちょっと手が届かなくなった…」という消費者が出てしまいました。
他方、新車市場規模は小さいものの、過去3年間順調に伸びてきているのが実感です。政府の環境車への軽減税率にも後押しされ、特に欧州車市場(めちゃくちゃ小さいですが、、)は毎年20%くらい伸びていると感じます。デザインだけでなく環境対応の良し悪しが市場での成功に影響している面もあり、トヨタのランクルやハリアーのような高額の日本車は前程出ていないかと。デザイン面では、バングラデシュではベンツが人気、BMWがあまり人気がない状況です。(なんでBMW人気ないんでしょうね?)
3. 今後のバングラデシュ市場
特にコロナもあっていつ市場が回復基調になるのか予想が難しいところではありますが… 自動車保有台数が1,000人に数台というバングラ、ポテンシャルは大きい!と信じています。
政府としては、やはり製造業押しということで中古→新車販売シフト、自国での新車製造を進めたい意向のようです。しかし、これまで「中古輸入をもっとやりにくくする」と言っていたのが今年に入ってウヤムヤになったり、急に中古車市場がなくなることは向こう数年ないのでは?と見ています。
新車製造も、Hyundaiや、三菱・プロトンを作る自国工場、またスズキ向けの投資計画(30億円以上)も出ています。といっても、新車市場規模を考えると(個人的に採算取るのに必要な)3,000台以上を生産するようなモデルはまだなくて、需要の爆発的な増加が待たれるところです。
(参考:“Made in Bangladesh” cars: how far are we?)
そして、その需要創出の一番の鍵は、ダッカ都市圏の拡大・道路整備と見ています。ダッカ中心部の渋滞はアジア有数で、保有台数の少なさも踏まえると、ちょっと異常なくらい。。。やはりインフラが整い、人が気持ちよく、楽しく自動車に乗れる環境が作られないと、いくら価格を下げたところで爆発的には伸びないでしょう。
政府は、電車を作ったり(※1)、郊外に新たなエリアPurbachal(※2)を作ったりして都市の拡大を図っており、その進捗に期待です。
(※1)川崎重工製の車両が21年3月に輸出されたそうですが、コロナによる工事遅れもあり、部分開業は来年に後ろ倒しになったみたいです(参考:東京新聞)
(※2)Purbachalの開発も過去何回も遅れを期しているようですが、JICA等も含めて日本企業向けのEconomic Zoneも作ったり、日本人の知人でも投資している人がいて、そこそこ注目されています。今の駐バングラデシュ大使の方がかなり企業誘致に積極的で、つい最近もインタビューにて楽観的なコメントをしています。
Bangladesh exhibits tremendous development potential due to its advantageous geographical location in Asia, linking India and the Asean. The Japanese companies will look at the advantages of Bangladesh, such as labour cost, skills availability, logistics, infrastructure, and benefits of EPZs and special economic zones.
Undoubtedly, Japanese investors have high hopes for the business potential in Bangladesh, in readymade garment, power and energy sectors, and other sectors such as ICT, light engineering, pharmaceutical, and agro-based industry.
(駐バングラ日本大使 伊藤直樹氏、21年5月12日、The Daily Starより)
定期的に、バングラデシュや、その他南西アジア各国の自動車市場概観については書いていこうと思います。
それでは!
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