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「この家いくらで建てられますか?」に対する真面目な答え①


「この家いくらで建てられますか?」

これはお客様との打合せの中で、最もよく受ける質問の1つです。実際、住宅の価格は、建築家に設計を依頼するお客様がデザインと同じくらい気になることではないでしょうか?

ところが、実はこの質問に誠実に回答するのは簡単ではありません。それが何故難しいのか、建物の価格はどのような要因で決まっているのか、以下にまとめてみようと思います。

建物の大きさによってコストは変わる

当然ですが、同じ仕様の建物でも、大きな家ほど建設コストは嵩みます。広い敷地の中で外構(庭や駐車スペース)とのバランスを考えながら家を建てる場合や、都市型の敷地でも2階建てにするのか、3階建てにするのか、(+地下も検討するのか)迷うようなサイズ感の場合は、まずおおよその床面積について検討しなければコストの概算が出来ません。

逆に、全体予算から考えると、闇雲に最大の床面積を確保するよりも、必要十分な間取りを確保した上で少しスリムな住宅にした方が、各部の仕様・グレードはアップできるという言い方もできます。

そこで、まずはご家族の構成や必要な部屋数のヒアリングから始める必要があります。特に、標準的な部屋以外のスペース(ビルトインガレージやオーディオルームなどの趣味室、書斎やワークスペース、サウナやサンルーム、ゲストルームetc…)のご要望がある場合は、早めに共有して頂かなければなりません。

しかし、部屋数を多くし過ぎると結果的に1つ1つの部屋は小間切れになってしまうので、一度プランニングした後に、やはり一部のお部屋は中止して、LDKを中心としたメインの空間を広めに取ろう、という案に落ち着く場合も多々あります。

暮らし方は千差万別なので、クライアントのライフスタイルや、どのような部屋を重視するのかという価値観は、毎回ゼロから確認する他ありません。結局は①建物全体の大きさと、②その中で各部屋に割く広さのバランスと、③仕上げ材や各設備のグレード感の3つを、全体のご予算を睨みながら調整していく、というのが実情です。

坪単価が一つの目安

おおよその床面積の検討と同時に、ざっくりとした費用感のアタリを付けることは可能です。具体的には、床面積(坪数)×坪単価(万円)を目安にするのが分かりやすいと思います。
例えば、40坪で120万円/坪くらいのグレードで建てれば4800万円と計算できます。同じ4800万円でも、床面積を30坪に抑える代わりに180万/坪くらいまで仕様を上げるという設計も可能ですし、逆に広さを重視して48坪まで広げても100万円/坪で抑えれば、計算上は同じ総額になります。

弊社の場合、ご予算も坪単価もお客様毎に毎回バラバラで、建物の構造(木造/RC造/鉄骨造)によっても異なりますが、100万/坪~300万/坪くらい幅があります。

※ちなみに、1坪=約3.3㎡です。私も含めて面積は「㎡」単位での方が感覚的に広さを掴みやすいと思うのですが、メートル法が導入される前に使われていた尺貫法の名残りで、建設費は「坪」あたりの単価で表すのが一般的です。

実はくせ者の「坪単価」

このように説明すると、この「坪単価」が何で左右されるのかが気になるところだと思います。しかし、実はこの「坪単価」、目安として使えるのは間違いないのですが、なかなかのくせ者です。

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