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どの呼び方が正しいの?建築家?建築士?デザイナー?


色々な呼称が乱立状態

建物の設計をしている人の呼び方には、建築家、建築士、設計士、建築デザイナーなど色々な種類がありますが、皆さんは、その違いをご存知でしょうか?

実は有資格者しか名乗れない呼称(建築士)と、誰でも名乗れる呼称(それ以外)があって、名刺などの肩書きからある程度バックグラウンドを推察することもできます。

しかし、実際には曖昧に使い分けられている場面が多く、建築関係者以外にはあまりその差が認識されていないのではないでしょうか。

例えば、少し前に木村拓哉さんが主演のドラマ『Believe -君にかける橋-』(テレビ朝日系)で、木村さんの演じる役柄の職業が「建築士」から「設計者」に訂正されるという、ちょっと不思議な?面白い?ニュースがありました。「建築士」は建築物の設計を行う人なので、橋を設計するのはおかしいという声があったようです。

建築基準法では、建築物は「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」と定義されていますので、上記の批判はごもっともなのですが、例えば大手ゼネコンが建築工事も土木工事も請け負っている状況などを鑑みると、脚本家さんが間違えてしまうのも無理もないかな、と思ってしまいます。

以下の記事では私の個人的なイメージも交えながら、それぞれの呼び方の違いや、設計を依頼する際の注意点について書いてみようと思います。

国家資格としての「建築士」

一番分かりやすいのが「建築士」です。
これは国家資格としての名称で、一級建築士、二級建築士、木造建築士などの種類があります。それぞれ、試験の難易度や設計できる建物の種類・規模などに差がありますが、いずれも国土交通大臣や都道府県知事の免許を受ける必要があり、3年ごとの定期講習が義務付けられています。

補足:建築士事務所を開設して代表を務めることができる「管理建築士」や、一級建築士よりもさらに専門性の高い「設備一級建築士」「構造一級建築士」などの資格もあります。これらは、建築士資格を取得した後に、さらに所定年数の実務経験を積んで講習を受けることで取得できます。

また、建築士の試験には、受験するための条件が定められています。
例えば一級建築士の場合は、大学か専門学校で所定科目を履修するか、二級建築士を取得することが受験要件になっており、資格取得の前後で合計2~4年の実務経験を積んで、はじめて免許登録できます。
資格勉強と実務能力は別物ですが、「建築士」は少なくとも建築について一定期間勉強し、学科試験+製図試験をパスした人だということが分かります。

建築を通して"考える"「建築家」

上記の「建築士」以外は、実は誰でも好きに名乗ることができます。
その中で皆さんが一番聞き馴染みがあるのは「建築家」ではないでしょうか?

「建築家」は、建築を少し広い意味で捉えて、新しい空間構成やライフスタイルを社会に提示したり、建築が街並みや地域コミュニティに与える影響まで深く考えて提案する、というような文脈で使われることが多いイメージがあります。

また、建築分野で著名な方や、歴史的に名を残した巨匠を指すときにも使われる名称です。例えば、近代建築の三大巨匠(コルビュジエ、ミース、ライト)は「建築家」と呼ばれますが、彼らを「建築士」と呼ぶ人は殆どいないと思います。

余談ですが、以前に私が組織事務所で勤務していた時には、自分のことを「建築家」と自称するのは気恥ずかしいと感じていました。建築に対する考え方をストレートに設計に反映するには、少し物件の規模が大きすぎたのかもしれません。独立してからは、TVや雑誌の取材等で「建築家」として紹介して頂く機会も増えました。依然として気恥ずかしい気持ちもありますが、自身を鼓舞する意味も込めて肩書きを変えることはせず、代わりに心の中で「建築家」の名に恥じないような設計姿勢を心掛けよう!と毎回決意しています。

「建築士」と似て非なる「設計士」

「建築士」と似た呼び方として「設計士」も使われています。
こちらは、比較的大きな会社や組織の中で、役割分担を明示するために肩書として使われるイメージがあります。

(営業や経理を担当しているのではなく)設計部で設計業務に携わっているということが分かりやすい呼び方ですが、国家資格の有無は関係ありませんので、「建築士」の資格をまだ持っていない場合に使いやすい呼称です。

※資格を取得して免許登録するためには実務経験が必要になるため、新卒で働き始めてから数年間は必ず設計補助的なポジションで働くことになります。

ちょっと怪しい?「建築デザイナー」

この呼び方を文字通りに捉えれば、「建築をデザインする人」ですが、建築設計を専門に行っている人で「建築デザイナー」の呼称を使う人は少ない印象です。

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