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短編小説「止まる」
皆さんおはようございます😃
今日も元気なコースケです♪😚
さ、今日も短編小説を掲載しますよ〜😆↓
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「止まる」No,11/1000
玲奈(れな)は、小さなアパートの一室でベッドに横たわっていた。天井をじっと見つめるその目は、何かを探しているようで、何も見ていないようでもあった。
数日前、彼女は会社を辞めた。理由は聞かれても、自分でもはっきりとは答えられない。ただ、仕事も人間関係も、すべてが重くのしかかって、気が付けば動けなくなっていたのだ。
「止まるなら止まれ。」
心の中でそう自分に語りかけてみる。誰に言われたわけでもなく、自分自身の声だった。それは不思議と彼女を安心させる響きがあった。
会社を辞めた日、玲奈は少しだけ街を歩いた。夕方の風はどこか冷たく、ビルの隙間から見える空はすでに暮れかけていた。行き交う人々は忙しそうで、彼女はその中でぽつんと立ち尽くしていた。
「動かなきゃダメだよ、玲奈。」
ふと、昔の上司の言葉を思い出す。彼は玲奈にいつもそう言っていた。効率よく、スピーディーに、完璧に動けと。だが、その言葉が積み重なった結果が今の自分なのではないかと思うと、どうしても足が前に進まなかった。
翌朝、玲奈はふとカーテンを開けた。部屋に光が差し込む。久しぶりに見る朝日は、眩しくて少しだけ目を細めた。
「今日は何もしないでいよう。」
その決断は、彼女にとっては小さな反逆のようでもあり、解放でもあった。ソファに腰を落ち着けると、湯気の立つコーヒーを静かに口に運んだ。
玲奈は気づいた。自分が何かを「止める」ことが、こんなにも恐怖と安堵を同時に感じさせるのだと。止まることは怠惰の象徴のように思われがちだが、今の彼女にとっては必要な時間だった。
その夜、玲奈はベランダに出てみた。夜風が髪を撫で、遠くの街灯がぼんやりと輝いている。「夜の闇は優しく包んでくれる。」ふと詩のような言葉が浮かんだ。最近、頭の中を駆け巡るのはこうした断片的なフレーズばかりだった。
「納得いくまで、止まるのだ。」
それが今の自分に許された唯一の選択肢だと思えた。彼女は焦らないことに決めた。
数日後、玲奈は小さなノートを買った。何を書くわけでもない。ただ、頭に浮かぶ言葉や感じたことを丁寧に記していく。それは、誰に見せるためでもなく、自分だけの記録だった。
「丁寧に、生きる。」
その言葉の意味を、玲奈は少しずつ理解し始めていた。不器用でもいい。たどたどしくても構わない。止まることもまた、生きることの一部なのだと。
やがて、彼女の心の中に小さな光が灯り始める。まだ明確な形はないが、それは確かに夜明けを告げるものだった。玲奈は知っていた。夜は必ず明けると。
そして、いつか動き出すその日のために、今は止まっていればいい。納得いくまで、ただ止まるのだ。
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