
小杉湯が福島に行ってみた@中通り編
前回、喜多方に行ってエガワコントラクター、清水薬草店、会津若松に行って忠藤農業と回った私たちですが、今回は中通り編!岳温泉に泊まり、あのとろんたまを販売しているモモ・リンゴ農家のABE Fruits、稲作からクラフトビールまで扱うカトウファーム、糖度No.1のモモを作る古山果樹園を回りました。

見学先④ 小杉湯スタッフドはまり卵!とろんたまの佐藤物産(7月12日)

二日目の宿泊先は岳温泉という温泉街に泊まりました。岳温泉はこういう坂になっている特徴ある温泉街です。
小杉湯では今まで、岳温泉の素をジェット風呂に入れたり、佐藤物産が販売しているとろんたまという最高の温泉卵を販売していました。小杉湯スタッフはこのとろんたまが大好きで、生卵が食べれなかった人がとろんたまをきっかけに生卵の美味しさを知ったという伝説を持ち合わせます。


とろんたまというのは佐藤物産というお土産やさんで販売されている不思議な卵です。このとろんたまを生産している佐藤さんは、もともと料理人でありどうせなら普通の温泉卵ではなく、岳温泉の代名詞になりえるような素敵な温泉卵を制作しました。火加減をこだわりにこだわりぬいて、普通には作れないようなとろん感を出すように工夫をしているそうです。
また、ほかにも小杉湯ではおなじみのクラフトコーラやクラフトジンジャーも制作中で、試飲にということで飲ませていただきました。普通のものを追求していく佐藤さんだからこそ、かなりおいしいクラフトコーラを作れるのだと思います。

岳温泉とはかなり歴史のある温泉街で、平安時代からもともと朝日温泉(ゆい温泉)と呼ばれていました。しかし、戊辰戦争で幕府軍の拠点になることを恐れた西軍が焼き払ったことにより一度なくなってしまったという温泉です。その後何度も災害を乗り越えて、岳温泉は存続してきました。東日本大震災でも源泉が埋没したといったような被害を受けています。
岳温泉は普通透明な酸性泉なのですが、この日はたまたまミルキー風呂といって白く濁った特別な岳温泉を味わいました。岳温泉のお湯は源泉から樹脂パイプを40分間伝ってきます。岳温泉は非常に濃い温泉でそのまま放置すると、冷めた空気で固まった湯の花がパイプを塞いでしまいます。それを防ぐために、週一度、湯守と呼ばれる方がパイプにへばりついた湯の花をこそぎ落とし、落とされた白い湯の花が浴槽に流れてくるので、白くなるのです。
岳温泉は小杉湯のあつ湯(44度)よりも熱いという、珍しい温泉です。普通のぬるさじゃ満足いかない小杉湯マニアの皆様には、ぜひこの岳温泉で交互浴を楽しんでみてはいかがでしょう。


見学先⑤ タイの富裕層お気に入り?桃とりんごのABE Fruit(7月13日)

次の日の朝、私たちは岳温泉を出て、ABE Fruitの阿部さんのもとに伺いました。ABE Fruitは主に桃とりんごを生産していて、大きな農園を所有していました。大きな農園を管理するために、ルンバのような全自動草刈り機を二台導入し、効率よく農業を進めています。(写真下の小さい白い機械です)

阿部さんは二代目ですぐに就農はせずに、会社員をやっていました。昔は怖かったけど年々老いていく父を見て継いだといいます。震災が来て、大変な影響を受けました。1年目は風評被害でまったく桃が売れず、売れたとしてもかなりの安価でした。山形に移住しようか考え、企画書まで書いたこともあったそうです。震災の2年後からフルーツが売れるようになり、まだ福島でもできると信じた阿部さんはこの地で頑張っていくことを決意しました。
「食べてくれない人に食べてくれるように宣伝するんじゃなくて、好きになって食べてくれる人を増やすほうがいいなって思って。完璧は無理だけど、7割の人がいいって言ってくれるのならそれでいい」


私は阿部さんの話を聞き「木になる果物をきちんと育てるのは本当に大変なことだなあ」と思わされました。リンゴもモモも、木になる実をすべて出荷できるわけではなく、1割のエリートのみが出荷されます。他は選別され、美味しくなれそうな実に栄養を送ります。
剪定されそうな青いリンゴをBUKUBUKUは食べました。味は少し薄かったけど普通においしかったです。青いままの果物を食べたら、木村さんにまたしても引かれました。

阿部さんは地元の福島や東京だけではなく、海外に目を向けている農家でした。タイやマレーシア、ドイツの富裕層は、日本で作られた質の良い果物を大変気に入って食べてくれると語ります。海外でも福島ブランドを認められる日も近いと思います。
「福島って何したって二位とかで。リンゴといったら青森だし、桃といった山梨。一個ぐらい突き抜けたい。なんでも作れるのがふくしまブランドなんだけど。少しでも良くなるといいな」
私の祖母は福島に縁もゆかりもありませんが、昔から福島の桃が好きです。福島の桃を食べたことがない方は是非このおいしさを知っていただきたいです。


見学先⑥ やりたいことは何でもやるぞ!カトウファーム

次に向かったのはカトウファームを営む農家・加藤さんです。中通りでは、阿部さんと同じように果樹園を営む農家さんが多いのですが、加藤さんは珍しく米を生産している農家さんです。広い敷地を持ち、米の栽培から精米まで自前でできるように広い工場を持っています。
「次世代の人がやりやすいように、一人で米を出荷できる状態にするの」

また広大なとうきび畑も見せてくれました。でもこれは出荷はせず、あくまでも実験のために設置された農場でした。やりたいという社員の声にこたえ、作ったといいます。
「社員がやりたいって言ったからさ。頑張っているよ」


広い土地を持ち収入源を確保したうえで、新しいことにどんどんチャレンジしていく加藤さん。やりたいことのもう一つとして、クラフトビールも自分で始めました。奥さんで専務の絵美さんはこう語っています。
「私も夫もコミュニケーションがあんまり好きではなく、農家という仕事で誰とも会わず作業ができることに喜びを感じるような人だったんです。でも、東の食の会さんとかが周りの農家さんと団結して一生懸命売り込む姿を見て、自分たちも何か地元に対して、福島に対して何ができるのかなって考え始めました。その結果がこのクラフトビールで、勉強会に足を運び始めました。こういうのやりはじめたのは最近だけど、楽しいなって思います」
また、カトウファームの広大な敷地を使って、クラフトビールを外で飲めるようにしたいと加藤さんは語っています。音楽ライブにも携わったり、欲をどんどんかなえていく凄腕の農家さんでした!



見学先⑦ 論理を極め50万で売れた桃!古山果樹園
次に訪れたのは、古山果樹園というこれまたモモ農家さんでした。ABE Fruitは社員さんを雇って広大な敷地をしっかり管理していくタイプなのに対して、こちらの古山果樹園は家族経営でやっていくタイプ。しかし、一つ決定的な武器があります。
「糖度で突き抜ける。自分が育てた桃は誰よりもおいしい自信があるから」

もともと古山さんは理系の学生で、エンジニアとして社会に出ました。しかしサラリーマンで人の言うことを素直に聞いてしっかり努力しても、努力のすべてを結果に反映させることは難しいし、評価を得るのも難しい。そういう理由で、実家のモモ農家を継ぎ、糖度日本一・究極の桃を作るためにたくさん勉強を重ね、研究しました。
「地面に撒いているのはウニ。陸の人間と海の人間は同じことで悩んでいる」

しかし、継いだ翌年震災が来てしまい、まったく桃が売れなくなってしまいました。福島の風評被害は本当に酷く、もう農業でやっていけないと絶望した農家がこの世を去っていったといいます。でも古山さんはポジティブに捉え、福島のブランドが売れていくように尽力しました。
「福島は震災があったから成長した。震災があったからここまで来れた」
そして果てしない完璧な努力を重ね、一般的に「12度あればいいほう」と言われている桃の糖度を、最高の状態で30度程度まで引き出したこともあるし、1個の桃を50万で売りさばいたこともあるそうです。すべては福島のももが良いと言われるために。

「人生は競争です。ここには20度の桃があります。何円で売れたでしょうか?BUKUBUKUメンバーの中のうち正解の数値に近かった四人しか食べれません」
畑を見終わった私たちに、古山さんはそう問いかけました。新宿伊勢丹で売られているような桃は果たして何円で仕入れられたのでしょうか?正解はなんと5万円。桃一個5万円とは、生きている次元が違う。


BUKUBUKU内で競った結果、私は三番目に近い数字を出し、桃を無事に食べることができました。糖度が高いとはいえべらぼうに甘いわけではなく、上品な、品のある甘さでした。また、桃は皮の周りのほうが栄養があるということで、皮も含めて食べたところ、本当にみずみずしくて大変おいしかったです。
中通りを回って全体的に感じたのは、震災・原発事故という問題があったとしてもポジティブに受け止めて邁進できる、人間の力強さでした。震災・原発問題は間違いなくショッキングで、人が亡くなり、残された人を生きづらくする負のイベントだったはず。実際に絶望した人もいるのにも関わらず、それをひっくり返すほどのユーモアで乗り切ろうとしたこと、本当に尊敬するなと感じさせられました。震災をここまで自分の人生上の物語に置き換え、奮闘する力にすることが可能である。私はつらいときに、彼らのことを思い出して、苦境のとらえ方を変えてみようと思いました。
(※事前のPCR検査にて陰性を確認した上参加しています。)
(文責:ジェット石田、写真・イラスト:松田大成)
食べ物ログ

昼食のソースかつ丼。1000円で山盛りいっぱい、おなかいっぱい。

道の駅で買ったソフトクリーム。福島では農家さんからももらうし、三食出ます。1週間分の食事食べた気がします。木村さんはこう言います。
「いやほんとアスパラの葉っぱ食べたり、青いリンゴ食べるし。小杉湯の子たちはなんでも好奇心持って食べるよね。都会っ子なのに、いやだからこそ?」

食べ過ぎて食い倒れました。
参考
・岳温泉(https://www.dakeonsen.or.jp/)
・佐藤物産(https://omiyage-sato.com/#/)
・ABEFRUITS(https://www.abe-fruit.com/)
・カトウファーム(http://katofarm-f.jp/)
・古山果樹園(https://furukaju.stores.jp/)