読書ときどき音楽も#149

「大草原の小さな町」ローラ・インガルス・ワイルダー/こだまともこ、渡辺南都子:訳(講談社)

 「大草原の小さな家」シリーズもいよいよ佳境の7冊目。自分が読んだバージョンでは前作にあたる「長い冬」をカットしているためかところどころつじつまが合わなさそうな箇所に補足説明や説明調のセリフが出てくるので、どうして翻訳しないのかはやっぱり謎である。ローラが成長したせいもあってかのどかな農業や狩猟のシーンはなくなり、リアルな労働による賃金の稼ぎ方や学校生活(いわゆる“学級崩壊”がこんな時代から存在しているのにはびっくりした)。そして家族以外の登場人物がじわじわと侵食していく様子が実にリアル。確かにこれだと実年齢10歳差は引いてしまうから、相手の年齢をはっきりさせないのは正しい判断だなと思った。
 その割には他の作品ではカップルの年齢差が14歳とはっきり名言しているものもあるが、それはヒロインがいわゆる成人している年齢でかつ相手と思考が対等だから気にならなかったけれど、ここはローラが純粋無垢な15歳というのが…大人になってから児童文学の名著を読むのも余計なバイアスがかかるから子どもの頃に読むのがふさわしいわけだと納得。しかし当時の庶民階級は東西問わず現金が必要になってからの時代はとにかく働かなきゃいけないということだけは良くわかった。

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