読書ときどき音楽も#133
「ジョン、全裸同盟へ行く」北原尚彦(早川書房)※電子版
昨年、Kindle書籍半額セールをきっかけに「シャーロック・ホームズ」シリーズを読破したことで一番良かったことは、「オマージュやパロディがより面白くなること」であった。それは、好きな作品である「力士探偵シャーロック山」をシリーズ未読と読破した後では、まっさらな状態でももちろん面白いけれど、「こんなところを原作通りにやるなよ」と突っ込みができる分面白さに深みが出てきたのを実感した。
この作品も当然セール期間でダウンロードしたものであるが、多分“正典”を読むことをしていなかったら買うことは買っただろうけれど読むのはもっと先になったと多分思っている。著者は有名シャーロキアンなので原作の細かいところまで知り尽くしている。個人的にはタイトルである作品が秀逸で、まず「どの作品のパロディ」なのかがすぐに分かり、かつそれをヴィクトリアン時代から現代にアップデートしているところも面白く(当然スマホを駆使して調査している)、また作品を読んでいると細かいところにやはりくすっと来てしまう。表題作の依頼人の苗字は別の作品に出てくる有名なものだし、少々ネタバレ気味になってしまうが思わぬところで事件同士がつながっているのも本当に面白かった。続編があるのなら読んでいかねばとも思うのであった。
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