読書ときどき音楽も#152

「ダキョウソウ」洛田二十日(光文社)

 書き出し小説大賞で初めて文章に触れ、デビュー作「ずっと喪」も読んで面白かった作者の新作を購入。すでにタイトルからして「?」の期待でワクワクする。やはり“書き出し”の奇抜さは群を抜いていて、1本目の「ソファの隙間」から作品に入り込んでしまう。何が面白いのかと言えば、状況は容易に想像できるのに安易に実写化は無理だろうなと思えるところ、だと感じている。タイトルにもなっている「ダキョウソウ」はそのネーミングでなければ感動的な話にもなるのに…反対にタイトル・話も「???」となる「大崎駅でマッチョを追い返す」。一度読んだだけでは自分の理解に問題があると思って何度か読み返してみたけれどやはり意味は分からない。他の収録作も読んでみると、この現実にありそうな、やっぱりなさそうな不思議な読後感はやっぱりくせになる。これからも追いかけていきたい作家のひとりである。川が転校したりすべり台が懐いてもいいのである。もう一度最初から読み返そう。

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