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諸行無常
カニ雑炊に記事で興奮のあまり【ずわいがに】を【ずらいがに】を書いてしまい、外国の観光客みたいになってしまったことを反省しております。「OH!ズライガニ!!ファンタスティック!」みたいな。#ねずみさんご指摘ありがとう!
こんにちは、コッシーです。
さて、普段僕はお昼ご飯を施設で食べています。自慢ではありませんが、うちの食事は厨房スタッフが全て自前で作っており、なかなかの好評をいただいています。僕も大好きで、たまにTwitterで#施設飯でツイートしたりしておりますので、よろしければ検索してみてください。
そんな施設飯大好き人間の僕もたまには施設飯以外も食べたくなります。決して飽きてしまったとかそんな事はなく、ほら外の風を浴びたくなる時ってあるじゃないですか。刺激欲しくなる時ってあると思うんですよ。まぁ簡単に言うとラーメンが無性に食べたくなる時があるんです。
2カ月に1回くらいですが、いつも行くラーメン屋さんがあります。
そこのラーメン屋は老夫婦が二人で営んでおり、もうかれこれ10年以上通っています。
黙々と調理をする寡黙なお父さんと愛想が良く優しく声をかけてくれるお母さんという、ドラマや漫画などに登場する人情味溢れるまさに昔ながらのラーメン屋さんで、味は失礼ながら正直普通なのですが心が満たされるというか、たまに無性に食べたくなるんです。
先日も僕の中でラーメン熱が高まりまして、施設のお昼ご飯を断りラーメン屋さんへ行きました。
「…らっしゃい」「いらっしゃいませーー!」
いつもと変わらないお二人が僕を出迎えてくれます。少し遅めにお店に行ったせいかお客さんは僕1人でした。
「ラーメンライスで」
ここ数年ラーメンライスをずっと変わらずに注文しています。ここのラーメンは昔ながらの細打ち麺の中華そばで鳥ガラベースの醤油スープと相性は抜群です。自家製のチャーシュー数枚とメンマとナルトが乗っており、【ザ中華そば】と言える代物です。
「おまちどうさま」
運ばれてきたラーメンを見て、「おや?」と首を傾げました。何だかいつもよりもチャーシューが多いように思えます。
チャーシュー麺と間違えたのかなと思いましたが、まぁいいかと気にせず食べました。いつもと変わらない味で本当に安心します。
いつもより多いチャーシューも問題なくペロリと平らげ、ご飯も一粒残らずキレイ食べました。
「お勘定お願いします」
食べ終わったら長居は無用です。ここのラーメンライスは昔からずっとお値段据え置きの600円です。500円玉と100円玉それぞれ1枚ずつ握りすぐにでも渡せるように準備は万端です。するとお母さんから思ってもみない事を言われました。
「お代は結構です」
「え?」
「今日のお代は結構ですよ」
意味が分かりません。ラーメン屋でラーメンを食べたのに、お代はいらないなんて何がどうなっているのか意味が分かりません。
「いやいや、そんなわけにはいきませんよ!お支払いします!」
「本当に今日は大丈夫です。実は年内でお店を畳むことにしました。長い間本当にご贔屓にしてくださいましてありがとうございます。今日はそのお礼だと思ってください。」
驚きました。たしかに大繁盛とは言えないかもしれませんが、十分なお客さんは来てたように感じます。特に僕のような長年通っている常連が多く、まさか閉店するとは思いもよりませんでした。
「息子から一緒に暮らそうって言ってもらってね。体も言う事を聞かなくなってきたし、潮時かなと思いましてね。」
と言うお母さんはホッとしたような顔をしていました。お父さんは何も言いませんでしたが、優し気な表情をしていました。
「こちらこそ今までありがとうございました。ここのラーメンが本当に大好きでした。どうかお元気で」
そう伝えお代の方はお言葉に甘えました。
馴染みの店が無くなる事に対してもちろん寂しい気持ちはありましたが、当たり前ですがお店が未来永劫続く事はありません。どこかでやめる時は必ず来ます。
お客さんが来なくなって借金してまで店を続けてどうにもこうにも首が回らなくなって潰れたり、身体を壊してしまいやめざるを得なくなったりと、そういうやめ方よりも、変な言い方ですが遥かに良いやめ方だと思います。
「潮時かな」
正にその通りだと思いました。残念な気持ちはありますが、それよりも息子さんと暮らせて良かったという清々しい気持ちになりました。お二人の表情からもうかがい知れました。
『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり』
平家の栄華と没落を描いた平家物語の冒頭はこのように始まります。
この世の一切のものは続かないという風に訳されますが、本当にその通りだと思います。この世界に永遠に続くものなんてありません。
当たり前に在るように思っていますが、実はそうではないということをラーメン屋さんに教えてもらったような気がします。
ただあのラーメンがもう食べれらないと思うとそれはやっぱり悲しいので、ダメ元で今年中にもう1回お店に行ってみようと思います。もちろんその時には精一杯の感謝の気持ちを持って600円払いたいと思います。
それではまた。
コッシー