手紙にはこう書かれていた。
彦星は織姫からの手紙を机の引き出しへとそっとしまうと代わりに新しい便箋を取り出した。
「3年連続の雨か、ついてないな」
そう呟いて彦星は便箋に筆を走らせる。
彦星が手紙を投函した数日後の7月7日。彦星はストーカー容疑で逮捕された。被害を訴えたのが織姫だった。織姫は数年前から彦星のストーカー行為に悩まされていた。織姫は彦星に対して恋愛感情はなく友人の一人だと思っていたが、3年前に彦星から「今日は帰したくない」と言われ怖くなりそれ以来会っていなかった。2年前に「会えない」と手紙を送ったあとは自分からは連絡を取っていなかった。
しかし彦星からは毎年手紙が届き、ついに今年は「会いに行く」と書かれており身の危険を感じたことから警察に被害届を出すに至ったとのことだった。彦星は天の川を渡った後に待ち構えていた警察に確保され結局織姫には会えなかった。
彦星は容疑を否認しているとのこと。
その日の七夕は十数年ぶりに雨が降っていた。
おしまい(1077文字)
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