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秘密の花園の秘め事

病院受診の際に「痛い!痛い!」と叫んでいた入居者が、帰りの車で明日のご飯がエビの天ぷらだと知った時に「やった!エビ天嬉しい!!!」と今日1番大きな声で叫んだのを見て天ぷらって偉大だなぁと思いました。

こんにちは、コッシーです。

今日は日曜日ということで、お休みの方も多いと思います。とてつもなくくだらないお話をいたしますが、「ああ、こいつは今日も元気にバカだなぁ」とゆる~い気持ちで読んでいただけると幸いです。


さて、うちの入居施設には宿直室が女性用と男性用の二つあります。と言ってもここ数年は女性職員のみで宿直を回している関係から男性用の宿直室は物置化しております。

女性用の宿直室になりますので、もちろん男子禁制であり、いくら統括責任者の僕であってもそこは皆と同じで入室禁止となっています。掃除なども女性スタッフ達で行っておりますので、僕は施設開設前に入ったきりでオープンしてからは一度も入室していないと思います。

そんな男が立ち入ることのできないシークレットゾーン、秘密の花園に足を踏み入れる出来事がありました。


先日の話です。

数名の女性スタッフが集まり何やら困った様子で話をしていました。詳しく伺うとどうやら宿直室の換気扇から埃臭い匂いがするとのことでした。

掃除をしようにも施設には低い脚立しかないようで、思いっきり腕を伸ばさないと換気扇に届かずかなりやりにくいらしく、どうしたものかと話していました。

「僕がやろうか?」

スタッフが困っているのに手を差し伸べないのは責任者失格です。幸い僕なら女性スタッフ達より身長も高く施設にある脚立に乗れば十分換気扇に手が届き掃除も出来ると思います。

「いいんですか!ありがとうございます!」

僕が掃除を買って出ると女性スタッフ達はとても嬉しそうでした。人には親切にするべきです。好感度ってこうやって上がっていくと思います。


早速スタッフと一緒に脚立を持って宿直室に行きました。

開設以来初めて入る宿直室は女性専用だけあってかとてもキレイに整頓されています。気にしていた埃臭い匂いもほとんど感じられず、逆にフローラルな良い香りがしました。

「あそこです」そうスタッフが換気扇を指します。

脚立を昇って換気扇に近づくと、なるほど確かに埃臭が漂っています。換気扇の傘を外すと結構な量の埃がプロペラに絡みついていました。これは思っていたよりも掃除に時間がかかりそうです。

「少し時間がかかると思うから、あとはやっておくよ」

「すみません。ではよろしくお願いします」

スタッフを退室させて一人黙々とプロペラの埃を取りました。A型の僕はこういうときに妙なこだわりをみせてしまいます。ある程度では済ますことが出来ずしっかりと埃を取り除きたくなります。

せっせせっせと一心不乱に埃を取り換気扇についていた埃をほとんど取り終えた時でした。ふと脚立の上からベッドの枕元に何かが落ちているのが見えました。

それは黄色いハンドタオルでした。間違いなくハンドタオルで誰がどう見ても紛うことなきハンドタオルでした。ハンドタオルの中のハンドタオルでした。

しかしその時の僕は、自分が普段立ち入れない秘密の空間にいることで妙な罪悪感と背徳感から変に意識をしてしまい、そのハンドタオルが「もしかしてハンドタオルではないのかもしれない…」と思ってしまいました。

いや本当にどう見てもハンドタオルなんですけど、なんなら大きさや形までしっかりと分かるほどハンドタオルなんですけど、人は思い込んでしまうと正常な判断が出来なくなります。

ハンドタオルじゃないとしたら一体何だと思っているんだという話ですが、そこはもう皆さんのご想像にお任せしますが、僕の頭の中では【ハンドタオルなのか?それとも何かか?】という攻防が繰り広げられており、確認しないと気が済まなくなってきました。100%ハンドタオルだと分かっているのに。


僕は脚立から音を立てず降りると、足音を押し殺しベッド脇に行きました。そして枕元の【それ】を右手でそっと拾い上げました。


ハンドタオルでした。黄色のハンドタオルでした。ハンドタオル以外の何物でもありませんでした。


だよな、そう呟いてハンドタオルと元の場所に戻すと、「終わりましたー?」と女性スタッフが宿直室に入ってきました。

「うん、今終わったところ。キレイになったと思うよ」

「うん、全然臭いませんね!ありがとうございます!」

ハンドタオルの事をなんとなく言い出せずスタッフと一緒に宿直室から出ました。スタッフが部屋に鍵をガチャリとかけます。その瞬間、僕もハンドタオルの記憶に鍵をガチャリとかけました。


秘密の花園での秘め事。

僕だけの秘密の出来事。

どうか皆さんの記憶の片隅だけに留めといてください。


それでは良い日曜日を。

コッシー

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