この恩は絶対に返す
あんこ系のお歳暮を贈ってくださる入居者の家族にどうやったらあんこ嫌いを伝えられるか真剣に悩んでおります。
こんにちは、コッシーです。
さて、介護事業は慢性的な人材不足に悩まされております。うちの事業所も決して潤沢にスタッフがいるわけではなく、何とかやり繰りをしております。
介護の方は何とかなっていますが、実は深刻に人材が不足しているのが厨房スタッフです。
元々余剰人員なんていなかったにも関わらず先月家庭の事情と体調不良で2人も辞めてしまいました。もちろんすぐに募集はかけたものの、なかなか反応が悪く人員の補充が出来ていない状況で、既存のスタッフにはかなりの負担をかけており心苦しく思っていました。
そして事故が起こる時はそんなギリギリの状態な時です。
厨房の女性スタッフが包丁で指を切ってしまいました。かなり深く切ってしまったようですぐに病院に行きました。
何針か縫いましたがしばらく経てば元に戻るとのことでした。しかし医者からは水仕事や指に圧をかけるのはしばらく控えるように言われたとのことでした。
女性スタッフは「大丈夫。大丈夫。指の1本くらい使わなくても仕事できるから」と笑顔で言ってくれましたが、大丈夫なはずありません。ここで無理をさせてしまうと完治を遅らせてしまう可能性があります。
「いや休みましょう。先生からOKが出るまでは療養してください。シフトはこちらで何とかします。」
そうスタッフさんに告げ、しばらく休んでもらうことにしました。
大丈夫とは言ったものの今でさえギリギリの状態で働いている他のスタッフにこれ以上無理はさせれません。かと言ってすぐに新規採用も出来ません。
どうしたものか一瞬悩みましたが、すぐに答えが出ました。
僕がやれば良いのです。
幸い僕は決まった時間にやる仕事が少なく比較的自由に動けます。仕事はたくさんありますが、別に夜や朝にやれば良いだけです。厨房業務に関してはほぼ素人ですが、こう見えて物覚えは良い方ですし、やれることは何かあるはずです。
早速厨房のスタッフを集めて話をしました。
「・・・というわけで、○○さんにはしばらく休んでもらうことにしました。○○さんのシフトには僕が入ります。最初は足でまといかもしれませんがすぐ仕事を覚えます。何でもやるので何でも言ってください。よろしくお願いします。以上です。」
そう言って厨房を後にしました。
事務所でしばらく仕事を片付けていると、厨房スタッフのリーダーがお皿を持って僕のところにきました。
「これ試作品だけど、食べてみてよ」
と渡されたお皿を見ると揚げパンが乗っていました。
「ああ、ありがとう。あとで食べさせてもらうわ」とリーダーに言うとリーダーから思ってもみなかった事を言われました。
「あれからみんなで話合ったんだけどさ。○○さんの穴は俺らで何とかするわ。」
「え?でもみんなもうギリギリの状態でしょ?僕なら大丈夫だよ。」
「いやあんたにそこまでやってもらったら、俺ら終わりだよ。もうちょっとくらいなら踏ん張れるから。それにコッシーさんだと逆に足でまといだからな(笑)」
本当にみんないっぱいいっぱいで働いてくれているのに、こんな言葉をかけてもらえるなんて思ってもいなかった僕は感動のあまり涙が出そうになりましたが、泣いても状況は変わりません。みんなが頑張ってくれる分僕にはやるべき事があります。
「分かった。ありがとう。でも無理だけはしないようにね」そう僕が言うと、リーダーは「おう。指切りたくないもんな(笑)」と言って厨房に戻っていきました。
僕はすぐに人材募集を拡大するように手配をしました。また出来るだけ業務負担を減らせるよう厨房スタッフ以外で洗い物を手伝えるようにも手配しました。
今回のスタッフの気持ちは本当に嬉しくて、僕はめちゃくちゃ幸せな責任者だと思います。
しかしスタッフの気持ちに甘えてばかりではいけません。この恩は倍…いや3倍にして返したいと思います。
スタッフが作った試作品の揚げパンを食べると中には僕の嫌いなあんこがびっしりと入っていました。久しぶりに食べるあんこはやっぱり美味しくなくあまりの不味さに涙が止まりませんでした。
現場からは以上です。それではまた。
コッシー