【創作】星の配達員
流れ星のお仕事は星から星へと荷物を配達することでした。例えば隕石の欠片だったり、月の砂だったりといろんなモノを流れ星の配達員たちは運ぶのでした。
配達の途中でごく稀に地上にいる者の”願い”を感じることがありました。流れ星の配達員が星から星へと渡る瞬間、ふいに頭の中に強くて真っすぐな想いが伝わることがあります。そんな時配達員はその想いを贈り主へ届けるのでした。
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ある日のことです。
流れ星の配達員リュウはいつものように仕事をしていました。その日の荷物は土星の環の結晶を水星へと運ぶことでした。土星で結晶を受け取ったリュウに依頼主は「22時までに届けてくれるかい」と尋ねました。リュウは自分の配達スピードに自信をもっていました。「お安い御用さ」そう言ってリュウは結晶をリュックに入れると瞬く間に宇宙へと駆けていきました。
土星から木星、木星から火星へとリュウは順調に駆けていきました。チラリと時計に目をやると22時までまだまだ余裕がありました。
「今日の仕事は楽勝だったなぁ」そう呟いてリュウが火星から地球へと渡った時でした。リュウの頭の中にあるメッセージが突然響いたのです。
”ママの病気が治りますように”
リュウはその場に立ち止まり目を瞑ってメッセージに耳を澄ましました。
”神様、お願いします。ママの病気を治してください”
リュウが声の方に目を向けると一人の少女が星空へ両手を組み願っているのが見えました。少女は涙を流しながら祈りを捧げています。リュウは頭の中に響いた少女の想いを心の目で見つめました。どうやら少女の母親は重い病にかかり遠く離れた病院で治療をしているようでした。少女は毎日ここで母親の身を案じていたのでした。リュウは再び時計を見ました。22時まではまだ少し時間がありました。
「よおし、待ってろよ」
リュウは少女の想いを確かめると、水星とは逆方向へと駆けだしました。さきほどよりもさらに速いスピードでグングンと進んでいきます。しばらく進むとある病院に着きました。リュウは病室で眠る女性へ少女の想いを届けました。女性の目から涙がこぼれましたが、女性はとても穏やかな顔で眠っていました。リュウはその様子を優しい眼差しで眺めていました。
「いけね、遅れちゃう!」
時計を見てリュウは水星の方へ慌てて駆けていきました。その瞬間、夜空に流れ星が光りました。
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今日も宇宙では流れ星の配達員がせっせと荷物を運んでいます。夜空にキラリと流れる星に願いを込めたら、配達員があなたの想いを届けてくれるかもしれません。
おしまい
【追記】
なんとなんと!ぷにょさんからとっても素敵なファンアートをいただきました!!
ぷにょさん!本当にありがとうございました!!
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
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