![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146236220/rectangle_large_type_2_dad99707fb529be7ab64e282793a6fb1.png?width=1200)
【コぐるみ創作バトル!】気の若いナイスじいさん~後編~
この創作は【コぐるみ創作バトル!】の作品になります。
※詳しくは下記をご覧ください。
■前編はコチラ
■着ぐるみのイラストはコチラ
は?大沢たかお?え?王騎将軍?
……いや吉沢亮の要素ゼロやん!!前編であれだけ丁寧に振っておいたのに全て白紙やん!!後編で温めていた【オレオレ詐欺の犯人に「日和ってるヤツいる?いねぇよなぁ!」と叫ぶ展開】が全部台無しやん!!
鬼か!いや鬼ぐるみか!
#上手いこと言ってる場合か
鬼ぐるみが見事僕の構想をぶち壊してきました。エスパーかよ!と思うくらい僕の心理を完全に読み切っておりました。どうやら僕が考えていた(書いていた)後編は全く使えないようです。でもこれぞ創作バトル!望むところです。
ってことで後編です。
*******
警察署での一件から了一は”吉沢亮”が気になっていた。息子の隆司に頼んで”吉沢亮”が出演している作品のDVDをいくつか送ってもらっていた。自分の年齢でどこまで理解できるか不安はあったが、実際に観てみるとそれほど違和感を感じることはなかった。むしろ面白いと思える作品もいくつかあった。
その中で了一が知っていた作品が一つだけあった。それが【キングダム】だった。キングダムは古代中国の戦乱を描いた映画で、まだ妻の君江が生きていた頃、何度か了一に薦めてきた作品だった。好きな俳優が出ているかとかで、目を輝かせて楽しそうに観ている君江の姿が了一の記憶に残っていた。
寡黙な了一とは対象的に君江は明るくてよく喋る女性だった。ドラマや映画が好きだった君江はその感想をよく了一に話していた。若者向けの作品もたくさん観ていた君江の話のほとんどを了一は分からなかった。それでも了一は適当に相槌を打ちながら君江の話を聞くのが、好きだった。それは了一にとってかけがえのない時間だった。
「あなたも気を若く持たないと!ナイスなおばあちゃんになりたいじゃない」
そう言って笑っている君江の顔を思い浮かべると了一の胸はギュッと苦しくなった。3年前、君江を病気で亡くしてから了一は何をやるにもやる気が失せてしまった。かろうじて君江から頼まれた犬の竜太の世話はしているが、他のことには無頓着になっていた。このことを君江が知ったら何て言われるのだろうか、「まだ老け込む歳じゃないわよ!」と怒られるのだろうか。さっきまで苦しかった胸に今度はぽっかりと穴が空いたように感じていた。
ふと君江が好きな俳優が誰だったかを了一は気になった。”吉沢亮”ではないことは分かっていたが、どの俳優だったかどうしても思い出せない。仕方なく隆司にメールを送る。
母さんの好きだった俳優を覚えてるか キングダムに出ていると思う
最近、”吉沢亮”のことで隆司にはメールを頻繁に送っていた。何でもかんでも隆司に頼るのは申し訳ないと思ったが、どうしても君江の好きだった俳優を知りたかった。
突然どうかした?確か大沢たかおさんだったと思うよ。キングダムの王騎将軍だね
「ありがとう」と隆司に返信をして了一はすぐに【キングダム】のDVDを再生する。王騎将軍を見逃すまいと食い入るように画面を見つめた。
映画が始まってまもなく王騎将軍は登場した。画面越しながら威風堂々としたその姿から了一は目が離せなくなった。大軍を従え馬上からしっかりと前方を見据えて進む王騎将軍を見ていると、年齢を理由にいろんなことを諦めている自分が情けなく思った。
「気を若く持たないと……か……」
了一は君江の言葉を思い出していた。そして何かを決心した了一は立ち上がって財布を掴むとある場所へと向かったのだった。
◆
隆司は娘の円香を乗せて了一の家へと向かっていた。
お前たちに見せたいものがある 時間があれば遊びにこないか
数日前に了一からメールをもらっていた。了一から「遊びに来い」というのはとても珍しかった。よほど隆司たちに見せたいものがあるのだろう。
最近の了一は”吉沢亮”やキングダムに興味を持ったりと、以前では考えられないくらい元気になった。母の君江が亡くなってからずっと塞ぎがちな了一を隆司は心配していた。一緒に暮らすべきかを悩んでいたほどだった。
了一に何があったかは分からない。けれど楽しそうな姿に隆司は嬉しく思っていた。
駐車場に車を停めて、円香の手を引いて了一の家へと歩いて向かう。幼い頃、自分も了一と手を繋いで歩いたことを思い出して少し懐かしくなる。
「あー!じいじと竜ちゃんだー!」
円香が前方を指さして大きな声を出した。円香の指の先を見て隆司は目を見張った。そこにはリードに竜太を繋いで散歩をしている了一がいた。ただその姿がまるで三国志に出てくるような出で立ちで、甲冑のようなものを身に纏っていた。犬の竜太にも同じような服を着せていた。
「ちょっと父さん!何その格好は!?」
慌てふためく隆司をよそに了一は落ち着いた声で言った。
「手に入れるのに苦労したんだぞ。近所の服屋さんに頼んで方々を当たって用意してもらったんだ。どうだ、王騎将軍みたいだろう」
堂々とした態度で了一は隆司に言った。茫然とする隆司の横から「じいじカッコいい!!竜ちゃんも可愛い!!」と円香が叫んだ。
「だろう!ナイスじいじだろう」
そう言って了一は「ンォフゥッ」と高らかに笑った。その姿が一瞬だけ王騎将軍に見えて隆司も思わず笑った。
了一と隆司と円香の笑い声が空にこだまする。空の上で君江も笑っているように了一は感じていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146511640/picture_pc_703b9f95272c479c6bac034525c20f86.png?width=1200)
おしまい
*******
シロクロ様、いかがでしたでしょうか。
これがコぐるみの「気の若いナイスじいさん」です。
それにても、着ぐるみよ。無茶ぶりが過ぎるやろ!!
でも楽しかったよー😊
また次回をお楽しみくださいねー!!
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146511942/picture_pc_7d5550d5baa4b28b79711bcdd2020750.png?width=1200)