【本社の人】では無くなった日
今職場で1番揉めているのが、クリスマス特別メニューを24日と25日どっちにするかです。#平和な職場
こんにちは、コッシーです。
さて、本日11月11日は介護の日という事で、やっぱり介護に関わる身としては介護にまつわる良い話をしたいわけで、「やっぱコッシーさんはすげえや!」と思われたいので、何かいい話はないかなーと考えましたが、全く思いつきませんでした。#コッシーさんすごくないや!
仕方ないので、僕が今の会社に転職して初めて介護事業に携わったお話をしたいと思います。ご興味ないかもしれませんが、いい介護はいい心からという事で大らかな心で読んでいただければ幸いです。
今から13年前の2007年8月に僕は転職して今の会社に入社しました。
僕は前職でコンサル会社に勤めており、医療機関専門の部隊に所属しておりました。その時の僕のお客様が今の会社の協力医療機関であり、そこの事務長さんから紹介を受けて今の会社に入社をしました。
ヘッドハンティングっぽく見えますが、単純な欠員補充です。#ハンティングされたい
当時のうちの会社は今と違いデイサービスと福祉用具貸与事業所の2つだけを運営しており、規模も今よりも小さくてこじんまりとした会社でした。
入社時の僕の配属は本社の経営企画部でしたが、経営企画とは名ばかりでとにかく事務全般の仕事が僕の役割でした。現場には月に1,2回顔を出す程度でほぼデスクワークでした。現場から見ると僕はたまにくる本社の人間であり、実際現場からは名前ではなく【本社の人】と呼ばれていました。
その頃のデイサービスの経営状況はガタガタであり、よくそんな状態で運営できてたなと思うくらいの大赤字でした。一応経営企画部に所属しておりまして、いろいろなデータは全て僕のところに集約をしていましたので、僕自身もデイサービスの収支には愕然としていました。
利用者数が年々低下しているにも関わらず人件費は年々増加しており、それに加えて前年の介護報酬引き下げの影響から、復活する兆しが全く見えませんでした。
もう閉鎖するしかないかな…なんて考えていたある日のことです。
立ち寄ったデイサービスでたまたま利用者の誕生日会が行われていました。初めて見る誕生日会に物珍しさからしばらく眺めていました。
普段は用事を済ませたらすぐに帰る【本社の人】が珍しく誕生日会を眺めていたからか、近くにいたスタッフさんがいろいろと教えてくれました。
どうやら利用者はその当時のうちのデイサービスで最高齢の方であり、なんと御年104歳になられるとのことでした。
「へぇーすごいですね」と104という数字に全然ピンと来なかったので、薄いリアクションをしたと思います。
誕生日会を進行していたスタッフが「ここで今日の主役の〇〇さんからお言葉をいただきたいと思います。」そう言って利用者にマイクを渡しました。
104歳の利用者は手をプルプルさせながらマイクを握りました。「104歳って声出るのかな?」そんな失礼な事を考えていたと思います。
数秒の沈黙があり利用者が口を開きました。
「……今まで生きてきて、こんなに幸せなことはございません」
ゆっくりと、でもはっきりとそう言いました。
その利用者はたったそれだけ発するとボロボロと泣き始めました。
その姿をみたデイサービスのスタッフのボロボロと泣き始めます。そしてそれを見た他の利用者もまた泣かれます。
その光景を見た瞬間、身体にカミナリが落ちたかのように衝撃が走りました。そして何故かは分かりませんが僕の目からも涙がこぼれました。
すぐに涙をぬぐいその場を後にしました。
その日、僕の頭の中で104歳の方の言葉がリフレインしていました。そして涙する利用者やスタッフの姿が目に焼き付いて離れませんでした。
104年生きてきて1番幸せという利用者、利用者のために涙を流すスタッフ、そして他の利用者のために涙を流す利用者…
そんな施設を絶対に潰しちゃいけない、何の使命感か正義感かは分かりませんが、その時僕は強くそう決意しました。
それから僕はデイサービスの収益を上げるべく、めちゃくちゃ勉強してめちぇくちゃ考えました。月1,2回だった現場にも足繁く通うようになりました。
チラシを作成し営業にも行きましたし、無駄な残業をカットさせるために現場とも揉めました。取れる加算は積極的に取りましたし、とにかくやれることはどんどんやっていきました。
そして1年くらい経ったころでしょうか。ようやくデイサービスの収支に回復の兆しが見え始めました。まだ赤字ではありましたが、閉鎖はなんとか免れました。
その頃には僕は現場に毎日のように言っていました。スタッフからはさすがに【本社の人】ではなく【名前】で呼ばれるようになっていました。
ある日、デイのスタッフから現場に来てほしいと連絡もらいました。呼び出されるのは珍しく、何の用かなと思いながら現場に行きました。
するとそこでは去年104歳を迎えた利用者の105歳の誕生日会が行われていました。僕の顔を見た進行のスタッフが他のスタッフに目配りをします。他のスタッフが僕の手を引いて利用者の近くまで連れて行きます。
それを確認した進行のスタッフがマイクを手に取ると話し始めました。
「今日のプレゼンターは本社のコッシーさんです。彼は本社の人間ですが、私たちの大事な仲間です。コッシーさんは去年の○○さんの誕生日会を見ていたく感動されてとのことです。そんなコッシーさんからプレゼントを渡していただきます。お願いします!コッシーさん!」
そう言われて時、本当の意味で僕は【本社の人】では無くなったと感じました。
スタッフからプレゼントを受け取り105歳の利用者にプレゼントを渡しました。拍手が会場全体を包みます。まるで自分が拍手されてるようでとても照れくさくなったのを覚えています。
昨年同様、ここで105歳の利用者にマイクが渡されます。今年は何て言うんだろうとワクワクしながら待っていました。
数秒の沈黙のあと利用者が口を開きました。
「……今まで生きてきて、こんなに幸せなことはございません」
…ん?…あれ?
周りを見るとスタッフと利用者が泣いています。
…おや?…デ、デジャブかな?
近くで泣いているスタッフに「記憶が確かなら去年も同じような事を言っていたような…」と聞きました。するとスタッフは鼻をすすりながら、「ああ、あの利用者ね100歳超えてから毎年同じこと言ってるよ」と言いました。
僕の決意とは一体……
そしてなぜ毎年泣くんだよ……
この日から10年以上経っていますが、あの時見た光景は今も僕の中で鮮明に残っています。
そして僕に介護への想いを決意させてくれたあの利用者さんとデイサービスのスタッフに今でも感謝しております。
これからも利用者さんに「今まで1番幸せ」と思っていただけるように頑張っていこうと思います。
そう再び決意した介護の日でした。
現場からは以上です。それではまた。
コッシー