感情って何だ? ~生きるのは心だけじゃなくて心技体すべてが大切~
感情とは何だろうと、ここ最近ずっと考えていた。
感じる事、人情、感覚、情にもろい。など、「感」と「情」にはいろいろな反応がある。
人と話している時に、あの人は「心がある」という話になると、それは身体性を伴った「感性が優れている」という話だったり、「情に厚い」というような話をしている事が多い。
そうなると、心の話をした際に大体の場合は、「感情」の話をしている事が多い事になる。
じゃあ、感情とは何だろう?
心理学的に解けるのかと思いきや、ヒントはディープラーニングの第一人者、東大松尾先生が人工知能を考える際に使っている、「人間の思考回路は2階建て」という話にあった。
感情とはなんだ?
動物は生き残るために反射的に色々な反応をしている。
主に、外部に対する反応は下記のようになる
1.認識→2.感情→3.判断→4.対応
1.認識(感じる)
これは、目や耳などの五感(センサー)を使って、物事を感じる事。
五感は視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の事なので、
何かを見たり、聞いたり、肌で感じたり、匂ったり、味わったりする事だ。
これで、例えば木の実を見て美味しそうだと感じたりと、五感を使い何かを感じたり、危険を察知したりする。
2.感情
動物は感じた事を、「情」で判断する仕組みになっている。
良い方面だと「ポジティブな気持ち」になり、悪そうだと「ネガティブな気持ち」になる。
数億年生物が培ってきて獲得した生存するための判断基準が「情」だ。
良さそうな事、嫌そうなこと。感じた後に実は情で判断しているから、感情になる。
3.判断
感情を使って判断した事+動物毎の固有の能力を使って、実行するかをきめる事が、このタイミングで起こる事。
例えば危険を察知した時に鳥なら「翼」を使ってどう回避するか決めるし、
獲物を見つけた際にチーターなら「脚力」を使って捕まえられるか判断する。
大体の動物の場合は、この際に自分の身体を使う。
人間は身体以外にここで「知能」を使っている。
**4.対応
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上記の判断を終えた後に、最終的に獲物を捕まえたり、逃げたり、という行動を動物は行う。
そして、いい結果だったら「成功した記憶」として心に刻み、悪い体験だったら「繰り返したくない記憶」として刻む。
動物は、上記のサイクルを繰り返して生きていく。
だから、大きな成功体験はもう一度繰り返せると思って何度もやるし、
大きな失敗体験は二度と繰り返したくないと思って、時にはトラウマになる。
心と体は繋がっているといわれるのもこれが故だ。
人間個人は、「体(五感)」「心(感情)」「頭脳(判断)」「体(対応)」を繰り返して、それをパターン化する事により成長していく。
アスリートを思うとこの辺りは想像しやすいと思う。
短距離走者は、スタート時の体験、終盤の体験などを、繰り返し反復して、成功体験を体が引き出せるように覚えこませる。
この心技体を使って反復するパターンを繰り返すというのが、動物的な成長方法だ。
体を使わないと人間が物事を覚えられないのもここに由来する。
感覚が優れていて鍛錬された人の事を人は「直感が鋭い」と感じたりする。
知能とはなんだ?
「知能」とは実は「言葉」だ。
「言葉」とは物事の抽象化だ。
例えば色「赤」などは視覚が感じた色を「赤」という形で僕らは抽象化している、
人によってここまではオレンジでここからは赤とか基準は少し違うが、おそらく朱色は赤だろうし、大体そういう感じで抽象化している。
そして、言葉を組み合わせてさらに高度な抽象化を行う。
例えば「リンゴ」は、「赤」くて「丸」くて「美味し」くて「皮」があるものだ。それを総合して「リンゴ」と呼んでいる。
あらゆる抽象化したものを僕らは「言葉」に置き換えて、それの組み合わせでさらに高度な抽象化を行っている。
これが複雑に組み合わさると「車」のような複数の物の組み合わせが出来てきて、それが道を走り町を作り、僕らの社会になって行く。
しかし僕らは動物なので、物事を抽象化して覚える時に上で説明した動物的なパターン化を行わないと覚えることが出来ない。
直接的に感じられる言葉は視覚情報の「赤」などのように単純だが、リンゴは見て触って食べないと、抽象化されない。
英語を発音したり書いたりしないと中々覚えられないのもこういった理由からだ。
人工知能はリンゴが複数の抽象化の組み合わせだとは、無数のパターンを理解する事で、理解しようとしているが、人工知能には「身体」が無いので、実は完全にリンゴを抽象化できていない。「93%の確率でリンゴと呼ばれる物体です」という判断は出来るが、「これはリンゴだ」と直感的に感じることが出来ない。
知能とは言葉という「抽象化された記号」の組み合わせだ。
人間はなんで人と共感したいのか?
人と人が話す場合、言葉で会話する事が殆どだ。
そして、実は相手の言葉から身体の記憶を引き出している。
例えば、「昨日失恋しちゃったんだよね」という話になれば、「失恋の時の悲しい感情」を思い起こすし、
「超おいしいチーズケーキ見つけたんだ!」という話なら「甘くて美味しい、乳製品の味がする食べ物」を、過去の記憶から思い起こす。
だから、頭で想像した中で甘さが出てきて嬉しい気持ちになったりする。
この「言葉から身体の記憶を引き出す」事は、基本的に人間しかできない。
犬など、一部の動物は原始的な部分ではこういう事が出来るが、抽象化できる事が言葉を持っていないため少ないので、ごくわずかしかする事が出来ない状態だ。
人と人が会って話したいのもこの辺りが理由だったりする。
「言葉」単体だと抽象度が再現できない事が多いので、「身振り手振りや声の大きさ」など、ノンバーバルな部分でそれを補完したいからだ。
だから、会って話して共感すると、心だけじゃなくて体が心地いい。
人の言葉に共感するというのは、実は喜怒哀楽を想像力を使って身体的に共有する事だ。
人は何故楽園を追われたのか?
禁断の木の実を食べた時に人は楽園を追われることになる。禁断の木の実とは「言葉」の事だ。
言葉を覚えると何が出来るのか?
それは共同幻想を作ることが出来る。
宗教などの「絶対的な良心の判断基準」を作り、相手と共有する事で、長期的に有利な方向に多くの人間を向かわせることが出来る。
その途中に「苦痛」や「死」という、感情では決して乗り越えられないものを「言葉が作った幻想の信念」を使って乗り越えさせることが出来る。
個人では決して受け入れられない事でも、大切な相手の嬉しい事を想像して「命を投げ出す」というような事も出来るようになる。
集団で大義を成すときは犠牲を出した方が効率的な事が多いので、この方法は進化にはとても効率的な事だ。
動物としての「感情」だけで生きられなくなってしまった悲しみを「楽園を追われた」と言ったのだと思う。
何故、物語が大切なのか?
宗教などの共同幻想を使うと人は効率よく目標を達成する事が出来る。
そして自己犠牲をするくらいに惹かれる目標を立てる時に「超常現象」のような凄い話があると、惹かれやすい。
それは、勇者が現れて魔王を倒す事かもしれないし、絶対に首相になってもらいたい人がいるようなことかもしれない。
だから、自分の想像を超えてくる事が出来る人や物語を僕らは魅力的に感じて付いていく。
「未来予知」「浮く」「死を乗り越える」などは、物理法則を超えているように見えやすいので皆が凄いと思う事だ。
ベストセラーの本棚を見るとこういうジャンルが多いのも納得できる。
3つの心
心は英語にすると3つになる。
・ハート
・マインド
・スピリット
「ハートが感情」「マインドが知能」「スピリットが物語を信じる気持ち」なんだと思う
じゃあ、どうすればいいのか?
感情が大切なのは知っている。体が大切なのもよくわかる。
けど、同じくらい知能も必要だし言葉の定義も大切だ。
そして、人を導くスピリットも必要だと思っている。
人をよく見ていると
・感覚が鋭い人は感情を大切にしている事が多い。
・心が弱った時は体を動かして感情を正常な状態に戻そうとする。
・論理的思考をする人は言葉を使うのが上手い。
・気持ちが強い人は人をまとめ上げるのが得意だったりする。
どれが特別に大切なわけじゃなくて
「心技体と精神」全てが大切なんだ
※絵が無いと抽象化できないので、絵を作ったら追って追加します。
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