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浪曲火曜亭と提灯の思い出
田原町に日本浪曲協会会館があります。築60年程の和風建築。ここで、日々稽古や事務作業などが行われております。浪曲会が開かれることもあります。
この場所で毎週火曜日に行われているのが、「毎週通うは浪曲火曜亭」という浪曲会です。浪曲二席+トークという構成です。
始まったきっかけは国本武春師匠が若手に舞台の場を増やしたいということだったと聞いております。マイクなし、演者との距離が大変近い舞台です。
私が浪曲界に入った頃にはもう火曜亭は始まっておりましたが、火曜亭の存在もそれほど知られておらず、お客様もたくさんという感じではありませんでした。来られた方はご存知かと思うのですが、浪曲協会の会館、普通の住宅街の中にありまして、隣は駐車場、浪曲協会という渋い看板はありますが、ちょっと見にはわかりにくい。
火曜亭のそんなに多くないお客様が、さらに迷って来られないということがよくありました。
私は元々チンドン屋という職業をしておりまして、職業柄、集客がないというのが、割と気になるところがございまして。せっかく来るつもりがあるのに迷って来られないなんて!と思っておりましたそんな折、当時の火曜亭はコロナ以降はトークコーナーに変わりましたが、終演後、演者を囲んでお茶を飲むという茶話会というのがございました。
その席で会場の場所がわかりにくいという話になり、あるお客様が「何か目印を付けたらいいんじゃないの?提灯とか」と仰いました。
それだ!と思い、当時すぐ上の某兄さんに相談したところ、「会議にかけないといけないから、大きさと仕様を何種類か見積もりを取ってください」という返事。
え?私が?めんどくせぇことになったなと正直思いつつとりあえず提灯屋さんに電話し、この大きさでこの仕様だといくらになるかみたいな電話を何度もしつこく掛け(^◇^;)またですか〜浪曲協会さん〜みたいな反応に絶対どれかは買いますから!みたいなやり取りを経て、いよいよ会議の時。
提灯を注文されたことがある方はあまりないと思いますが、提灯というものはある一定の大きさを超えると値段がグンと上がるのです。大量生産されるものではないので、いわゆるオーダーというやつです。
私がその時取った見積もりのリストを作る時に、まあ、これは高いから無理だろうけど、一応いれておくか、と思っていれたその見積もりの中で最も大きいサイズの提灯がありました。
会議の時、その席におられた澤孝子師匠が「「これがいいんじゃない」と言われたのがその最も大きいサイズの提灯でした。
ええ!と思い、恐る恐る「あの…それ、結構値段が高いのですが…」と私が言ったところ、晴れやかな声で、「みんなで頑張ってお客様を呼びましょう」と仰いました。
ということで作られたのが今火曜亭の時に入り口に下げられている大きな提灯です。
その後、迷うお客様が減り、本当に沢山お客様に来ていただけるようになりました。私のようなしみったれた人間だったら、きっとものすごく小さい提灯を選んで、たいした効果もなかったのではと思います。改めて長年浪曲界を渡ってきた師匠の判断は流石だなと思った次第です。
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武春師匠も澤師匠も今はおられず、コロナを経て復活した火曜亭も、茶話会がなくなり、以前ほどの集客は難しい状態ですが、もしよろしければ足をお運びください。
火曜亭のPVもできました。案内役の玉川き太さんの持ち味がいかされていて楽しいです。
https://youtu.be/H8-MQRj1AmA?si=weIyBs0LwVh6GKr6
という事で長い前振りになりましたが、宣伝でございます。明日10月29日の火曜亭出演させていただきます。澤雪絵姉さんとご一緒いたします。「文芸浪曲」特集です。曲師は沢村博喜さん。
初めての方も常連の方もぜひ!お待ちしておりますよ〜
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