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【コソリテおすすめ本】『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK ~いつものケアから不調のときの対処法まで』

コソリテスタッフのひはゆきです。
コソリテで大事にしている科学的・医学的根拠のある情報を…というところで、よく出てくるのがマルチ商法(とそれに付随する医療デマ)の問題です。

私も数年前、周りのお母さんの間でマルチ商法が広がったという経験をしています。アロマで有名なD社です。
「100%自然成分由来だから、メディカルアロマとしても使えます」「うちの子は風邪をひきにくくなりました」
そんなセールストークとともに、じわじわ広がる勧誘(ちなみに、医薬品でもないのに医療的効果を謳うのは薬機法(昔の薬事法)違反になります)。
これはまずい…と思い、1人だけですが、勧誘されているのではと思ったママ友を止めに入ってみました。予想どおり、熱烈な勧誘を受けていた彼女が言っていたのは、「マルチ商法はしたくないから断ろうと思っている。けど、ホームケアの話には興味があって…」。

ホームケア!
それ、デマだよ…と私は頭を抱えました。
D社はアロマのおしゃれなイメージで、お母さんをターゲットにすることが多いのですが、「ママはホームドクター」というセールストークがあるのです。
アロマの力で子どもの病気を予防、緩和、下手すると治療までしようとします。
もちろん、医学的根拠は弱いのですが、「病院に行く前にできることがある」というフレーズに心を捉えられるお母さんは少なくないのでしょう。
しかし、それはワクチン忌避など、お子さんを適切な医療を遠ざけることにもなりかねません。実際、D社の勧誘をしていた知人も、お子さんが水疱瘡にかかった時に病院に連れて行かず、アロマだけで対処していました。

前置きが長くなりましたが、本題です。
子どものホームケアに興味があるならば、実用書として推すのはこの本です。

Amazon.co.jp: 小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK ~いつものケアから不調のときの対処法まで (専門家ママ・パパの本) : 森戸やすみ: Japanese Books

小児科医の森戸やすみさんは、育児中の親に向けて医学的根拠をもとに、分かりやすい言葉で本を何冊か書かれています。この本は、ホームケアに焦点を当て、子どもの様々な病気、けが、皮膚トラブルなどへの対処を解説したものです。

症状別にどうしたらよいか、目次や用語インデックスですぐにアクセスできるようになっているほか、病院のかかり方(病院にかかるべきかどうか、かかるとしたら何科か、など)にも1章分を割いています。我々親としては、家での応急処置をどうしたらという以外にも、「(人によっては仕事を休んでまで)病院に連れて行くべきかどうか」という判断で迷うことも多いです。医療の素人である我々の目線に立った構成になっていると感じます。

さらに、この本のポイントとして挙げたいのが、SNSなどで医学的根拠の薄い、または否定されている医療情報が拡散されているという現状を踏まえていることです。
例えば、ワクチンについて6ページを割いて、①「ワクチンは危険」、②「ワクチンを打っても抗体がつかない」とか「効果は徐々になくなってしまう」、③「感染症が流行していないから打たなくてもいい」、④「ワクチンを打つよりも感染した方が丈夫な子になる」という言説について、1つ1つ取り上げ、丁寧に医学的な誤りを正しています。
ほかにも、アレルギー、虫刺され、母乳など随所で、流布されがちな誤情報を取り上げ、医学的な説明をして否定しています。

特にお母さんたちに広がりがちな誤情報を「医学の世界では相手にされていないデマだから」とスルーせず、根気よく医学的根拠に基づいた情報を提示し続けているのです。
これは、著者の森戸さんの問題意識によるものでしょう。
この本の「はじめに」は、この一文で締めくくられています。

医学的に根拠のあることだけを押さえて、あとは楽しく子育てしましょう。

同書:4ページ

森戸さんの他の著作でも、同様のフレーズが見られます。

子どもにワクチンを打たせず、アロマで何とかしようとしてしまうお母さんたちも、もしかしたら「押さえるところを押さえ、楽しく子育てしたい」という気持ちは我々と共通するのかもしれない。

なので、そういう方たちには、こう言いたいと思います。

「本物の医者でもなければ、ママはホームドクターになれないよ。でも、例えばこういう本を読んで、ドクターからお知恵を借りることはできる。そのお知恵は、医学的に専門家が積み上げてきた現時点でのベストな情報だよ。あと、ママだけじゃなく、パパも一緒にやろうよ」

と。