赤い虫と寿司桶の話
5月15日 くもりのち雨
本日のBGM Jane Birkin
数日前から赤いちっちゃい虫が
素焼きの器にやたらとくっついていて、
毎年見かけるので別に珍しくもないのですが
今まで私はこれをクモの子供と思い込んでて
せっかくなのでと調べてみたところその正体は
タカラダニというダニなのだそうです。
タカラダニについて簡単に説明すると
人を刺さない、植物にも害はない、
ダニの中では大型、梅雨ごろまで大量発生、
花粉を食べる、コンクリートが好き
という虫なんだそうです。
いやあ6個くらい特徴を並べると
ある程度キャラクター像が浮かび上がってきますね。
人間相手にやっても 人となりが見えてきそうです。
端的に人物説明をするときに便利かもしれません。
私がこの虫をクモだと思っていたのは
素焼きの器を外に並べていると
いつも小型のクモが、器のフチからフチに
巣をかけているからです。
器を外に置いて10秒後に見ると
もう巣をかけ始めているというありさまで、
何かクモというのは空間の中に
情報として充満している存在で、
素焼きの器を投入するとそこではじめて受肉して
巣を作るのではと思ってしまうくらい
常に器にくっついています。
それと同じくらい、
いやそれを上回るのがこの赤い虫で、
私はそうやって器にくっついた虫は手で払ったり
息で吹き飛ばして作業を進めるのですが、
器に赤い虫がいると、
吹き飛ばしてから釉薬をかけて置いて、
次の器を見るとまた赤い虫がいるので吹き飛ばしたら
もう釉薬をかけた方にも赤い虫がくっついている
というありさまなのです。
何か器に執着する理由があるのか、
それともそれくらいの密度で大量にいるのかわかりませんが
虫は結構うつわが好きです。
いい具合に隠れ場所になるのかしら。
今日は小皿に2種類目の釉薬をかけるので
コンプレッサーで作業をしています。
コンプレッサーを使うときには
この水たまりに回転する台を設置して、
その上に筒形の花瓶を置きます。
スプレーガンに2種類目の釉薬をセットして
先ほどの花瓶の上に器を置いて
下の台を左手で回しながら、
右手のスプレーガンで釉薬をかけていきます。
裏面が終わったら次は表。
かけ終わった器を近くで見るとこんな感じですね。
釉薬というのはガラスのもとになる粉が
水に溶けたものですので
スプレーで吹き付けると
こんな感じで粉っぽくなります。
釉薬をかけた時に
粉っぽくても、あるいは滑らかであっても
焼いてしまえば変わりません。
釉薬の量が大事ですね。
コンプレッサーで吹き付けるときは
釉薬の量の見極めが難しいです。
これを淡々とこなして全ての器に
釉薬をかけ終わった頃には
下の受けに飛び散った釉薬がかなり溜まります。
余った釉薬を捨ててしまうのはもったいないので
これをまたバケツに戻してあげます。
実はこの受けはプラッチックの寿司桶で、
活用されるゴミその2になります。
意外と最近は手に入らないから貴重ですね。
このシンプルさが大変使いやすいです。
電源を抜いてもコンプレッサー内の
空気の圧力は残っているので、
その余剰エネルギーを利用して
最後の掃除をします。
空気の圧力が高いままで放って置くと
故障の原因にもなりますので、
最後は空気を抜いてあげる必要があります。
コンプレッサー本体の元栓を開けても
空気は抜けるのですが、元栓から一気に空気を抜くと
その場の気圧が一瞬あがって耳が痛くなるので
できるだけスプレーガンから空気を抜いておきます。
そのついでに掃除を、ということですね。
綺麗に洗浄して釉薬はバケツの中へ。
左の黄色くて大きいバケツが釉薬の本体で、
余った釉薬を入れたバケツは、
別の釉薬やゴミが混ざっていたりするので
本体には戻さず、バケツだけで置いておき、
またコンプレッサーの時に使用します。
なるべく無駄になるものを
少なくしていきたいですね。
明日は多分窯詰めをします。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目
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