問われる日米中銀の独立性-安倍政権と一体の日銀
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)にトランプ大統領が利下げの圧力をかけるなか、FRBは19日、金融緩和の可能性をにじませた方針を打ち出しました。日銀は大規模な緩和策を継続しています。
◇
深刻化する米中貿易摩擦は世界経済を下押ししています。トランプ大統領はFRBを政権の影響下に置くため、ツイッターで「FRBは適切に仕事をしていなかった。もしそうしていれば米国の株価はさらに5000~10000ポイント上昇していただろうし、GDP(国内総生産)は3%ではなく、4%を優に超えていたはずだ」などと批判します。
他方、パウエルFRB議長は「FRBの独立性を政治的圧力から守り抜く」と明言しています。FRBの金融政策は、政権の圧力ではなく、経済・物価動向に即して実施する、との姿勢がうかがわれます。ただ、昨今の米中貿易摩擦や雇用の陰りは、結果的にFRBもトランプの望む利下げの可能性を示唆しています。
●安倍政権と一体
かたや日銀の場合、第2次安倍晋三政権の始動早々、2013年1月に内閣府、財務省、日銀の3者で共同声明を発表し、「デフレからの早期脱却」に向けて「政府および日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む」ことを宣言。日銀は2%の物価目標を実現するための金融緩和を決めました。日銀は初めから独立性を放棄し、政権と一体となった金融政策を約束しました。
中央銀行が独立性を失い、時の政権に従属したらどうなるのでしょうか。賠償金支払い、戦費調達、政権維持などの目的で、中央銀行が政権の金庫として利用された歴史があります。中央銀行に依存した財政資金調達が行われると、戦前のドイツでほぼ1兆倍、戦後直後の日本でほぼ300倍、近年のジンバブエやベネズエラでも数万倍のハイパーインフレションが発生し、経済は混乱し、国民生活は破壊されました。
現代に目を向けると、バンク・オブ・アメリカのアナリストの試算では、08年の金融危機以来、各国の中央銀行は、計700回余り利下げし、国債など総額12兆㌦(約1300兆円)相当の金融資産を買い入れました。世界経済はマネーにあふれ、FRBなどの金融政策がグローバル化した金融市場に敏感に作用し、注目される時代となりました。
●異次元のリスク
安倍政権と一体になった日銀は、年間100兆円ほどの大量の国債を買い入れ、過剰なマネーを供給しました。異次元の金融緩和が行われているのに、爆発的なインフレが起こっていないのは、賃金カットと消費不況から経済の先行き不安が広がり、企業も家計も銀行からの借り入れを控え、設備投資や消費が低迷したままだからです。
マネーは株式や不動産に買い向かい、株価が短期間で2倍以上も暴騰しています。マネーは国債投資にも向い、政府は金融市場の動向に縛られることなく国債を増発しています。
その結果、国債発行残高が1000兆円超に達し、GDPの2倍を超え世界最高レベルとなりました。日銀が買い入れた国債も発行残高の4割に達し、これも世界最高です。国債価格が下落し、日銀に損失が発生したら日銀と円に対する信認は失われてしまいます。
現代日本は、独立性を奪われた日銀と安倍政権によって、異次元のリスクを抱えてしまいました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?