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法務メモ① 投資契約・株主間契約をレビューする際のオススメ書籍や注意点など

こんにちは、弁護士の岩崎です。

---------<自己紹介>-----------
森・濱田松本法律事務所→かなめ総合法律事務所というキャリアで、現在はスタートアップ支援をしながら、ウェブサイトの運営やコミュニティの運営などをしている弁護士です。
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今回はちょっと実験的な試みです。
僕は、普段業務中に気になった論点や、本を読んで学んだことについて、簡単なメモを残しているんですが、それを共有していきます。

僕にとっては、普段書いているメモをブラッシュアップする良いきっかけになるし、このnoteマガジンを読んでくださってる方にとっても、
「弁護士が普段どんな感じで知識を蓄えていくのか、どうやって実務的なポイントを見つけていくのか」
的なことがわかってwin-winみたいな感じになることを目論んでます。
評判が良ければ続けていこうと思うので、気に入ったら反応していただけると嬉しいです。

<注意点>
・あくまでもメモの延長なので、「不十分・不正確な点があるかもしれない」ことを前提にご覧ください。
・当たり前ですが、具体的な案件の話には触れず、法律論のみです。

具体的なメモに入る前に、投資契約や株主間契約の内容をレビューする際に役立つ書籍のご紹介です。

投資契約・株主間契約をレビューする際に役立つ書籍

①ベンチャー企業による資金調達(桃尾・松雄・難波法律事務所)

桃尾・松雄・難波法律事務所という、企業法務系の法律事務所として著名な事務所の本です。
その時点で信用性が高いのは勿論ですが、さらにこの本の凄いところは、具体的な条項例を惜しみなく載せていて、それをベースに解説がされているところです。
実務家としては、「具体的な条項例が載っている本」というのはめちゃくちゃ重宝するので、もし、「投資契約や株主間契約をレビューする際に一冊だけ本を参照して良い」と言われたら、僕はこの本を選ぶと思います。
その位、レビュー・ドラフトの際に役立つ本です。

②スタートアップ投資ガイドブック

五大法律事務所の一つ、TMI総合法律事務所の先生方によるスタートアップ投資に特化した本。

さすが、シリコンバレーにもオフィスを出しているTMIの本だけあって、シリコンバレーの事例もふんだんに盛り込まれており、非常に勉強になります。

「そもそもこの条項はどういう経緯で生まれたのか」とか、そういう深いところから書かれているので、読むと腑に落ちる点が多く、通読したい一冊です。

ただし、具体的な条項例をたくさん載せるという趣旨の本ではないので、案件が来たときに慌てて読むのではなく、日常的に読み進めておきたいタイプの本です(「無茶言うな‼」という気持ちはよく分かりますが)。

我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項

本ではないですが、忘れちゃいけないのが経産省の出しているこちらの資料。

経産省が、ベンチャー投資の契約条項について、その意味の解説とともに
「ここまで求めるのはやり過ぎ」とか
「この条項にはこういう意味がある。拒否すれば良いってもんでもない」
みたいな感じで、かなり踏み込んだところまで指摘してくれています。

実務家としても、この資料で言われていることが一つの視点になることは間違いないので、投資契約・株主間契約をレビューする前に必ず目を通しておきたい資料です。
70p位ありますが、意外と時間がかからず通読できます.

④起業のファイナンス

これはもうスタートアップのバイブルなので、スタートアップファイナンスの全体像をつかむためにも一度全体を読んでおくべき本です。
分厚いですが、読み始めると意外とすぐ読めます。

⑤起業のエクイティ・ファイナンス

起業のファイナンス」の続編で、投資契約や株主間契約の雛形が載っている本。

当時はこの本くらいしか投資契約や株主間契約のひな型を見れる本ではなかったので、起業のファイナンスと並んでスタートアップ業界的の発展にめちゃめちゃ貢献した本だと思います。

その意味で、まだまだこの本の存在価値は大きいものの、やはり、実務家としては最新の情報を知りたいので、①や②が出た今となっては、この本の重要性も少しずつ減ってきているのかなと思います。

<まとめ>

僕の感覚でいうと

起業のファイナンスでスタートアップファイナンスの全体像をざっと把握
 ↓
我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」を読んで具体的な条項のポイントを把握
 ↓
スタートアップ投資ガイドブック」でスタートアップ投資の沿革やシリコンバレーの例を学ぶ
 ↓
具体的なレビュー・ドラフト作業の際は「ベンチャー企業の資金調達」を見ながらやる

という流れで読み進めるのが理想的かなと思います。

もちろん、そんな理想的な流れは通常踏めないので、「大体スタートアップファイナンス関連だとこんな本があるんだな」ということを把握しておくだけでも違うと思います。
ちなみに、僕がまだどの本も読んでなくて、本当に今日明日でレビューしなきゃいけないみたいな状況になったら、まずは「ベンチャー企業の資金調達」を見ながらレビューするかなと思います。

その他にも、スタートアップの投資契約で出てくる種類株式については、「種類株式ハンドブック」や「【新・会社法実務問題シリーズ】②株式・種類株式<第2版>」など、定評のある本があるんですが、これらの本は基本的に上場企業を想定して書かれているので、スタートアップに関しては①~⑤あたりの本が役に立つんじゃないかなと思います。

思いのほか書籍紹介が長くなってしまいました。
以下、僕が作っているメモの共有になります。
今回は、スタートアップが種類株式を発行する際の注意点や、ストックオプションの話、電子契約関係のメモがあります。

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