出版社経由の本の商業化を断りました
『モザイク除去から学ぶ 最先端のディープラーニング』の著者のこしあんです。商業化に関して大切なご報告があるのでお知らせいたします。
経緯
・2020年3月1日の「技術書典8」用に新刊『モザイク除去から学ぶ 最先端のディープラーニング』を書いた
・2月中旬、当該イベントが昨今の事情で中止
・2/28、出すはずだった新刊を通販で頒布開始
・3/7、通販だけで累計100部突破(物理版と電子版の合計、物理+電子は1とカウント)。とらのあなの技術書人気ランキング連日1位。全年齢総合ランキングで最高デイリー13位。
・3/24、某出版社より商業化の提案
・3/25、作者(私)即日拒否
理由
出版社に送った回答より。これが全てです。
1つ目は、本書はすべてを私が一人で作り上げたものであるため。そして本書をよく思っていただいている読者の方は、私が書いたものをよく思ってくださっているのです。本書に出版社のコントリビューションの要素はありません。
2つ目は技術書全般の傾向として、商業化すると売上の都合上内容が薄くなる傾向があるためです。私としてはコアな内容を書きたいのです。いくら出版社からのアドバイスがあったとしても、最終的にその責任は著者が負うことになります。商業化で内容が薄くなったという批判があった際に、いままで応援してくださった読者の方を裏切ることになってしまうからです。
3つ目は権利の関係です。何部売れることを見込んでいらっしゃるでしょうか? 本書の宣伝、印刷管理は全て私がやっております。商業化いたしますと権利が大きく制限されます。私が権利の大部分を譲渡するメリットが全く提示されておりません。
4つ目は内容に関する制約のため。本書は「誰もが夢見るモザイク除去」を起点にGANの最前線を見ていくのが大きな特徴となっています。ここに出版社のコンプライアンス上の制約がかかると、本書の特徴のかなりが換骨奪胎されてしまいます。その上で、読者により良いものを届けられるということをどう保証できますか?
5つ目は本書が『実践GAN』を超える内容を書いているため。実践GANでは全書に渡って書いている内容を1章でまとめております。実践GANと同じような扱いになってしまうと、やはり内容が薄まってしまい、換骨奪胎の印象は拭えません。本書のこの価格は執筆、印刷、編集、流通のコストを全て私が背負うことで実現できています。それを上回るメリットを読者に対して提示できますでしょうか? 大前提として本書を理解できる編集者はおりますでしょうか?
以上、大変失礼な点はあるかと存じますがご理解いただければ幸いです。本書のことをよく思っていただいたことは、一人の読者相手としてお礼申し上げます。
こしあん
知っておきたい商業本の背景知識
あとは印税の計算も、売上数による印税なのか発行数による印税なのかがあります。同人誌の店舗委託の場合は、通販サイトのシステムのおかげでかなり販売数がわかりますが、商業誌の売上は著者がデータとして手に入るという話は知りません。
商業誌の場合は著者の権利が大きく制限されます。商業誌というと聞こえはいいですけど、流通のパワーと引き換えに権利の大部分をもっていってるだけですので。
あと加えて言うと出版社が不要とまでは言ってないです。例えばライトノベルや漫画のようにヒットすると何十万部、何百万部となると、流通がとても重要になるので必要になります。しかし、技術書はそんなに売れませんし、技術系同人誌でも1000部行ったらバケモノクラスという世界です。
ひとこと
全部自分一人で書いたのに売れたと知ったら商業化って、権利横取りしたいんてすかね? 新しく書くよりも既存の作品の権利を入手したほうが、出版社のコストが安いのはわかりますが、増刷してこれからみんなに届けるぞってときにこういうこと言われるのは心象悪いです。これも出版不況の結果なんですかね。
自分の中では、読者に届けるのがゴールであって、商業化がゴールではないと思います。あくまで商業化は手段の一つであって、漫画のように部数がスケールできなければ、出版視野にこだわらなくてもいいんじゃない? ということてす。
これから
今後の予定:以下のイベントに参加します! 現在同人誌を増刷中なので、買われた皆様もまだ買っていない皆様もよければこちらでお会いしましょう!
5/3・5/5おもしろ同人誌バザール大崎9
6/24技書博3
あと頭の中の妄想レベルで、今すぐこの本をというわけではないですが、個人でアマゾンに本を卸す方法に詳しい方いたら、教えていただけるたいへん嬉しいです。特にISBNコードやJANコードをどう取るのか、取得代行サービスのようなものはあるのかが気になっています。同人だとどうしても流通がボトルネックになるんでそこ気になっていたりします。
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内容も著者の人間性も問題作の『モザイク除去から学ぶ 最先端のディープラーニング』現在通販で好評発売中です。現時点では、わずかな手数料除けば全て著者に還元されます。よろしくお願いいたします。