150. IPAに飛び込み/ Irrumpir a IPA(8)
アンドレアとの話はまだ続きます。
最後に盛り上がったのは、手工芸職人の収入と地位向上についてです。
ミドリでも重視しているテーマなので、互いのツボにハマりました。
目指す目標は似ているけど、方法が異なります。僕は異論を唱えました。
IPAでは、職人の技術を向上し、
販売を担うような企業と連携することで、卸してもらうことで、
今よりもものが売れるシステムを目指しているとのことでした。
今までも、そこにデザイナーが介入させて、
より美しいプロダクトを作ってもらい、販売するプロジェクトもあったそうです。
しかし、それはうまく行かなかった。
というのも、今まで自分がいいと思って作ってきたデザインではなく、
よそ者が来て、これがいいデザインだから、これを作りなさいと指示をされ、
作ってはみたが、そこまでヒットするわけでもなく、自分たちの収入もあまり増えない。
そして、一番の問題が、職人のモチベーションだったそうです。
人から言われたデザインなので、愛情を込めて作ることができなかったのだそうです。
職人さんは自分の技術と仕事に誇りを持っています。
だから、買い手ではなく、デザイナーと呼ばれる余所者から頼まれたデザインでは、
やる気も起きなくなってしまったのだそうです。
これはミドリでも共通する部分でもあります。
もし、このデザイナーや企画者であるIPAが買い手だったなら、
話は別だったと思います。
職人さんも、買ってもらえるデザインなら頑張って作ります。
お客様の声ですから。
でも、買ってもらえるかもわからない。
市場の声ではない声によって、
作らされるデザインには愛情を注ぐことができないのです。
誰でも自分が作った料理や、
自分がした掃除には、感謝してもらいたいし、褒めてもらいたいものです。
それが仕事だったら、さらに対価をもらうべきで、
それが保証されていないと、人はやる気を失ってしまうのです。
IPAは公的な組織ですから、
そういった一般人の個人的な利益にまで、介入することができません。
そこは当然であり、理解できる部分です。
では一方で、ミドリがどうしているかを説明しました。
まず、市場が優先です。
売り先がなければ、いくら作っても意味がありません。
次に、デザインです。
デザインはデザインでも、売れるデザインを作らないといけません。
この場合、デザインを要求するのはデザイナーと呼ばれる人間に限らず、
むしろ買い手のデザインや要求を優先すべきです。
買い手である消費者、または顧客需要を最も把握している卸先の声というのが最も重要で、それを元に生産者はものを作っていくべきだと思うのです。
僕らの場合は、2パターンあります。
顧客からの声(注文)を元に、作ってみること。
もう一つは、売れると思って自分たちでデザインし、
サンプルを作ってみて、顧客の声を生かしながら、改良していくパターンです。
組織が小さいですし、
ある程度は統率も指示系統もしっかりしてきたので、
特に後者のような方法は成り立ちますが、一般的な手工芸の職人さんでは、
現実的には難しい部分もあります。
だから僕が思うのは、
IPAが市場を持っている企業と、生産者のマッチングを行うことがベストだと思います。
簡単ではなりませんが、
より良い美しいサンプル商品を首都ないし、国外に持って行き、
博覧会のようなイベントで地元企業にアピールしていくことが重要だと思います。
よく観光省が他国のイベントに参加し、手工芸品も展示していますが、
そこを訪れる人はIPAが求めるターゲットにはならないと思います。
もっと、テキスタイルだったり、ものづくり、木工や陶芸など、
ある程度のジャンルを絞ったイベントに出展することが必要だと思います。
今日はかなり熱く書いてしまいました。
お話はもう少し続きます。