21. MIDORIの仕事/ Trabajo de MIDORI(3)
パロサントのお箸は今までパラグアイにはなかったので、
立川がまた変なことしてるという噂が広がったんだろう。
いきなりの50膳というオーダーに驚いたが、良いチャンスだ。
もちろん引き受けることにした。
JICAのシニア専門家の方がクライアントだった。
注文時にわざわざオフィスまで来てくれた。
初対面にも関わらず、長話をしてくれて、お箸注文にかける温かい想いも伝わってきた。
ますます、やらざるを得なくなった。
しかし、少し心が晴れない。
そう、ジョンくんは三日三晩、遅くまで残業をして、50膳のお箸を仕上げてくれた。。
今思えば、本当申し訳ないことをしたなと反省している。
ジョンくんのモットーは、「何にでも興味を持って挑戦し、楽しむこと」だそうだ。
パラグアイ到着にその言葉を聞いて、
本当にいい後輩が来てくれたなと感動した。
お箸を無事に納品し、お客さんも喜んでくれた。
日本で配って、今も多くの人の食卓で使われていることを願う。
そんな感じで、「お箸」でスタートしたミドリだが、
パロサントのことを調べ、しれば知るほど、
そのポテンシャルの高さに驚かされる。
まず、油分が多いので、精油が摂れる。
その精油はアロマオイルとして、お香やさまざまなグッズに応用できる。
お香、ネットで調べ、ジョンくんに何度も何度も試作を作ってもらい、
コーン香、線香、ウッドチップ、ウッドパウダー、ウッドスティック、アロマキャンドルとどんどんバリエーションを増やしていった。
グアンパやコップも、パラグアイではメジャーなので、扱わない意味がない。
ルベンや他の業者に頼みながら、
オリジナルデザインで作ってもらったりもした。
うちのこだわりはなんと言っても「磨きと仕上げ」で、
旋盤機械の傷を磨いて無くし、仕上げは天然国産蜜蝋を使うことで、
化学製品を使わない体に優しい商品を目指した。
他業者は、旋盤機械で削り出したら、傷が残ったままニスを塗ったテカテカ状態で、
「はい、完成!」と売りに出している。
そのほうが楽で簡単だ。安く売れる。
ミドリの同類商品が手間がかかっているので、
市場価格の3倍近い値段となっている。
今でこそ、グアンパの磨きと仕上げは機械を導入してスピードアップしたが、
当時はほぼ全てを手作業で行なっていた。
ミドリ立ち上げ当初のこと、
「手間がかかるなら、人を増やすしかない。」
ということで、アルバイトを探した。
これが大きな失敗(勉強代)だった。
まずはパラグアイ人の友人に声をかけた。
エリベルトは初日のやすりがけで、
持病の腱鞘炎が出てしまい、1日しか来れなかった。
エリベルトの紹介で、リスという女性が来てくれた。
明るく生真面目で、頑張り屋さんだった。
ただ、時には力仕事も必要な工房では、
男性スタッフに比べて大変な部分も多かった。
友人が友人を呼び、
アミーゴだらけの工房になった。
それはそれで楽しかった。
多い時には7人くらいのアルバイトで工房は賑やかだった。
そして、ミドリ立ち上げから1年。
楽しくてしょうがなかった僕は、
商品を増やし、在庫を増やし、人を増やし。
その結果、お金がなくなった。
ミドリを始める前の当時、
頑張って貯金していた銀行口座には、
なけなしの100万円が入っていた。
ミドリを始めて、一年。
久しぶりに口座を見てみると、
そこに残っていたのはわずか「7万円」だった。
写真:ミドリ初期メンバー
僕は絶望し、本気で日本に戻ることを考えた。