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27. MIDORIの仕事/ Trabajo de MIDORI(9)

2020年のコロナ危機をなんとか乗り越えることができた。


徐々にミドリの売り上げも回復し始め、

2021年からまた気合を入れようと思っていた矢先。


工房リーダーのジュンが亡くなってしまった。



彼はまだ新婚2ヶ月目で、31歳という若さだった。


精神的な問題を抱えていたようで、自ら命を絶ってしまった。


仕事のことではなく、個人的なことが原因だったというのが唯一もの救いだが、

とにかくショックだった。



その日の朝は、ジュンの奥さんからいきなりの電話がかかってきて、

彼女もパニック状態だった。

「ジュンが自殺を図り、今は意識がないから、仕事には遅れていくかもしれない。

また何かがあれば連絡します。」ということだった。


泣き崩れていた。



その1時間後くらいに、メッセージでジュンが亡くなったことを知った。


こういう時こそ、自分のスペイン語の能力の低さを恨む。


ろくに気の利いた言葉をかけることができない。

「残念です。彼には心から感謝している。」


それくらいしか言葉が見つからない。


ジュンとはミドリ立ち上げの時から、2年以上一緒にやってきた。


デザインやアート、音楽が好きで、アーティスト気質だったので、

制作の独創性もあり、手先も器用で仕事も早かった。


ヘビースモーカーだったので、1時間おきのタバコ休憩していたが、

その分、しっかり仕事してくれればいいかと目を瞑っていた。


今でも彼のことを思い出すと、

なんでもっと話を聞いてやれなかったんだろうと悔しい。



新婚の奥さんやご遺族のことを思うと本当に辛かった。



ジュンとの再会は、その二週間後くらいだった。


奥さんも心が落ち着いたようで、

僕らに挨拶がしたい、ジュンが働いていた場所を見たいと、

ミドリまで来てくれた。


ジュンは小さな骨壷に入っていた。


メンバー4人と奥さんとで今までのことなどを話した。

一人一人からジュンとの思い出も話してもらった。


涙が止まらなかった。



仕事仲間でもあり、友人でもあったので、

このような別れは本当に辛い。


ジュンから多くのことを学ばせてもらった。


スタッフは家族のようなものであり、

経営者として、彼らを守ること、大切にすること。


今でもジュンが工房で働く姿の写真をミドリのショールームに飾っている。

僕らのMejor artesano(最高の職人)だ。




ジュン、ありがとう。







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