118A73
正解:a,c,d
解説
この患者は、乳汁分泌(乳汁漏出症)と無月経を主訴としており、高プロラクチン血症が確認されています。高プロラクチン血症の鑑別診断と評価のために、以下の対応が適切です。
a. 下垂体MRI:高プロラクチン血症の最も頻度の高い原因は、プロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)です。下垂体MRIにより、プロラクチノーマの有無や大きさを評価することが重要です。
c. 内服歴の再確認:様々な薬剤が高プロラクチン血症の原因となり得ます。特に、抗精神病薬(リスペリドン、ハロペリドールなど)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRIなど)、消化性潰瘍治療薬(H2受容体拮抗薬)などが知られています。この患者は、うつ症状で内服加療中とのことなので、内服薬の再確認が必要です。
d. 甲状腺ホルモン測定:甲状腺機能低下症は、高プロラクチン血症の原因の一つです。甲状腺ホルモン(TSH、フリーT4)を測定し、甲状腺機能を評価することが重要です。
一方、髄液蛋白測定(b)や副甲状腺ホルモン測定(e)は、この患者の高プロラクチン血症の評価には直接関連しません。
考察
高プロラクチン血症は、女性では乳汁分泌や無月経、男性では性欲低下や勃起不全などの症状を引き起こします。プロラクチンは、乳腺発達や乳汁分泌を促進するホルモンですが、性腺機能を抑制する作用も持ちます。
高プロラクチン血症の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
プロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)
薬剤性(抗精神病薬、抗うつ薬、消化性潰瘍治療薬など)
視床下部・下垂体の器質的疾患(腫瘍、炎症、外傷など)
甲状腺機能低下症
慢性腎不全
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
これらの原因を鑑別するために、詳細な病歴聴取(薬剤歴、月経歴、症状の経過など)と身体診察が重要です。また、下垂体MRIによる器質的疾患の評価、薬剤性の可能性の検討、甲状腺機能の評価などが必要となります。
プロラクチノーマと診断された場合は、腫瘍のサイズと症状に応じて治療方針を決定します。微小腺腫では、ドパミン作動薬(カベルゴリン、ブロモクリプチンなど)による薬物治療が第一選択となります。薬物治療で効果不十分な場合や、大きな腺腫(マクロアデノーマ)では、手術療法(経蝶形骨洞的腺腫摘出術)を考慮します。
薬剤性の高プロラクチン血症では、原因薬剤の中止や変更を検討します。甲状腺機能低下症による場合は、甲状腺ホルモン補充療法を行います。
高プロラクチン血症は、適切な診断と治療により、良好な予後が期待できる病態です。患者の症状と検査所見を総合的に評価し、原因に応じた管理を行うことが重要です。
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