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母体に投与した薬剤と児への影響との組合せで正しいのはどれか。
a. アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬―― ――羊水過多症
b. 吸入副腎皮質ステロイド――――――――――――早産
c. ミソプロストール―――――――――――――――脳出血
d. インドメタシン――――――――――――――――動脈管収縮
e. ミノサイクリン――――――――――――――――水腎症

第118回医師国家試験

正解:d

解説

母体に投与した薬剤が胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中の薬剤使用には十分な注意が必要である。選択肢の中で、母体に投与した薬剤と児への影響の組み合わせとして正しいのは、「インドメタシン―動脈管収縮」である。
a. アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬:羊水過少症や胎児の腎機能障害を引き起こすことがあるが、羊水過多症との関連は明らかでない。
b. 吸入副腎皮質ステロイド:全身作用は少なく、妊娠中の使用は比較的安全とされている。早産との明確な関連は示されていない。
c. ミソプロストール:プロスタグランジンE1アナログであり、子宮収縮を引き起こす。胎児の脳出血との関連は明らかでない。
d. インドメタシン:プロスタグランジン合成阻害作用により、胎児の動脈管を収縮させる可能性がある。妊娠後期の使用では注意が必要である。
e. ミノサイクリン:テトラサイクリン系抗菌薬であり、胎児の歯や骨の発育に影響を及ぼす可能性があるが、水腎症との関連は明らかでない。
以上より、母体に投与した薬剤と児への影響の組み合わせとして正しいのは、「インドメタシン―動脈管収縮」である。

考察

妊娠中の薬物療法は、母体の健康と胎児の安全性のバランスを慎重に考慮して行う必要がある。妊娠中は薬物動態が変化し、胎盤を通過する薬物は胎児に影響を及ぼす可能性がある。特に、妊娠初期は胎児の器官形成期であり、薬剤の影響を最も受けやすい時期である。
妊娠中の薬物療法では、治療上の有益性が胎児へのリスクを上回ると判断された場合にのみ使用するべきである。胎児毒性が明らかな薬剤や、安全性が確立していない薬剤は避けるべきである。また、妊娠時期によっても薬剤の選択や投与量を調整する必要がある。
一方で、母体の疾患管理のために薬物療法が不可欠な場合もある。例えば、てんかんや喘息、慢性疾患などでは、適切な薬物療法により母体の健康を維持することが、胎児の予後改善につながる。
妊娠中の薬物療法では、最新のエビデンスに基づいた適切な薬剤選択と、十分なインフォームドコンセントが重要である。治療方針の決定には、産科医、小児科医、薬剤師など多職種の連携が不可欠である。妊婦への服薬指導では、薬剤の必要性と安全性について丁寧に説明し、服薬アドヒアランスの向上を図ることが重要である。
また、妊娠中の薬物療法では、予期せぬ有害事象の可能性もある。妊婦の状態や胎児の発育については慎重にモニタリングし、異常が疑われる場合は速やかに対応する必要がある。出生児についても、長期的なフォローアップが求められる。
妊娠中の薬物療法は、ハイリスク薬物療法の一つである。医療者は、妊娠中の薬物療法に関する最新の知見を常にアップデートし、適切な治療を提供できるよう努めることが求められる。妊婦の自己決定を支援しつつ、母児の健康を最優先に考えた慎重な姿勢が何より重要である。

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